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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ4

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エピソード53

・2022年7月5日付

行間調整版へ変更

 便乗勢力の第1部隊としての青騎士は消滅した――しかし、青騎士の名前に商品価値を見出している勢力が第2部隊の青騎士を展開する。その青騎士よりも前に、失われた記憶としての青騎士がいる事は知られていない。ネット上では別の名称も飛び交う為に、青騎士とは断言されていないのだが――。該当する人物の名前を、ある人物はヴィザールと言った。


 北欧神話ではヴィーザルとも言われているのだが――それが周囲を困惑させた原因だろうか? しかし、北欧神話由来のプレイヤーネームは、いくらでもいる。それこそ、由来が違うビスマルクと同じ位には――。


【結局、青騎士を便乗している以上は便乗勢力じゃないのか?】


【青騎士と言う名前はブランド名と言う位に認識されている】


【芸能事務所AとJが商標権を獲得したりして?】


【それを言うなら、アイドルの単語を商標権登録しようとするだろう】


【青騎士は、それほどの価値があるのか?】


【あっさり壊滅した割には、すぐに復活する。まるで――】


 さまざまなつぶやきがまとめサイトには載っているが、ある発言に関しては言及されていない。そればかりか、意図的にまとめていないという気配さえ――読みとれるような。まとめサイトでどのコメントを追加するかは、管理人の仕事だろう。


 しかし、このまとめサイトは芸能事務所が裏にいるような――。それを察した一部のプレイヤーはサイトに関して運営側に削除申請を行っている――そんな話がネット掲示板でも話題となっていた。


「削除申請したとしても――無駄に終わるだろう。芸能事務所AとJの裏には――政治家が絡んでいる話だ」


 ARメットを外し、タンブラーに入ったコーヒーを手にしていたのは山口飛龍である。しかし、その素顔は誰も見ていない。その場所は武者道のサーバールームだが、山口以外の関係者が立ち入り禁止となっている秘密の場所だ。そこでコーヒーを飲むのが趣味と言う訳ではないのだが、今回のデータ検索は――武者道とは別のプライベートな案件である。そう言った事情もあり、部外者の立ち入りが禁止となっているサーバールームでデータを調べていた。


 ちなみに、飲み物を飲んでいる場所は一種のカフェテラス的な場所であり、万が一に飲み物をこぼしてもサーバールームには影響しない。ただし、この部屋は禁酒及び禁煙が徹底されており、火事になっては困ると言う事がサーバーの数を見ても分かるだろうか。


『これからが――正念場か。芸能事務所側が仮にARゲームからは撤退したとしても』


 山口は何かを予感させるような発言をする。ある意味でもメタ発言だろうか? その発言は、アカシックレコードを見てからの物ではないのだが――まとめサイトや炎上系サイトを見ての反応ではない事は、彼の眼付からでも分かるだろう。



 ネットのまとめサイトにアクセスし、青騎士が再び行動を起こすのではないか――と考えていたのはビスマルクである。タブレット端末で情報を検索している際は私服なので、一部の盗撮を仕掛けようとした人間が彼女の横乳を撮影しようとするのだが――該当エリアでスマホは圏外になる仕様があった。


 その人物がどうなったのか、確かめるような事はなく――ビスマルクはアンテナショップへと入って行く。自動ドア形式の入り口をくぐると、そこは――アーケードリバースのフィールドが広がっていた。


「屋内型アーケードリバースは、レアと聞いたが――」


 厳密には屋内にエリアがあるのではなく、アンテナショップのエリア中央を屋外フィールドにしているという仕組みらしい。屋内フィールドでは雨にも影響を受けない事で歓迎されるが、こちらは天候に影響される。それに加えて、豪雨や台風の場合はプレイヤーの安全を考慮して中止――アミューズメント施設と言うよりもテーマパークの対応だろう。


 冷房が効き過ぎている訳ではないが、ビスマルクは若干の寒気を感じていた。冷房に関してはクールビズ対応の都合で28度と入口の張り紙にあったのだが――それでも寒い。彼女の場合は、特徴的な衣装の影響もあるかもしれないが、それは言わない方がいいだろう。



 ビスマルクは自分のプレイ順番が回るまでは他のプレイを見る事にした。リアルフィールドでは有名プレイヤーがいないのだが、逆にそう言ったプレイの方が気づく点もあるかもしれない。センターモニターの動画は有名プレイヤーの動向を見るにはうってつけだが、やはり視聴率と言うか動画再生回数に影響される。


 それを踏まえると――逆にリアルで見た方が良いという結論に至ったのだろう。稀にガングートの様なプロゲーマーが来るかもしれないので、この方が運には左右されるが――。


「あの姿は――!?」


 案の定だった。ビスマルクの目の前に姿を見せたプレイヤー、それはデンドロビウムである。しかも、右腕には新たなガジェットらしき物を装備しているようにも見えるが――プレイヤーネームに間違いがなければ、同一人物だろう。


「ゲームである以上、楽しめば勝ちとは言うが――それはルールが決まっている中で楽しむという意味でもある」


 想定外のアクロバット、チートプレイ、隠れギャンブル等の違法行為――そう言った物で荒らされていくARゲーム業界に対し、デンドロビウムは改めて感じていた。いっそのこと、これがデスゲームだったら――という考えは頭にない。その思考はWEB小説の見過ぎと言ってもいいだろう。


「自分に勝利条件があるとしたら、それはARゲームがチートがはびこるゲーム業界から脱却し――」


 ビスマルクは、デンドロビウムの発言が途中から聞こえなくなっていた。ノイズが入った訳でも、音声システムの障害でもない。単純に――爆音で聞こえなくなった、と言うのが正しいのかもしれないだろう。


「デンドロビウム、彼女は何と戦っているのか?」


 ビスマルクは疑問に思う。チートプレイヤーを狩るだけがチートキラーの仕事ではない。おそらくは、ゲーム業界を正常化する為の提言を――彼らがしていく事も、運営に対しての意見なのだろう。


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