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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ5

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エピソード60-3

・2022年7月8日付

行間調整版へ変更

 午後1時30分、草加市役所では緊急会議が行われる事になった。ARゲーム課のスタッフだけでなく、ふるさと納税に関係する部署の人間もいる。会議室を用意する事が出来ないほどの緊急性を持っていた為、ARゲーム課の防音施設と言うか応接間で行われた。


『今回集まってもらったのは他でもありません。一連のガイドライン変更に伴う、方針転換です』


 鹿沼零の口調も、何時もとは違っている。ARメットの影響で素顔が見えないのは変わりないのだが――。方針転換と言う鹿沼の発言を聞き、集まった周囲のスタッフなどからも動揺が広まっている。これに関しては鹿沼にも思う部分はあるらしいが、自分達だけで何とか出来る事にも限界があるのは間違いなかった。実際、鹿沼の腕も震えているように見えるのだが――。


『これ以上は我々だけで進める事は不可能だと言う事を認め、ARゲーム側の運営に従う事になるでしょう』


 議員の一部からは反対意見も飛び出す。鹿沼が言いだした事なのに、ここで急な手のひら返しである。しかも、フラグもないような唐突感さえ感じさせるような光景に――スタッフからも反対意見が飛び出した。


『下手にこちらが強硬策を続ければ、芸能事務所AとJの二の舞になる――そう判断した次第です』


 この一言で、全てのスタッフが黙り込む事になる。声のトーンは激怒しているような物ではない事もあって――尚更だ。芸能事務所AとJがやってきた炎上マーケティングの事例は、草加市側も知らない訳ではない。そうした悪しきマーケティングノウハウとは別の物を――と言う事でふるさと納税を提案したのだが、最終的には黒と認識されたと言ってもいいだろう。



 この会議の内容は、すぐにホームページ上で発表され、またたく間にネット上でも話題となった。該当するホームページを見た山口飛龍は――。


「手のひら返しと言うよりは――自分の行為がブーメランだと自覚したのだろう」


 鹿沼の過去にやってきた事、それが芸能事務所AとJの2社と同じだった――そう自覚し、態度をあらためたと考える。ホームページを見る前は、アーケードリバースを山口はプレイしていた。当然ながら、レイドバトルではなく通常のマッチングモードである。この辺りは関係者と言う理由もあるのだろう。


「お前達は――相手を間違えたのだ。炎上マーケティングは、二度と起こさせない!」


 自分に襲いかかって来たモブのプレイヤーが倒れている光景を見て、山口は静かな闘志を燃やしている。リザルト画面でも、山口がスコア1位である事から――大体の事は察する事が出来るかもしれない。


【何て事だ!?】


【デンドロビウムも未だにレイドバトルのランキングにいない――】


【レイドバトルに有名プレイヤーが流れている内に、ランキング荒らしでもしようとしたのか?】


【山口飛龍を相手にしたのが、運の尽きだったのだろう】


【チートキラーの異名を持っているという話も聞く。まさか?】


 つぶやきサイト上では、今回のバトルを見て驚く様子がタイムラインで一目瞭然だった。今までプレイしているような動画も確認されないような人物が、唐突に動画をアップしてアピールを始めたと例えられそうな気配も――。

 


 鹿沼の手のひら返しに関しては、ネット上でも話題となっている。しかし、まとめサイトの半数以上は話題のニュースなのに取り上げない。逆に、有名アイドルの不倫や不祥事と言った物でアフィリエイトを稼ごうとする様子が――非常に分かりやすかった。


「レイドバトルには有名なプレイヤーも流れていると聞いているが――」


 タブレット端末でランキング票を見ていたのは、ヴィスマルクだった。彼女もレイドバトルに参戦し始めたのだが、スコアの方はランキング集計対象外である。


 何回かレイドバトルをプレイはしているが、肝心な所でレイドボスを便乗勢力等に落とされてしまう。こうしたプレイが続いていく内に、スコアが獲得できない負の連鎖に突入しつつある。重戦車や小型ロボ辺りは撃破出来たのだが、あまり大きいスコアは期待できない部類なので――まだランキング集計対象にはなっていない。その状況下で、ヴィスマルクは上位のスコアがどれ位なのか、どの辺りであればランキング集計対象になるのか、ランキングを調べていた。


「この人物は――まさか?」


 ヴィスマルクが発見したプレイヤーネームは、プレイヤーIDの番号を照合しても間違いないという人物だった。プレイヤーネーム被りがある程度は可能なARゲームの中で、唯一の被り禁止ネームを持つ人物は――彼女しかいない。


《ビスマルク》


 そう、あのビスマルクである。自分がネームエントリーしようとしても、ネーム被りを理由に登録出来なかった事情が――彼女にはある。実はビスマルクがプロゲーマーだったと言う衝撃事実――それをまとめサイト等で知った時には、声も出ない状態になっていた。単純に情報集めを初期の段階でミスしていたのは、今更言っても遅いだろう。それが今となっては、プロゲーマーではないがある程度の知名度は持つようになった。怪我の功名と言えるのかもしれない。


「しかし、ビスマルクがいたとしても順位は――!?」


 ランキング順位を見て、ヴィスマルクは固まる。何故かと言うと、その順位は2ケタ――50位だった。1位のプレイヤーは見た事もない名前なので、モブプレイヤーなのだろう――とヴィスマルクは考える。プロゲーマーであるビスマルクでも10位に入るとネット上で言われている中、この順位なのは炎上対象になってもおかしくない。


「一体、何が起きていると言うのか――レイドバトルで」


 ここでヴィスマルクは、あるミスを犯していた。それは、1位のプレイヤーをモブプレイヤーと心の中で決めつけてしまった事である。いわゆる、レッテル貼りだ。


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