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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ5

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エピソード57-2

・2022年7月7日付

行間調整版へ変更

 案の定というか、午後2時位になってもトップランカー等の動画はアップされていない。動画の投稿制限がある訳ではなく、単純にプレイヤーがアップしていない説も高いのだが――こればかりは本人しか分からないだろう。


【動画の半数以上がRTAリアルタイムアタック勢力ばかりで、あまり参考にならない】


【しかし、全くの初心者がアップしている動画であれば価値も0かもしれないが――】


【プレイヤーの質が逆に上がっている気配もするな。運営側がスパムと判断できる動画を削除しているのか?】


【スパム? どういう事だ】


【ARアーマーのペイントやマーキングを見れば分かる――】


 動画のコメントでも炎上している件があったが、それに関してはつぶやきサイト上でも一緒だった。RTA勢力ばかりが動画をアップしているように見えて、実は思わぬ落とし穴があったと言う言及があったのである。その内容とは、プレイヤーのARアーマーに表示されているマーキングにあった。


【そう言う事か】


【これはひどい】


【やはりというか、RTA勢に責任をなすりつけようと言うアイドル投資家やアイドルファンの仕業だったのか】


【これでは、アイドルにタダで宣伝場所を提供しているのと同じだ!】


【CDの発売日等を調べておくべきだったのか――運営側の見通しが甘かったのか】


【これは、さすがにアイドル投資家側の営業妨害に該当するだろう。運営に責任があるとも思えないが】


 この件はレイドバトル前にも報告例がいくつかあったのだが――改めて浮き彫りになるという結果になった。アイドルのCDジャケットをエンブレムやマーキング等に使用し、CDの宣伝を行うと言うケースである。痛車や痛バイク等のARアーマー版と言えば、それまでだが――特に運営側では禁止していない。


 ただし、それは芸能事務所AとJが絡む物以外の話である。実際、芸能事務所AとJはガイドラインでも名指しで宣伝行為を禁止しているのだ。これらの事務所は権利関係が複雑で、一歩間違えれば1兆円クラスの訴訟を起こすのも日常茶飯事であり、売り上げの3割は裁判での――と言う話もまとめサイトには書かれている。


「芸能事務所AとJだけ封じても、他の事務所が便乗しないとは限らない――と言う事か」


 発想の勝利――そう捉えられても仕方のない事を、ガングードは該当する動画を見ながら悔しがる。初日は色々と様子を見る為に有名プレイヤーは静観しているのだが――その流れに乗ったのが失敗だったのか? その悔しさは、彼女が動画を見ている目が真剣なのを見れば、察する事が出来るだろう。


「これでは、以前と変わらないではないのか――」


 過去の自分が起こした事――それも大きく報道される事にはなったが、今は歴史からも抹消されている。それを踏まえると、一部の悪目立ち勢力が大きく事件を起こせば、過去の自分と同じ末路をたどる――そう思っていた。


『次のニュースです――』


 ガングートは別のセンターモニターで流れたニュースを見て声が出なくなった。その内容とは、ARゲームとは無関係のジャンルで起きた事件なのだが――複数の怪我人が出ている事も報道されている。


『警察では、今回の事件に関係したとして少年グループを逮捕しており――』


 逮捕された少年グループの顔が出る訳はないのだが、押収された物の中に芸能事務所Jのアイドルを応援する為と思われるうちわが映り込んでいた。つまり、彼らは芸能事務所Aのファンである事を押収品でばらしてしまったと同然なのである。


 芸能事務所AとJの争いは、まさにリアルウォー勃発の一歩手前まで来ているのかもしれない。そのガス抜きとして、アーケードリバースを選んだというのであれば――笑えない冗談とも言える。



 午後2時30分、あるテレビ局が竹ノ塚から中継を行っている映像がネット上で話題になっていた。草加市は厳戒態勢が敷かれており、運営側が認めたARゲーム専門チャンネル等の取材以外をNGとしたからである。その為、テレビ局やマスコミは竹ノ塚から越谷までのレイドバトル対象エリア外で取材を行うしかなかった。


【テレビ局は締め出しか】


【まるで、有明のイベントみたいだ】


【アーケードリバースの技術は、下手をすればリアルウォーを起こせるレベルだ。取材規制はやむ得ないだろう】


【ここまで締め出す必要性が本当にあったのか?】


【そうでもしないとネット炎上を起こして宣伝を行おうとする芸能事務所AとJが――】


 様々なつぶやきが飛ぶのだが、感想としては今までの事例でも拡散したようなテンプレしか飛んでこない。個別に感想を持つ人間もいるだろうが、下手にまとめサイトに転載される事を恐れているのだろう。彼らとしては芸能事務所AとJの宣伝材料になるのを望んでいない。


「なるほど――この展開になるのを、彼女は望んでいたのか」


 既にレイドバトル以外でアーケードリバースをプレイしていたデンドロビウムがネット上の反応を見る。この展開は例のARパルクールを題材としたアニメでも起こった物であり、それを再現しようと言うのであれば――別の意味でもマッチポンプと疑われるが。


「先ほどのニュース、ARゲームに風評被害を起こして炎上させようという行為――何もかもが再現と言えるか」


 デンドロビウムはコーラを飲みながら、色々と考えていた。今の状態でレイドバトルにエントリーしても芸能事務所側の宣伝になってしまうのでは――と。


「しかし、今は芸能事務所AとJが撤退したという発表を信じるしかないだろうな。どちらにしても――それ以上は発言をしていないのだから」


 憶測で行動すれば、今度は週刊誌のネタにされかねない。今の自分は無名と言われていたような時期とは違う。今は――アーケードリバース上でもネットでも有名となった我侭姫デンドロビウム――その人だから、と。


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