エピソード53-4
・2022年7月5日付
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橿原隼鷹が、ふと発見した動画――それは1月ごろに投稿されたと思われる物だった。この時期はアーケードリバースが稼働していたのか不明だが、今の様な話題になっていたとは思えない。その時のプレイヤーネームは、ガングートだった為に気付いたという事なのだろう。
「このプレイスタイルは――そう言う事か」
橿原はガングートのプレイスタイルに疑問を抱く個所があった。アーケードリバースで見せたプレイは、どう考えても別ジャンルのテクニックがそのまま使われている。元々がFPSをベースにしたゲームと言う事もあり――プレイスタイルの流用をしているのは、ネット上でも何度かツッコミがあるほど。それを踏まえると、ガングートも動画を見てプレイスタイルを――と最初は考えていた。
しかし、手探りでプレイしている割には手慣れている感じだった事には疑問が浮かぶ。ガングートのプレイスタイルに関しては、他のARゲームプレイヤーからも指摘があった。
【どう考えても、何か違和感がある】
【プロゲーマーと言う事を差し引いても、スキルのケタが違う】
【もしかすると、プロの傭兵だったとか? あるいは――】
【確かに、あのスキルは桁が違うのは事実だろう】
【プロの傭兵だとすれば、ARゲームの正体が実は――】
プロゲーマーと言うのを差し引いても、そのスキルは異常すぎる。まるで師匠ポジションキャラを凌駕するともつぶやき上では言われていたが、それはさすがにスケールが違いすぎるだろう。
「チートキャラと言う例えも――この場合は不適切か。だとすれば、彼女は何者なのか」
橿原は色々と疑問に思う部分が何点か残っている一方で、彼女の強さはプロゲーマーと言う称号に集約されると断言する。しかし、本当にプロゲーマーの枠内で当てはめていいかと言う事は――保留しているが。
「プロゲーマーにもさまざまな分類はあるだろうが――彼女の場合は、プロゲーマー以上の強さを持っているかもしれない」
ガングートの強さを語るには、まだデータが足りなさすぎる――そう考えていた。それ程に――彼女は強すぎるのだ。下手をすれば、アーケードリバースに慣れると他のプレイヤーでは太刀打ち不可能になる可能性は高い。
話題となっているアーケードリバースのイベント、それはFPSでは異色とも言えるレイドバトルだった。15人のプレイヤーが1フィールドに存在するボスユニットを協力して撃破するという単純明快なルールだが――そこには落とし穴がある。
【ソシャゲであるようなレイドバトルとは違うのか】
【援軍は呼べない方式で15人固定か?】
【1フィールドには15人までの制限じゃないのか?】
【つまり、15人同時存在で1フィールドのボスと戦う形式?】
【実施予定日まで、まだ時間がある。βテストでも行えば話は変わるが――】
【おそらく、15人限定なのはチートアプリや不正ガジェット対策だろう】
様々なつぶやきが拡散されているのだが、1フィールドで15人までの同時バトルは確定らしい。不正対策と言う意味で15人なのか、処理落ち対策で15人制限なのか――詳細なルールが出るまでは分からないのが現状だ。
【しかし、アーケードリバースではギルドの様なシステムはないに等しい】
【それで見ず知らずのプレイヤーとマッチングと言うのは――無茶があるのではないのか】
【この辺りはマッチポンプや報酬目当てで談合するようなプレイヤー対策だと思う】
【談合プレイや不正ツールプレイは、イベントの存在自体を揺るがす要素だからな】
【それに、廃課金が度々問題になるようなソシャゲと同じ枠では――語れないだろう】
【プレイするのに100円を投入し、リアルマネーでアイテムを購入するようなゲームだからな】
【アイテム有料のプレイ無料のソシャゲと、100円1クレのARゲームでは使用が違いすぎる】
【しかし、レイドと聞くと、ソシャゲでも良い話を聞かないケースが多い】
【それに――ARゲームでレイドを実装しているのは狩りゲー位だ】
【ARパルクールやARリズムゲームだと、個人プレイがメインになってくる。パーティー要素はゼロに等しい作品だってある】
【では、レイドを実装した理由は何だ?】
一連のつぶやきを見ても、頭が痛くなるようなつぶやきも存在する。橿原は、そうしたつぶやきを見てもレスをするような事はしない。秋葉原のARゲームを担当している事もあって、越権行為とも取れるような行動をする訳にはいかないのだ。
「草加市のARゲームは、向こうの運営に任せるしかないのか――今回の件だけでなく、芸能事務所の件も」
一連のつぶやきに何かの誘導がありつつも、現状では大きな事件にも発展していないので――下手に手出しは出来ない。警察沙汰にでもなったら、それこそ秋葉原の方でもARゲーム禁止令が出かねないのだ。芸能事務所の一件と同様に――デリケートな案件かもしれない。




