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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ5

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エピソード61

・2022年7月8日付

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 午後1時、スレイプニルに唐突な通信を入れてきた人物がいた。人物名は非表示だが、匿名の人物――と言う訳でもなかったのは、通話時に表示されるアイコンで分かる。


『そのマークは、キサラギか?』


 スレイプニルはあからさまにメーカーのロゴをアイコンにするような人物がいるのか――と考えたが、そこにはツッコミをしない。キサラギと言えば、アーケードリバースの開発にも関与しているゲームメーカーだ。ここ出身のプロゲーマーは数名存在し、アルストロメリアも過去に所属していた時期がある。


 しかし、ゲームメーカーが直接接触してくるとは――しかも、レイドバトル開催期間中だ。それを踏まえると、明らかに何か狙いがあるようにも思えるのだが――。


『そう思ってもらって構わない。我々は、君に重要な情報を提供しておかないと――そう思っただけだ』


 まさかの展開だった。その情報の内容はメール等で代行すると思ったが、そう言う流れでもなかったのである。一体、キサラギは何を情報提供しようと言うのか?


『見返りはあるのかしら?』


 スレイプニルも、キサラギのやり方などを全く知らない訳ではない。それを踏まえた上で――少し試すような口調でキサラギに疑問をぶつける。


『我々は、次世代ゲームの開発データを得る為にも――今回の一件は放置できないと判断した。これで良いか?』


 向こうで何者かとの話声も聞こえたようだが、それをスレイプニルは気にしない。それに加えて、この人物の声もボイスチェンジャーで男声になっている事も言及する様はなかった。


『ARゲームの次世代データ集め――他のメーカーも考えそうだけど、一理あるわね』


 スレイプニルの方はボイスチェンジャーで声を変えていないのだが――そこに向こうはツッコミを入れる気配がない。声は周囲のギャラリーに聞かれないように、システムを変更しているので問題がないようだ。


『君に話したいのは、アカシックレコードに関してだ』


『アカシックレコード?』


 スレイプニルはかなり驚いているのだが、それもそのはずである。アカシックレコードの存在は、一部の勢力しか確認出来ていないからだ。しかも、そのアカシックレコードは複数存在する。キサラギの方でもアカシックレコードと言えば、あのオーパーツと言えるようなデータが眠るサイトかもしれない。


『君はアカシックレコードが何か、知っているのか?』


『多分、そちらとは違うサイトかもしれない。続けてくれ』


 下手に慌てれば、向こうも察する可能性が高いだろう。ポーカーフェイスは苦手だが、ここはこらえる事も重要と判断した。


『話を続けよう。実は、アルストロメリアがとあるサイトを開いている事を掴んだのだが、そのサイト名がアカシックレコードだったのだ』


 キサラギのスタッフを名乗る人物が告げたのは、アカシックレコードと言う名称のサイトをアルストロメリアが立ちあげていた事だった。これに関しては、完全にノーチェックである。おそらく、向こうだけしか知らない可能性も高いだろう。


『一体、どんなサイト?』


『表向きは小説投稿サイトと言うべきか。しかし、そこに投稿されている作品は――』


 キサラギのスタッフが語った事は――スレイプニルにとっても衝撃的な内容だった。投稿されているであろう作品の予想は、ある程度出来ていたのだが――告げられた真実は、想定外と言ってもいい事実だろう。


『この事は他言無用で頼む。最低でも、2日間――9月7日までは黙っていて欲しい』


 日程指定で他言無用とは――キサラギは何を考えているのか? ニュースでは様々な週刊誌が炎上目的のサイトを鵜呑みにして、炎上したという話題も存在する。おそらくは――何らかの発表が9月7日にあるのかもしれない。スレイプニルは、そう判断して他言無用である事を約束した。実際は、既に別の何者かが同じ情報を手に入れたとも知らずに。



 一方でアキバガーディアンは青騎士の真相に近づこうとしていた。その理由の一つとして、悪質な炎上行為に青騎士と名乗る勢力が関与し始めた事による物である。ガーディアンの方も無対策ではなく、様々なエリアで青騎士と戦闘状態やARゲームに挑む展開にななっていた。青騎士の正体は、揃いもそろってバイト感覚で雇われただけの低レベルなネット住民だったのだが。


 結局はハズレくじを引かされた感じのするアキバガーディアンだったが、その中で思わぬ人物からの情報提供があった。


【青騎士騒動は以前にも類似の事件が存在していたが、その時と今回は犯人が別にいる】


 ショートメッセージで送られたものだが、これは非常に重要なものと考えていた。何故なら、撃破した青騎士から回収したガジェットには特定のプログラムやメールが存在し、メールに書かれているアドレスの――。


「メールのアドレスは既に削除済みか。削除されたURLをたどれば、何かのヒントが得られると思ったが」


 橿原隼鷹は、鹿沼零からの情報だけでは不足と考えている。芸能事務所AとJを物理的に消すと言う考えは――危険思想なのかもしれないが、ネット上で炎上するような気配がない。単純に芸能事務所から告訴されるのを恐れて発言しないだけという可能性も高いが、実際は違う可能性もある。


「しかし、芸能事務所に謝罪させるのと物理的に潰すのでは、謝罪の方が手荒いとは思えないのに――そちらが炎上する」


 橿原は、とあるネットのニュースを既にチェック済みだった。それは――アルストロメリアの真の目的が芸能事務所の謝罪を求めているという物だったのである。謝罪とは炎上マーケティングに関してとは書かれていたが、具体的に何を指すのかは不明のままだ。具体的に書けば芸能事務所を敵に回すと言う事で書かないのか、煽りを利用して炎上させるのが目的か――。


「全ては、もうすぐ判明する――と言う事か」


 橿原も何となくだが、真相が語られるのはもうすぐと察していた。何故、そう断言出来るのかは別として。


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