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最終話

 ――どうすればさくらは元に戻るんだろう……。


 毎日話し掛けても人形は何も変わってくれません。


 ――何かいい方法はないのかな?


 チャコはそんな事を考えながら歩いていました。

 今日は用事があるからとお店を早く閉めたので、いつもよりも早い帰り道です。

 ちょうど下校時間なのか沢山の子供達とすれ違います。その姿にさくらの姿が重なりました。


 ――さくら、さくら、早く元に戻ってよ……。


 なんだか悲しくなったチャコが急いで家に帰ろうとした時、すれ違った女の人から甘い香りが漂ってきました。


 さくらの大好きなメロンパンの香りでした。


 ――そうだ、これだ! 大好きなメロンパンを見れば、さくらはきっと元に戻ってくれる!


 チャコは女の人の手にした袋に飛び付くと、落ちた袋からメロンパンをくわえて逃げ出しました。


「こら、まて〜!」


 後ろから声が聞こえてきますが止まるわけにはいきません。


 ――ごめんなさい。でも、これでさくらが……。さくら、待っててね、今持って行くよ!


 必死に逃げて道路を横切った瞬間……。


 ドンッ!


 鈍い音とともにチャコの身体は弾き飛ばされました。道の真ん中にいたのにいつの間にか歩道にいます。身体中が痛くてたまりません。


 チャコはそれでもふらふらと立ち上がると、少し離れた所に落ちたメロンパンをもう一度くわえて、よろよろと身体を引きずって歩き出しました。




 チャコがやっとでお店についた時にはもう真夜中になっていました。

 入口の前に座りこみショウウィンドゥの人形を見上げます。


 ――さくら待ってて。明日になったら一緒にメロンパンを食べようよ。


 人形を青く照らして、空にはメロンパンのような満月……。

 それを見上げてチャコは祈りました。


 ――ああ、お月様、お月様。どうかさくらが元に戻りますように。また僕の名前を呼んで、笑って、頭を撫でてくれますように……。

 一瞬月がキラキラと瞬いた気がして、チャコはホッとため息をつくと、静かに目を閉じました。





 まぶしいほどの青い光の中、気がつくとチャコはさくらの膝の上にいました。


「チャコ、チャコ、遊ぼうよ」


 さくらがチャコの頭を撫でながら微笑んでいます。懐かしいその声も手の感触もとても心地よくて……。

 チャコはとても幸せでした。本当に幸せでした。





 次の朝、チャコは冷たくなっているのをお爺さんに見つけられました。

お爺さんはお店の裏庭にチャコを埋めると、小さなお墓を作ってくれました。


 人形の膝の上には青い首輪をつけた猫のぬいぐるみが置かれていました。

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