運命の朝
1年に一度、実りを祝う豊穣祭。
その宴で、ファルカスの乙女は盾を手に入れたのだという。
「悪しき剣は盾によりて」
「滅び、盾は乙女を守る」
「想いあるべき人に手を」
「貸すは乙女の誓いなり」
騎士を目指す少女たちはファルカスの城門を目指して、駆けていく。
遠き昔から伝わる、秘めたる誓いを叶えるために。
-fantastic knight-
-第1部 誓いの日-
濃淡の掛かる空。
その景色が明けていく、朝焼けの平原。
黄金色の穂麦が、風で棚引く。
心地の良い音が、潮騒のように耳を掠める。
この光景が、私は誰よりも好きだった。
「きっと。誰もがもう知っている風景なのかもしれない」
けれど、今この瞬間は私のものであって欲しい。
駆け抜けていく道の途中で、私はそう願った。
運命の朝は、こうして始まりを告げた。
ガス灯に照らされた、城門前の公道へ差し掛かった。
開かれた門の前に並ぶ、無数の踊る影。
祭りの前に出店の支度をする人々や、守衛の近衛兵の姿がおぼろげに映った。
私は試験の行われる広場まで、馬を駅舎に留めるとゆっくりと歩き始めた。
「七つ国の物語には、続きがあるの」
ずっと昔姉さんから、その話を聞いてから。
「神から逃れた空の果て、この大地へまた誰かが現れると考えた人は」
見果てぬアークラウドをたった一つの脅威から護るため。
「盾を手に取り、そして神への感謝と贖罪を兼ねて」
喜びを。そして祈りを胸に秘めながら。
「この大地に破れぬ誓いを立てたのです」
騎士になる夢を私はこの胸に抱いた。
聳える壁があろうとも。
たった一つの誓いを胸に。
私はまた、この場所へと立った。