エピソード51-2
・2022年7月4日付
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同日午後、ニュースサイトの一件も解決した頃――動きを見せたのは予想外の人物だった。
「未だに青騎士を名乗れば有名になれる――そう思う人間がいるのか」
アーケードリバースで青騎士便乗を撃破しているのは、デンドロビウムである。今回の青騎士便乗勢力は、便乗騒動後にネット上の情報を仕入れて青騎士を名乗り始めた勢力であり、実力としてはチートガジェットの使用プレイヤー以下だ。
そのようなプレイヤーにデンドロビウムが遅れを取る訳がなく、軽くあしらう事もなく――デンドロビウムは全力で排除する。それが、ある意味でもオーバーキルだったのは反省するべき点かもしれないが。
「ネットを炎上させれば自分が目立てる――そういう人間がいるからこそ、ネットで発言する人間全てがネット炎上に関係すると言うレッテルを貼られる」
デンドロビウムの持つ武装は、何時も使っているような武装ではない。しかし、手加減等をしたのではないのは彼女の動きから見ても明らかであり――。
「ネットを炎上させ、それで誰かが命を落とせば――ネット炎上はリアルウォーと同意義となるだろう」
デンドロビウムも――ある人物と同じ事を言う。彼女も同じようにリアルウォーを否定するのだろうか? あるいは平和主義や非暴力でも貫くのか?
実際には――そう言った考えではなく、リアルウォー化する事でARゲームが政府から規制され、それこそ風評被害の規模は計り知れない。それを考えているからこそ、デンドロビウムはARゲームがネット炎上でなくなる事を懸念している。
『デンドロビウム――お前は、何を考えてARゲームをプレイしているのか』
デンドロビウムのプレイを谷塚駅に設置されたセンターモニターで視聴していたのは、スレイプニルだった。あまりにも便乗勢力が多い劣化版青騎士に関して、呆れかえっているのだが――表情は確認出来ないだろう。
『ARゲームに政治的な駆け引きや超有名アイドルの宣伝、アフィリエイト系まとめサイト等を持ち出す段階で――』
結果を見る事無くスレイプニルは別の場所へ向かうのだが、一部の人間からは――スレイプニルが別の人物の様に見えていた。ARアーマーや一部ガジェットはARバイザーや対応機種でしか認識出来ないのは、ARゲームプレイヤーの常識である。
一般人では、そのアーマーが認知出来ないのは――今後の課題となるだろう。その為、裸の王様と似たような状態となっていたのは言うまでもない。
午後2時、近くのコンビニで何かが始まるのを待っていたのは、黒髪にサングラス姿のアイオワだった。今回はARスーツを着ていないのだが、ゲームをプレイする為に草加市へ来た訳ではないので――。
「チートプレイヤーの掃討は、あなたに任せようと思うけど――」
アイオワの目の前に姿を見せたのは、何とジャック・ザ・リッパーだったのである。既に彼女は正体が割れてしまっているのだが、知っているのはごく一握り。アイオワはジャックの正体を知らないので、あの場にはいなかったのだろう。
『誰かと思えば――アイオワか』
「ビスマルクが来ると思っていたの?」
『そう言う訳ではない。ちゃんと、誰が来るのかは把握している』
「チートプレイヤーを狩るチートキラー、最近は一部のアイドル投資家等の影響で、あまりやりたがる人物がいないという話よ」
『そう言う噂を流す勢力がいて、その方が都合がよいと考える人物がいる。利害関係としては、それで十分と考えているのだろう』
「どちらにしても、ネットが炎上すれば――と考える人物が、悪目立ちをする。嫌な時代になったものよ」
『ネット炎上で超有名アイドルの人気を上昇させ、神コンテンツを作る――それをディストピアや新日常系と言う人物もいた』
「それは、WEB小説サイトの小説だけの話――フィクションでしょ?」
『まぁ――そうなるな。しかし、そのフィクションだけの世界をノンフィクションにしようと言う人物がいたとしたら?』
話をしていく内に、ジャックが不穏な事を言い始める。それは、WEB小説サイトにあるような小説がノンフィクション化すると言う事だ。異世界転生や異世界転移が現実化するなんて――とアイオワは冗談半分に反応したのだが、ジャックの方は真剣そのものだ。
『これは、知っているか?』
ジャックがタブレット端末を操作し、アイオワに見せたパッケージ――それは、例のパルクールアニメだったのである。つまり――ジャックも、これを現実化させようと言う事に気付いたのかもしれない。




