エピソード13
>加筆調整
・3月22日付
柏原⇒橿原に修正。こちらは変換ミスの方向でお願いします。それ以外では追加シーンを収録。
・2022年6月26日付
調整版に変更
北条高雄、彼女の動画の件は様々な場所へ影響を及ぼす事になった。しかし、一般のプレイヤーには何も問題はない。チートに触れなければ、襲撃される恐れもないからである。そうした事から――ごく一部のプレイヤーに恐れられる存在としてネット上では拡散された。
「まぁ、そうなるだろうな」
アルストロメリアは高雄のまとめサイト上の記事を見て、大体の事情を察した。明らかに悪乗り勢力が超有名アイドルを神コンテンツにしようというアカシックレコードに書かれているような――とまでは行かないが、ニュースの内容が誤解を生むのは目に見えている。
「この記事が、投資家連中にどう見えるのか? 株式市場が変動するのか、それとも――ふるさと納税が破たんするのか?」
彼女はさりげなくメタな発言をしたようにも――それ程の感情をこめて、皮肉を言ったのだろうか? アルストロメリア、その花言葉には『未来へのあこがれ』と言う物があるらしい。彼女はARゲームで使用するネームに、この花の名前を付けた理由は――?
高雄の動画は、注目される事になった11日以前にも存在した。それこそ、ジャンルは様々なARゲームで。
ただし、リズムゲームの様な筺体を破壊するような行為が禁止されている物、挑発行為の禁止等が設定されている麻雀やパズルなどのテーブル系では見かけない。対戦格闘やアクションシューティング等で見かけるケースが多いようだ。
「彼女だけには来て欲しくない――そう思うのは必然だ」
アンテナショップで商品整理を行い、休憩中だったペンドラゴンは高雄のプレイ動画を見て率直な感想を述べる。ペンドラゴンの隣にいるバイトも同意見なので、そう言う事なのだろう。運営側もブラックリスト一歩手前なのは納得の一言か。
「あれだけのプレイヤーだと、レースゲームに参戦すると交通事故は不可避――」
バイトの男性は、高雄のプレイスタイルを見て何かを感じていた。あれだけの暴走を繰り返す以上、チートプレイヤーを見かけたら何をするか分からない。レースゲームであれば、相手プレイヤーがチートを使っていた場合――意図的な事故を起こす可能性だってある。
「ARゲームで意図的な事故を起こす事は禁止されているはず。その為の安全装置も――!?」
ペンドラゴンは、あの時に自分が目撃した事を思い出した。それは、ペンドラゴンのデビュー戦となった――あの時のアクシデントである。
午後1時30分、ある人物が草加市へとやって来た。ご丁寧に私鉄を使って――草加駅から出てくる姿が目撃されている。電車内は混雑している様子はない。各駅停車で谷塚方面から来た電車だが――平日と言うのもあるだろう。
しかし、混雑はしていないのに草加駅で降りる乗車客は多かった。谷塚駅についたときにも、数十人規模で降りる客がいたのである。彼は秋葉原から電車に乗ってやって来た――ガーディアンの一人だった。
「北千住から西新井、各駅に乗り換えて――草加か」
腕時計ではなく、スマホの時計を確認する辺り――この街の事情を知らないと思える。次の瞬間、スマホの電波が圏外になっている事に気付いたからだ。この状況には、頭をかきながら考えたのだが――対策が思いつかない。
「スマホが圏外? ガーディアンの話には聞いていたが――対策を――?」
そして、ようやく圏外だった正体を目の前を通り過ぎたパワードスーツのプレイヤーを見て気づいたのである。
「ARゲーム――そう言う事か」
ガーディアンに所属していながら、何故かARゲームには精通していないと言うよりも――情報が乏しいような彼は、これでもガーディアンの生みの親である。アキバガーディアンの創設者としてもネット上で有名だが、それよりも彼の場合は別の分野で有名だった。
「駅伝の橿原だと?」
「日曜に何かあったか?」
「日曜に草加市内でマラソンと言う話は聞かない。じゃあ、どうして?」
「スポーツのマスコミも周囲にいる様子がないという事は――」
ある2人組の野次馬が彼の姿を遠目で目撃し、誰かなのか分かっている様子でスマホをかかげる。しかし、ARゲーム用フィールドが展開されている以上はスマホが使えないのは――草加市内では常識だった。
「どうやら、ここでも有名らしいね。オレは――」
彼の名は橿原隼鷹、過去には箱根の駅伝にも出ていた有名選手でもある。趣味のアニメが――と言う訳ではないのだが、趣味のあった数人とアキバガーディアンの基礎となる組織を立ち上げた事もネット上では有名エピソードだ。
ペンドラゴンの動画を見て、心境複雑な表情をしていたのは運営サイドもだった。アンテナショップのスタッフが介入するのは、あまり良い事とは思っていないらしい。
それも一部の機種に限られる事だが、内部情報を知った上でプレイしていると感じられるのが運営としてはネット炎上のネタにされると考えているのだろう。
「彼の介入は、特に大きな問題にするほどではありません。むしろ、スタッフでもARゲームに興味を持たない人物がいると言う事例を示すケースになるかと」
ダブルアイが光るARメットを被り、その素顔を隠すのは――北欧神話を思わせるデザインの重装甲ARアーマーを装備した人物だった。カラーリングは白銀であり、ネット上で話題の青騎士と一部アーマーで共通部分はあるのだが、そう思わせないカスタマイズがされている。
それに、重装甲アーマーはARメットで見る際に表示される物であり、一般人にはバイクのメットを被ったぽっちゃり体型の女性が――という光景に見えた。かなりシュールであるのだが、これはARゲームとVRゲームの決定的な違いと言える。あくまでも拡張現実を売りとしている為、ARフィールド外ではARバイザーとインナースーツ以外は具現化できない。
「我々としては、ARゲームの技術が悪質な権利売買を目的とした転売屋、芸能事務所の様な自分達のアイドルを売り出す為の踏み台にするような連中に渡らなければ――」
この人物のARガジェットには『スレイプニル』と書かれていた。あくまでもカタカナではなく、英語だが――。




