表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/42

幕間 コスモノイド解放戦線・旗艦「リベリオン」カシム

※【視点:カシム】

【コスモノイド解放戦線・旗艦「リベリオン」】

硝煙の匂いこそしない。


だが、この肌を刺すような張り詰めた空気は、紛れもなく戦場のそれだ。


メインモニターには、先ほどまでの凄絶な戦闘記録が、無機質なデータと共に繰り返し再生されている。


白銀の流星と漆黒の悪夢。


常軌を逸したエネルギーの奔流、そして神業的な機動。


「ふぅ……」


私は司令席に深く身を沈め、すっかり冷めてしまったコーヒーを(すす)る。


口の中に広がる苦味と共に、深いため息が漏れた。


眉間の(しわ)が、また一つ深くなった気がするな。


「アルベルト王子の懐刀、漆黒の騎士クラウス。そして、もう一機は『白銀の流星』、宇宙海賊ベレット・クレイか」


乾いた声が、静寂に包まれたブリッジに響く。


「なぜ、奴らがこんな辺境宙域でやり合っている? 一体、何が起こっているというのだ?」


理解不能な状況。


私が長年の経験で描き上げた戦略図に、予期せぬ歪みが生じている。


「カシム司令。あの戦闘レベルは、我々の想定を遥かに超えています。一刻も早く撤退すべきです」


副官サーシャの声には、切実な憂慮が滲んでいた。


彼女は正しい。


この船に積まれた補給物資は、虐げられている同胞たちの命綱だ。


ここで失うわけにはいかない。


「サーシャ。君の言う通りだ。撤退準備を急がせろ」


私は重々しく頷いた。


目の前の敵を討ちたいという血気と守るべきものを優先する理性。


理想と現実の狭間での決断。


それが、老兵である私の宿命だ。


「だが、惜しいな」


モニターに残る白銀の軌跡を、私はじっと見つめる。


「もし、今、ユウキの『ヴァルキリー・ストライカー』がこの場にあれば。我々も、奴らと対等に渡り合えたかもしれん」


老いた私の手には余るが、あの娘の作る翼なら――。


私は通信機のスイッチを入れた。


「ユウキ、聞こえるか? 『ヴァルキリー・ストライカー』の完成は、まだか?」


『司令! 最終調整、完了しました! いつでも実働試験に移行できます! この機体さえあれば……! コンドルの奴らなんて!』


スピーカー越しに響く少女の声。


そこには、日々の疲労と、それを凌駕する確かな決意があった。


私は、このわずかな希望に賭けることにした。


「よし、ユウキ。よくやった。こちらの作戦が終わり次第、改めて指示を出す!」


『了解しました、司令! 必ず、ご期待に応えてみせます! 父さんのためにも……!』


「父さんのために」、か。


通信が切れた後、私は小さく目を細めた。


若者たちの情熱が、この老骨をまだ戦場に立たせてくれている。


私はブリッジの窓の外へ、広大な星の海へと視線を向けた。


旗艦「リベリオン」は静かにその巨体を反転させ、撤退を開始した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ