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永遠の愛を誓って〜死の間際に自分が転生者だと気づいた男〜

作者: うにぃぃ
掲載日:2025/02/09

 「あなた、何か欲しいものはありますか?」



 優しい声が、意識を揺り起こす。



 ああ、もうそんな時間か。



 永い、本当に永いときを生きた。



 この世界の全てをこの目で見て、この手で感じ、そしてこの心で受け止めた。



 もう、何も思い残すことはない。



 穏やかな夕日のような暖かな幸福感に満たされている。



 ゆっくりと瞼を開くと見慣れた部屋と見慣れた顔がそこにあった。



 妻の顔には深い皺が刻まれている。



 だが、その笑顔は出会った頃と変わらない、優しい光を湛えていた。



 「ああ、エレーナ……」



 掠れた声で妻の名を呼ぶ。



 「ここにいるわ、あなた」



 エレーナは優しく微笑み、私の手を握り返した。



 その手は温かく、そして力強かった。



 「ありがとう……」



 エレーナの手の温かさを感じながら、静かに目を閉じる。



 (ああ、ようやく、この時が来たか……)



 意識が遠のくにつれて、様々な記憶が走馬灯のように駆け巡る。



 貴族の家に生まれ、何不自由なく育った幼少時代。



 家督を継ぎ、領民のために尽力した日々。



 そして、最愛のエレーナと出会い共に歩んだ年月。



 どれもが、愛おしい思い出だ。



 (しかし……)



 ふと、一つの疑問が頭を掠める。



 なぜ、今このタイミングで……?



 なぜ、今になって自分が【転生者】だったことを思い出したのだろうか?



 私は確かに、この世界の人間として生きてきた。



 疑う余地もないほど、この世界の記憶、感情、そして知識が私の中に存在している。



 だが、同時に確かに【別の世界】の記憶も、私の中に存在していた。



 それは現代日本で生きていた平凡な男、【田中一郎】の記憶。



 (一体、どういうことだ……?)



 疑問は尽きない。



 だが、考えるだけ無駄なことかもしれない。



 どうせ、もうすぐ全てが分かるのだ。



 そう、全ては死後の世界で明らかになるだろう。



 (しかし、それにしても……)



 自分が今までやってきた政策や行動が、現代日本由来のものだったことを思い出す。



 領民の生活水準を向上させるために行った様々な政策。



 それは、現代日本の知識を基にしたものだった。



 農業技術の改善、衛生環境の整備、教育制度の改革……



 思えば自分がとっていた行動は、この世界の常識とはかけ離れたものばかりだった。



 周囲からは奇異な目で見られていたかもしれない。



 だが、それでも構わなかった。



 私は、自分の信じる道を貫いた。



 そして、その結果が今の繁栄に繋がっている。



 (ああ、そういうことだったのか……)



 長年抱えていた疑問が、氷解していく。



 時折自分がとっていた、謎の行動。



 それらは全て、【元の世界】の記憶が影響していたのだ。



 理由が分かれば納得できる。



 今までずっと、何者でもない私が、何故このような行動をとるのか、不思議でならなかった。



 だが、私が【転生者】なのだとしたら、全て合点がいく。



 私は、【私】のようでいて、【私】ではなかったのだ。



 私は、【私】の皮を被った、全くの別人だったのだ。



 (しかし、まあ、いいか……)



 どうやら、私は、【私】の人生を、それなりに全うできたようだ。



 やり残したことは、恐らくない。



 未練もない。



 心残りがあるとすれば……



 「エレーナ……」



 妻の名前を呼ぶ。



 「何ですか、あなた?」



 エレーナが優しい眼差しで私を見つめる。



 「実は……私は……違う世界で……死んで……この世界に……生まれ変わったんだ……」



 エレーナに長年隠してきた秘密を打ち明ける。



 エレーナは驚いた表情を見せたが、すぐにいつもの優しい笑顔に戻った。



 「そうだったのですね、あなた。でも、どんなあなたでも、あなたは、あなたですよ」



 エレーナの言葉に胸が熱くなる。



 「ありがとう……エレーナ……」



 私はエレーナの手を握りしめた。



 「必ず……来世でも……あなたを……見つけ出す……そして……添い遂げよう……」



 「はい、あなた。私も必ず、あなたを見つけます」



 エレーナは涙を流しながらも笑顔で答えた。



 (来世でも必ず、あなたと巡り会えますように……)



 私はエレーナの笑顔を見つめながら、静かに息を引き取った。



 意識が遠のく中、私は自分が【元の世界】で生きていた記憶を思い出す。



 田中一郎。



 それが、私の【元の世界】での名前だった。



 平凡なサラリーマンとして、ごく普通の人生を送っていた。



 趣味は読書と映画鑑賞。



 休日は近所の公園で散歩するのが日課だった。



 特筆すべきことは何もなく本当に平凡な男だった。



 そんな私がなぜ、この異世界に転生したのかは今となっては知る由もない。



 だが、一つだけ確かなことは、私はこの異世界で、かけがえのない存在と出会えたということだ。



 エレーナ。



 私の妻。



 私にとって、世界で最も大切な人。



 来世でも必ず、あなたを見つけ出す。



 そして、今度こそ永遠の愛を誓う。



 (来世で、また、あなたに会えることを信じて……)



 私は深い眠りに落ちていった。



 そして、再び目覚めたとき、私は全く新しい世界に立っているだろう。



 だが、きっと大丈夫だ。



 なぜなら、私にはエレーナとの約束があるから。



 必ずあなたを見つけ出す。



 そして、共に幸せな未来を築く。



 それが私の願いであり、そして私の誓い。








 ………………








 (あれ……?)



 意識が途絶えかけるその瞬間、私はエレーナの心の声を聞いた。



 『私も……あなたと……同じ……』



 (まさか……?)



 私は最後の力を振り絞ってエレーナを見つめた。



 エレーナの瞳は潤んでいた。



 だが、その奥には確かな光が宿っていた。



 (あなたも……転生者……だったのか……?)



 私はエレーナの心の声に驚きを隠せない。



 だが、同時に深い喜びが湧き上がってきた。



 来世でも、きっと私たちは巡り会える。



 なぜなら、私たちは同じ魂を持つ、特別な存在だから。



 (エレーナ……)



 私はエレーナの名前を心の中で呼んだ。



 そして、再び深い眠りに落ちていった。



 来世で、また、あなたに会えることを信じて。



こちらもよろしければ


→「異世界で最強の竜に転生したので自由気ままに過ごします!」https://ncode.syosetu.com/n5542ju/

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― 新着の感想 ―
最っ高!!!!!!! めちゃくちゃ凄い! (テンション高くてすみません)
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