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トレンディ俳優の悩み

テレビ局の収録スタジオは熱気に包まれていた。


「最後のテイク(収録)いきまぁ~す」


(俳優の)皆さんお疲れです

「最後のテイクでございます。クライマックスシーンです」


張り切っていきましょう


大学を出たばかりのアシスタントディレクター(AD)は台本を丸めながら頭を出演者にさげた。


「よろしくお願いします」

カチン!


最後のテイク(収録)


まもなく深夜0時の時計に及ぶ。


スタジオのメインカメラは右へ左へ


俳優の動きをひとつとして逃がさないと動き出す。


画像収録に神経を使うカメラマン


緊張感から疲労が漂っている。


サブには身軽なカメラが備えつけられ微妙な動きを逃さない。


クレーン車にどっこいしょと座る。


据付け台の上からカメラマン自身の操縦に上下~前後と小回りよろしく。


スタジオ内を駆け巡る。


ドラマ出演者の細やかな表情を粒さに映していく。


最中にADはスタジオを見回し気を配る。


出演の俳優や女優がする演技になんらかの支障はないか。


セリフがあやふやになればカンニングペーパーをさっと広げる。


カメラに余計なものが映らないか細心の注意を払いテイクは一回で終わらせるプライドであった。


局のスタジオ収録。


毎週放映される好視聴番組は人気ドラマの最右翼である。


カチン!


「はいっOKだ。本日はここまでだな。深夜までご苦労だった」


このドラマなぁ~。そんなに(視聴率の)数字がいいのか」


主役を張る本人としては役柄の手応えが今一つしっくりこない。


今まで演じた好視聴率のトレンディドラマと比較してである。


「ハイッ有りがたいことに。先生の主役ドラマは頗る評判でございます」


顔つきを窺う発言である。

「ご覧になられる視聴者さまは幅広い年齢層だそうです」


若い女性だけのトレンディドラマと趣向が違う。


「先生の好演技の評判は回を重ねるごとに増して喜ばしいものでございます」


トレンディドラマは若い女性という概念を越えてお茶の間にあるとADは強調した。


チラッチラッ


俳優の顔を見て


すぐさま疑心暗鬼を読み取る。


トレンディだハイソだブルジョワと勢いだけで持て囃された俳優。


若さがあるからであった。

歳月が流れた今


中堅俳優の域に入っていくようで若い女性だけがお茶の間で憧れとは言えなかった。 


「幅広い年齢層に支援されているとはねぇ。なるほどねぇ…」


ADは差し障りのない言葉を選ぶ。主役の俳優につむじを曲げられてはドラマが台無しになる。


なにせドラマは演じる役者がノリノリにならなくては収録も困難。


主役としての顔が立つというわけでもある。


しかし…


演じるドラマの役柄がそろそろ出尽くしそうである。

常に恋愛をメインにするストーリーからして視聴者からの手応えはどうにもしっくりいかない。


家出した高校生ながらちょい役をもらい俳優としてデビューを果たす。


世間体としてのトレンディドラマ


テレビ各局は視聴率に翳りが見えてしまう。


「飽和状態ってやつじゃあないか」


実利的な局の取締役の重役クラスはトレンディ路線は引っ張り過ぎではないかとディレクターを諫めた。


視聴率があがらないのでは局のドラマ制作方針は方向転化を余儀なくされる。


「恋に腫れた惚れたの浮かれドラマはとかく安っぽいんだ」


シリアスなドラマがいい


「次には歯応えがガッチッとあるタイトなドラマだよ」


人情味の深みのあるシリアスなドラマ


「文学的な要素もふんだんだな」


重役らの年寄りも楽しめる万人向きドラマを作りなさいであった。


高齢化した重役は口さがない。


世間ずれした意見


密室だけの理論を交えたドラマ編成会議。


結論にいたるプロセスを間違い錯綜してしまう。


人気を探るだけの迷路に入ってしまう。


ドラマ担当ディレクターは頭を抱え悩んでしまう。


「重役さんはこれっぽっちも世情を知らない。流行り廃りはあるようでないようで」


ガチッとつかまえどころがわかれば苦労はしないのである。

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