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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ5

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エピソード59

・2022年7月8日付

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 午前12時30分、山口飛龍は別の場所へと到着した。公園と言う事なのだが――周囲の状況をみると、縁日でも行ったかのような形跡がある。


「逃げられたか――」


 山口がジークフリートを撃破したタイミングからわずか数時間で撤収したとは考えにくい。おそらくは、数日前にはガーディアンが来る事が知らされていたのかもしれないだろう。実際、ガーディアンの目撃例がこの近くであった事から――ここで何かを行っていた人物が、危険を感じたのかもしれない。


「しかし、これを摘発出来ない事には――ARゲームのチート問題も類似案件と叩かれかねないだろう」


 山口が今回の件を発見したのは、1年か2年ほど前のアミューズメントパークにおける事故の記事だった。


【バンジージャンプ中に事故? 原因は調査中】


 ARゲームでもジェットコースターなどに代表されるマシンを再現できる技術は存在する。しかし、VRジェットコースターやリアルのジェットコースターなどで事故が起きている以上、風評被害が出かねないと言う事でプロジェクトは凍結中――のはずだった。


「数週間前辺りから、違法なARゲーム筺体を目撃したという情報があったという事だが――」


 山口が周囲を調べていく内に、太陽光発電のシステムで何かが使われた形跡を見つける。どうやら、この太陽光発電に接続する形で電力を供給していたようだが――接続されていたのが何なのかは、データが改ざんされていて詳細不明だ。


「機種だけでも分かれば、メーカーに直接連絡する事は可能だが――」


 残念ながら、その表記さえも識別出来ない為に何が接続されていたのかは不明。一体、ここで何が行われていたと言うのか? 仕方がないので、周辺住民に尋ねようとも考えたが――住民は非協力的だろう。ARゲームで町おこしと言う事にも猛反対していた勢力の存在もあり、下手に騒ぎを大きくしたくないと言う事があるのかもしれない。


 周辺住民の中には警察に相談している人物もいるのかもしれないが、警察の方も治外法権に近いようなARゲームには非協力的だ。そう言うシステムにしたのは、自分にも責任がある。ある意味で裏目に出たと言ってもいい。ARゲーム課が下手に事件を大きくしたくないと言う事で警察の介入を最小限にしようとしていた事も――このシステムが生まれた経緯なのだが。


『アイドル投資家だと? それをお前が言うのか? 元架空アイドルの――』


 ふとジークフリートの発言を思い出し、その場で頭を抱える。あの時にジークフリートが言おうとしていた事は、自分が武者道を立ち上げる前の事だろう。今は、この事実を知るような人間も少ないかもしれない。しかし、あのアイドルは解散こそはしていないが――ネット炎上でファンが二分された。現在は様々な派生作品もあり、またファンの数は増えつつあるのだが――自分以外にも卒業と言う名の離脱を決めた人間はいる。


 山口は、それを芸能事務所AとJが独占しようとしているコンテンツ流通――。それを何とかする為に武者道を立ち上げ、コンテンツ制作サイドとして芸能事務所の暴走を止めようと考えたのである。しかし、彼の考えはアイドル投資家からは既に見抜かれていたのだ。そうでなければ、ARゲームにおける不正ツールやチートの拡散――これらの事件が、ここまでの規模で報道はされないだろう。



 同刻、北千住の某所でメンバーが揃うのを待っていたのはアキバガーディアンのメンバーである。


「そろそろ――」


「これ以上待てば、向こうにチャンスを与えかねない」


「しかし、リーダーが到着しなければ――」


 周囲のガーディアンも誰かを待っており、その人物が来るまでは待機している状態だ。彼らの装備はARウェポンであり、周囲には既にARフィールドを展開済みである。警察も手を出せない理由には、アキバガーディアンがARフィールドを展開した事にあった。つまり、彼らは芸能事務所潰しを、いわゆるひとつの『ゲーム』として扱っているのだろう。ある意味でも彼らのやっている事は、カードゲームアニメに代表されるようなアレを再現していると言ってもいい。


 これに関しては警察も犯罪者の逮捕をゲームとして楽しむと言う方法には疑問を持っている。しかし、彼らが死者を一切出さないで犯人を確保するというやり方は――警察にも真似は出来ないだろう。そうした経緯もあって、警察はARゲーム関係の事件にはノータッチを決めた。これは草加市以外にも適用される。例外があるとすれば、その規模が日本の危機に類するケースだ。


 海外にはARゲームの技術が流出した形跡もないので、このケースが起こるかと言われると0%に近い。0%と断言出来ないのはアキバガーディアンも把握している為、こうした事例はいつか起こると懸念しているのだが――。


「まさか、あちらの芸能事務所にもフィールドが展開されているとは――来るのが分かっていたのか?」


 ようやく合流したのは、橿原隼鷹である。彼が使用したのはホバーボード型のARガジェットだ。このガジェットは変形する事でパワードアーマーに変形するのだが、これを使わずに決着する事を望んでいる。


「どちらにしても、向こうは何かしらのARゲーム技術を入手したとしか――」


 ガーディアンの一人が橿原へ現状報告を行う。フィールド展開は、こちらが行う前に向こうが既に行った物らしい。つまり、ゲームジャンルがFPSになっているのは――決定権が芸能事務所側にあった為かもしれないが。


「こちらも総攻撃で仕掛ける。ARゲームのシステムが適用されている以上、ゲームルールに反する行為以外は各自で対応する事だ!」


 橿原の指示を受け、遂にガーディアンメンバーが突入を開始した。この様子に関してはネット上でも中継され、日本全国の視聴者が見守る展開になったのである。


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