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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ4

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エピソード53-11

・2022年7月5日付

行間調整版へ変更

 スレイプニルがメットを外すような仕草を見せた直後、スマホのカメラレンズを向けたのはまとめサイトの管理人だったと言う。何故、このような事をしたのかは不明だが――サイトの閲覧者数を稼ぐという意味があったのかもしれない。その人物に気付き、拘束したのはスレイプニルではなく、偶然通りかかった人物だった。


『ありがとう。助かったと言うべきか――』


 ARバイザーを被ったままなので、男性ボイスなのだが――何か違和感を感じる外見を見たような――と管理人をガーディアンに付きだした人物は思う。しかし、その人物は何も言う事無く姿を消してしまった。特にARゲームをプレイしているような人物ではなく、スレイプニルも見覚えのない人物である。


『しかし、ここまでのスクープを発見しないとサイトを見てもらえないと思っている以上、向こうも慌てていると言うべきだろう』


 周囲の目もあるかもしれないが、引き続きスレイプニルはARバイザーでネットへアクセスを試みた。一連の騒動を受けて、ネット上のつぶやきなども慌ただしくなっているのを踏まえると――明らかに何かを狙っている要素もあるだろうか。



 8月24日、レイドバトルに関しての注意事項が発表された。正確に言えば、追加の注意事項と言うべきか。


【マッチングはサーバー負荷を考慮し、草加市内の設置店舗に限る】


 これに関しては、最近になって竹ノ塚及び北千住でもロケテストを兼ねて設置されているが、今回は草加市限定としたためらしい。この仕様は一部で残念という声もある一方で、サーバー負荷を減らす為に草加市限定とした事に関しては評価する声もある。


【使用可能ガジェットはアーケードリバース専用及びアーケードリバースで使用可能なものに限る】


 これもネット上では色々と言われて来た部分だろう。実際、ハンゾウが廃課金とまで言い切った一件もきっかけだが――。一方で、使用不能ガジェットは持ち込みが発覚した段階で失格とも明言された。


【プレイヤー同士でチームを組む事に関しては制限なしに変更。ただし、マッチポンプやバトルに不正が確認された場合は没収試合とする】


 アーケードリバースではギルドの様な概念は存在しなかったのだが――これに関しては大きく軌道変更をしたと言うべきか。知らないプレイヤーと組み、連携が取れなかったという事が言われてネット炎上するよりは、ギルドを試験的に導入した方がよいと考えたのかもしれない。


【プレイヤーレベルでレイドバトル参加不能とはしない。その一方で、レベルに関してはバランスが取れるようにマッチングを調整する】


 そして、レイドバトルはレベル1だからと言って参加不能と言う制限はかけない事も合わせて発表された。その一方で、初心者狩りが発生しないようにマッチング調整を行う事も発表されている。



 この発表を受けて、ネット上では早速レイドバトルのまとめ記事が各所にアップされていた。それだけの注目度があると言えば――それまでだが。


【格ゲーの様なガチバトルがみたいのだが】


【レイドと言うと、ソシャゲであるような理不尽難易度、廃課金必須、1人プレイお断りな個所が――】


【しかし、竹ノ塚にも設置されていたのは初耳だ。ふるさと納税を利用している以上、草加市だけと思っていた】


【だからこそ、じゃないのか? ふるさと納税的な意味でも――】


【草加市限定にしたのは観光客を増やす的な狙いもありそうだ】


【しかし、草加市内でもアーケードリバースが設置されている店舗は100あるかないか――】


【混雑すればアウトと言いたいのか?】


【期間は9月1日からで終了日は決まっていないようだ】


【おそらく、一か月単位で集計していくタイプと言う可能性もありそうだな】


【慌ててレイドに参加するよりも、装備を整えた方が良いという事か?】


【装備だけではARゲームは無理だろう。体力づくりとまではいかないが、一定の技術が必要だ】


【確か、レベル1でも参加不能にしないという事だが】


【発表ではレベル1でも参加可能だ。しかし、本当にレベル1で挑むようなプレイヤーがいるか?】


 やはりというか、つぶやきでもトレンド上位と言う事もあって――レイドバトルの期待は高まっているのが分かる。こうしたまとめサイトを見て情報を集めるプレイヤーもいるだろうが、公式サイトの発表のみで作戦を考えるプレイヤーもいた。それ程にまとめサイトが芸能事務所A及びJと繋がっている――そう考えるプレイヤーが、まだ存在する証明だろう。


 実際、草加市のARゲームからは撤退すると言う発表はあったのだが、あくまでも草加市からの撤退を明言しただけだ。芸能事務所が他の地方で買収等を行っていない――と断言するには、まだ早いと言える。


「さて、この状況を見て、どう動くかな――あの勢力は」


 まとめサイトを調べていたのは、ARメットを外した鹿沼零だった。彼は一連のサイトを草加市役所ではなく、草加市内の自宅の部屋で見ている。


 部屋の中には様々な資料があるのだが――乱雑と言う訳ではないのだが、きちんと整理されている訳でもない。部屋は掃除されていないと言う訳ではないが、綺麗でもないという中途半端な仕様である。


 それでも、サーバーにほこりが入らないように対策はしている為、ある意味でもこの部屋の役割は資料室と言うべきなのだろうか。


「どちらにしても、歌い手や実況者を利用し――芸能事務所AとJのアイドルを頂点にして、無限の利益を得ようとする考え――」


 鹿沼は、しばらくしてARメットを手に取り、それを被り始める。どうやら、何処かへと出かけるらしい。腕には時計をしている訳ではないのだが――ARメットに時計アプリを入れているので、そこで時間を判断するようだ。


『どちらにしても、我々には不都合と考えるべきか。テンプレの方法だとしても、効果的と言うのは――皮肉なものだな』


 そして、鹿沼は草加市役所――と言うよりも近くのアンテナショップへと向かう。時計アプリは午前12時を知らせていたが、それを直視するような余裕は彼にはなかった。


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