エピソード53-2
・2022年7月5日付
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過去に情報戦と呼ばれた時代があったと言う。その情報戦は凶器とも言えるような物だった。狂気の方が正しいと思われるが、別の意味でも間違ってはいない。実際、その情報戦はリアルウォーの大量破壊兵器の様な物と同等に扱われているからだ。
その方法とは、ネット炎上を利用し、ライバルコンテンツを次々と壊滅させていき――芸能事務所AとJのコンテンツ以外は魔女狩りしていく方法である。後に、この商法は超有名アイドル商法と呼ばれ、様々な分野で利用された。海外で悪用された事例はないが、報道していないだけかもしれない。まとめサイトを利用した炎上マーケティング、更には選挙戦にも応用された話も――。しかし、ごく最近に炎上商法に規制を望む声が出てくる事になったと言う。ネット炎上でリアルウォーが起きると被害妄想に取りつかれた人物による発言だが――これはガングートではない。
ガングート以前にも同じようにネット炎上をリアルウォーと絡めて、炎上マーケティングの根絶を訴える人物や団体はあった。それらの団体が物理的に消されたという報告はないので、周囲に聞き入れてもらえずに自然消滅した説が正しいと言うべきか。悲劇は繰り返されるのだ――芸能事務所AとJが存在し続ける限り、その精神やノウハウを受け継ぐ芸能事務所が現れる限りは――。
【結局、時代は繰り返す。フィクションの小説と同じ事を再現し――実際に凶悪事件が起きたと炎上させ、芸能事務所のコンテンツをゴリ押ししていく】
【ネット炎上でブランドイメージを落とし、芸能事務所AとJは何もする事無く自分達のコンテンツを日本中に拡散していく】
【アイドル投資家やアイドルファンが他のコンテンツが人気になると、それに嫉妬して炎上させていく――】
【それこそ、自分達の手は汚さない。更には政治の世界にも干渉し――自分達のしている事が正義だと法律等を変えていく――】
【この世界だけじゃない。その影響力は第4の壁――現実世界にも及んでいるのだ】
つぶやきに関しても文章が支離滅裂と言うか――意味不明と切り捨てるような物だろう。残念ながら、この文章の出所は不明である。何故かと言うと、該当アカウントは既に削除されているから。どちらにしても、これらの発言はWEB小説のコピペ等ではない。本当に現実で発言された――。
【この記事を見ているであろう人物に警告する。超有名アイドル商法は、コンテンツ流通方法としては失敗作――絶版にすべきものだ】
【だからこそ――日本の政治を芸能事務所AとJに握らせるような事はあってはいけない。それこそ、一部企業の思う壺になるだろう】
これらのコメントは危険だ。それらを放置したネットも問題視されるべきだ。しかし、芸能事務所AとJをジャパニーズマフィアと揶揄するような発言は――。
ビスマルクは、デンドロビウムの行動原理を見て――あるまとめサイトに書かれていた記事を思い出していた。デンドロビウムはARゲームの正しいプレイスタイルを取り戻す為、チートプレイヤー等を敵に回した――と。それこそ、カードゲームアニメやホビーアニメの『ルールを守って正しくプレイしましょう』ではないが、それに通じる物がある。
『今も古今東西のゲームはチートプレイヤーが荒らし放題。迂闊な事をしようとすれば――情け無用にバラバラにされるって話だ』
ビスマルクは、有名なコピペ文章を思い出した。迂闊な事をすれば、消されるのは自分なのかもしれない――。だからと言って芸能事務所の暴挙は許されるような物ではないだろう。それは誰もが思う事であり、当然の反応かもしれないが。
「本格的に動きだすのは――?」
バトル終了後、ビスマルクはARバイザーに流れてきた情報を見て目を疑う。その内容とは――芸能事務所A及びJに関するニュースだったのだ。
《芸能事務所Aと芸能事務所Jが、草加市から撤退へ》
見出しだけでも、疑問に思う部分がある。埼玉県その物から撤退する訳ではなく、草加市を名指ししていた。このニュースの内容は――簡単に説明すれば、草加市のARゲーム分野からの進出断念である。
「やけに手まわしが良すぎるように思えるが――」
ビスマルクの疑問は、ますます深まるばかりだ。一部のプレイヤーも同じようなリアクションが多い為、この反応が大半と言うべきかもしれない。しかし、このニュースを見て何かの陽動作戦と思う人物だっている。
『芸能事務所が草加市を手放すとは思えない。他のエリアを占領してから動き出すと言うべきか』
鹿沼零に関しては、今回の芸能事務所側の発表を作戦と考えていた。実際、陽動作戦は他の芸能事務所も過去に行った事がある為――鹿沼はそう思ったのだろう。
『これ以上、大損をするような状態になるようであれば――手っ取り早く片づけられる個所から手を付ける気か』
武者道のビルでニュースを目撃した山口飛龍も同意見だ。しかし、鹿沼と違うのは――山口は過去にも類似案件に遭遇しており、ある意味でも芸能事務所の手口を知っているような発言である。
「どちらにしても、スケジュールに変動はない――とでもいう気か」
ニュースに関してはセンターモニターで確認し、少し深刻そうな表情をしたのはガングートである。一連のタダ乗り便乗事件を調べていたのだが、その途中で今回のニュースを目撃したようだ。




