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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ5

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エピソード60-2

・2022年7月8日付

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 午後1時、鹿沼零のスマホにメールが入っている事に気付いたのは――昼食後である。


『なるほど――こちらが接触してきたか』


 鹿沼に接触をしてきた人物は、何とジークフリートだ。一体、どういう経緯で彼は鹿沼にコンタクトを取ろうとしたのか。しかし、そのメールに返答する事はなかった――だけでなく、鹿沼は予想外の行動を起こす事になる。


『しかし、まとめサイトは既に用済み――芸能事務所AとJに便乗するだけのサイトは、ARゲームには不要だ』


 彼は――今回のガイドライン変更の一件を受けて、スタッフから様々な意見を聞く事になってしまった。それらの意見を聞いていく内に、彼はこれから行うべき事を修正していく羽目になる。その一つが、ふるさと納税からの脱退――アーケードリバースのクラウドファンディング化だった。これに関しては手続きに時間がかかる為、すぐに出来ると言う訳ではないのだが――その間に混乱が起こるのも承知の上で。



 メールの返信が来ない事に対し、ジークフリートは別のアンテナショップへ向かっていた。ここで情報屋に合流し、ある一大作戦を実行しようと言う話を既にしてある。それに関して鹿沼にも同調するように協力要請をしたのだが、その返事は未だに届かない。ネットカフェに居続けたとしても、利用料の関係もあるので――時間を無駄には出来ないだろう。


「まとめサイトが集まれば、それこそ芸能事務所AとJに抵抗する事も可能だと言うのに――」


 自分の言っている事に自信を持てない状態であり、今回のガイドライン変更に関してのダメージは未だに回復していない。それに加えて、このままではアフィリエイト長者になると言う真の目的も――。


「全てはこういう事だったのか――」


「貴様は――!!」


 ジークフリートが他のメンバーに合流をしようとした矢先、視線に入って来たのは橿原隼鷹だった。何故、彼がここにいるのか――今頃は秋葉原のまとめサイト勢力を対処しているはずなのに。


「まとめサイト勢力が何か企んでいるという話は、WEB小説でも使い古されたテンプレ戦法だ。こちらが見破れないと思ったのか?」


「馬鹿な――こちらは見破られやすい行動パターンは使っていないはずなのに!」


 橿原に対し、ジークフリートはARグレートソードで対抗するのだが――手持ちの大型巻物で弾き飛ばす。そして、次の瞬間には巻物から呼び出した戦闘機型のARウェポンに、ジークフリートが対抗できる手段はなかった。戦闘機と言っても実在する戦闘機ベースではなく、架空戦闘機の為かデータが不足しているのも原因だろう。撃ち落とそうとハンドガンやバルカンを撃つも、それらは全て戦闘機に当たる事がない。


「どういう事だ――こちらの攻撃が読まれているのか?」


 しかも、橿原は他のメンバーを撃破した際に行動パターンをある程度把握しており、それがジークフリートの攻撃が当たらない理由なのだろう。彼が分かりやすい負けフラグを立ててしまったのも――敗因と言えるかもしれないのだが。


「直撃――なのか!?」


 戦闘機から放たれたのはホーミングレーザーなのだが、スタン性能を持っている物である。明らかにチートの部類と考えた。それ位に威力のケタが違いすぎる。


「チートプレイヤーを倒すのにチートを使うと言うのか? お前は!」


 ジークのこの発言を聞き、橿原は無言で更なるガジェットを呼び出した。そのガジェットは、どちらかと言うと剣に近いのだが――形状は銃剣と呼ばれるタイプだろうか? その剣を振り下ろし、レーザーソードが命中する。その後、見事にチートキラー効果が発動し――。


「行動パターンが既に使い古されているパターンの応用であれば、あっさりと見破れる手段がある――と言う事だ」


 橿原の一言を聞く間もなく、ジークフリートは気絶する。まさか、一撃で倒されるとは予想外の展開だ。周囲を見回したジークフリートは、他のメンバーも気絶していた事に今更気づいたのが――後の祭りである。



 5分後、橿原はある人物から通信が入っていた事に気付いた。サウンドオンリーと言う事で、顔が表示される事はない。


『手間をかけてすまなかったが――心配する必要性もなかったな』


「こういう汚れ仕事は他に押し付けるのか――政治家と言う人種は」


『政治家? 私は政治に興味が全くない――と言っても信じてもらえないか』


「当たり前だ。市議会議員と言う事は、草加市に関係していると言っても問題はないだろう」


『ジークフリートを遂に倒した事で、まとめサイトは閉鎖をしている。アフィリエイト系サイトの一掃は、時間の問題だ』


「確かに、こちらも手を焼いていたまとめサイトの首謀者を確保出来たのは大きいが――」


『それとこれとは話が違うと言いたいのか?』


「当然だ。貴様が今までやってきた事――ニュースサイトでも有名な部類を含めて、かなりの数に及ぶ」


『それら全ては草加市が決めた事――私個人だけで動かせると思うのか?』


「ARゲーム課とは――うまくごまかした物だな」


『何の話をしている?』


「こちらとしても――貴様の行動を無視するわけにはいかないのだ、草加市のふるさと納税の一件を含めて」


 橿原は謎の人物に対し、ジークフリートの情報提供を受けたとしても――それで帳消しに出来ると言う事ではない事を言うのだが――。それに対して、彼の方は自分のやってきた事を棚に上げているような気配さえ感じる。


『ふるさと納税の一件は――こちらの一存ではないのは分かっているだろう? それでも――』


「確かに、反対者もある程度の人数がいたのは知っている。しかし、それでも賛成派を増やす事は可能なはずだろう?」


『不正を疑っているのか?』


「デンドロビウムであれば、真っ先に貴様を狙ってもおかしくはなかったが――鹿沼」


 橿原は連絡を入れてきた人物が鹿沼である事を最初から分かっていた。その上で、敢えて誘いに乗ってジークフリートを撃破したのである。


『まとめサイト勢力を倒せば、次は芸能事務所を潰す気か?』


 鹿沼の一言を聞き、さすがの橿原も我慢できない状態だったが――それこそ芸能事務所の思う壺かもしれない。しばらくして、橿原は鹿沼が他にも言いたそうな雰囲気だったのだが、即座に通信を切る。


「まとめサイト、芸能事務所、アイドル投資家、悪目立ちするアイドルファン――全てを一掃しなくては、ARゲームが運営できないと言うのか」


 橿原は思う所はある一方で、これ以上の大規模テロまがいの行動を起こされてもまずい為か、アキバガーディアンへ情報を送るのだった。


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