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fantastic knight  作者: 富海清隆
誓いの日
2/4

誓い

あの日夢を見てから、何度目の秋が訪れたのだろう。


「あんた、また今日もここで剣の練習してたの?」


そんなセリフにも、もう慣れっこになってしまった。


「修練よ、ジョゼット。もう明後日だからね」


「よくやるわ。たまには、私みたいに織物の一つでもすればいいのに」


私やジョゼットぐらいの歳になると、女は普通そういう特技を1つや2つは身に着けるものだ。


「私にはこれしかないから」


しかし、姉さんの背中を目にしてからというもの、私はそういったことに興味が持てなかった。


「カーリアさん、素敵だものね。女である私でも惚れ惚れするぐらい綺麗だし」


「私の盾は姉さんにはまだ遠く及ばないけど、今の剣を皆に見てもらいたいんだ。」



決して姉さんや騎士団の騎士ように盾が上手いわけではない。


身体が大きいわけでもない。


「ねぇ、どうしてだっけ?あんたが騎士様を目指すようになった理由わけ


「忘れたわ。いつか思い出したら、そのときね」


そんな嘘を話して、今日も陽は過ぎてゆく。


想いとは裏腹に、時は止まらず流れていた。



ジョゼットと別れてから程なくして、私は街へと続く坂道へ歩を進めた。


今日でこの丘に来るのも終わりにしよう。

そんな想いを胸に秘め、彼女はポケットのペンダントに手を添えた。


風が通りの木々凪ぐ音。

目を閉じ、耳を澄ませば、心和む世界が広がっていた。


夕焼けの空に手をかざせば、今度こそ願いは届く気がした。

やがて彼女は、ゆっくりそれまでの歩みを踏みしめるように家路についた。


「いよいよ明日だよ、母さん。私が夢見た日」


誰もいない坂道で、彼女は空を向いてそう呟いた。


「もう一度だけ見てて。私、頑張るから」

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