エピソード56
・2022年7月6日付
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9月1日午前8時、アーケードリバースの一斉メンテナンスが行われた。このメンテナンスは共通だが、草加市以外のアーケードリバースでは1時間とちょっと辺りでメンテが終了する。草加市以外のメンテナンスはソシャゲで言う定期メンテナンスであり、ゲームデータの更新やチートガジェットデータの更新がメインだろう。
竹ノ塚では草加市でメンテ中の内にある程度のレベルを上げ、レイドバトルに備えようと言うプレイヤーが行列を作っている。行列と言っても、センターモニターでデジタル整理券が発行されるので――それを発行する為の行列と言えるだろう。
しかし、その列にはプロゲーマーや上級ランカーと言ったメンバーはいない。様子見と言う訳ではないはずだが――。
【ARゲームのメンテが終わっても、すぐにプレイできる訳ではない】
【午前10時からプレイ可能になるのは知っているだろう。問題は――そこじゃない】
【アーケードリバースはレイドバトルと言う大規模イベントだが、他のARゲームでもイベントがないわけではない】
【プレイヤーの奪い合いか?】
【しかし、ARゲームで兼業しているような人間は少ない。1ジャンル特化がメインだ】
【しかし、プロゲーマーは? 彼らの場合は様々なジャンルにも手を出すだろう?】
【プロゲーマーは例外だろう。ここで言及しているのは、実況者やアマチュアゲーマー、ランカーだ】
【確かに――チートプレイヤーの次に警戒すべきはランカーだろう】
【イベントでチートを使おうとすれば、情け無用にガーディアンがバラバラにする――だろうな】
つぶやきサイト上では、レイドバトルの情報を得ようと必至だ。誰だってそうする。しかし、ソシャゲのイベント攻略法を見つけるのとは訳が違う――それは情報を探しているゲーマーの方が分かっている事実だろう。
午前9時30分、谷塚駅に到着したハンゾウは――早速エントリーしようと駅の近くにあるセンターモニターへと向かう。しかし、そこに行列はない。穴場なので客足が――と言う類でもないはず。レイドバトルを前にトラブル発生か?
「特にメンテ時間が変更になった、延長したという情報はない。あっても――別のソシャゲで行われているメンテをアーケードリバースで起きているかのような、フェイクか」
つぶやきサイトのタイムラインを確認するハンゾウだが、タブレット端末等では確認せずにARメットを被って直接確認する。ログインを行うついでで情報を得ようとしていた訳ではなく、情報収集がメインだった。
しかし、流れてくる情報は半数が情報戦かネット炎上を狙ったフェイクであり、本物の情報は未だに更新なしだ。更新はあったのだが、午前9時に草加市以外のエリアでメンテが完了したという情報のみである。
【情報が流れてこない】
【まさか、運営がジャミングを受けているとか?】
【そこまでの状態であれば、イベントどころではない――下手をすれば中止だ】
【何が――起きている?】
【竹ノ塚等のエリアでは行列が出来ていると聞く。もしかすると――】
【もしかすると、公式ホームページで告知と言う方式に変えたのかも?】
ハンゾウが気になるつぶやきを発見し、公式ホームページの方へとつなぐ。すると、公式ホームページでメンテ状況を説明していた――と言うよりも、スケジュールが明記されていた。
「午前12時頃まではメンテか――」
タイムスケジュール的には、まだメンテ中と言う事らしい。その為、アーケードリバースのデジタル整理券及びプレイ受付も出来ない状態だ。センターモニターでは前日までのプレイ動画を視聴する事は可能だが――それ以外はデータ更新の都合でチェックできないようになっている。
「プレイ動画の方は――」
ハンゾウはガングートのプレイ動画を発見し、それをチェックし始めた。前日のプレイ動画ではなく、数日前の物である。閲覧数が10万を超えている動画をピックアップした形のようだ。
【動きが初期と違うな】
【初心者特有の細かな立ち止りもない。ある程度のステージ把握が出来ている証拠だろう】
【ガングートも中級者クラスまでレベルを上げている】
【レイドバトルの本命か?】
【レイドの本命はデンドロビウムだろう? 違うのか】
動画の中で流れるコメントには、レイドバトルに関する物もあるのだが――中には本日に付いたばかりのコメントもある。どうやら、考える事は誰もが一緒らしい。メンテナンス終了まで、プレイ動画などで情報を集めようと言うのは――誰もが通る道か?




