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愛する元妻からの手紙を読んだ国王と紛糾する議会

 ガーナット国王アルベルトは一通の手紙を検閲官から受け取った。この手紙は検閲する必要はないと言ってあるので直接渡され封はされたままだ。宛名と差出人の筆跡だけで通ることになっている。

 定期的にユリアナについて報告するようにとメリッサに伝えたことを、メリッサは律儀に守って一月に一度報告してくる。書かれていることはユリアナのことばかりで、メリッサがどう暮らしているかは僅かしかわからない。もちろんユリアナのことも知りたいが、メリッサがどうしているかも本当は知りたいのだがと思いながらペーパーナイフを手に取った。

 メリッサの私的なことで唯一わかっていることは、一緒に行った侍女が結婚したことだけ。あとは伯爵家の養女になったと書かれていた時は、遠く離れてしまって本当にもう戻って来ないんだなと、本当の別れを感じて無性に寂しくなった。

 アルベルトが許し、その方がメリッサの為だと分かっていたこととはいえ、この約1年、メリッサを思い出さない日は一日もなかった。離れたからこそ、より思い出すのだろうか?側妃も二人減り、今では王妃と第二側妃のみだ。事務的に二人の邸に時折通っているが、心が満たされることはない。心の渇きが一層強くなるばかりだった。

 それでもそれを潤したのはユリアナの妊娠だった。自分に孫ができる。離れているから会うことは容易ではないが、それでも小さな命が生まれようとしていることに喜びを感じるとともに、自分が生きている証を感じた。

 ユリアナの妊娠については王妃が快く思っていないことは気付いている。ユリアナは結婚して直ぐに妊娠したのに対して、実の息子の王太子にまだ子どもができないからだ。この国は長子が後を継ぐ。次男たちも結婚する時期なのだが、王太子に子どもがいなければ後継者争いになると言って王妃が嫌がるので結婚させられないのだ。

 次男、三男ともに既に婚約者がいるのだが先に進めない。その為にとうとう王妃は王太子に側妃を娶られせる計画を実行した。もうすぐ王妃の息が掛かった令嬢が嫁いでくる。舞踏会で王妃が王太子に紹介し、王太子も応じたそうだ。仲の良い夫婦なのだが、母親の意志を拒めなかったのだろう。

 王家に嫁いだ以上いずれはと思っていただろうが、王太子妃が可哀想だと思ったが、アルベルトも何人も側妃がいたのだからダメだとは言えない。しかし、子を産んでいない状態で側妃が入れば、より王太子妃の妊娠が遠のく心配があるので、アルベルトが王太子妃カルラに精神的なものを専門とする者を侍女として送り込んだ。

 カルラは今は落ち着いて受け止めているようで、その侍女を相談役にと常に側で話をしているそうだ。

 側妃は侯爵家の娘らしい。らしいというのは王妃が主導で進め、アルベルトのところには結果しか知らされなかったからだ。王妃は王妃の務めもきちんと果たしてくれているので感謝しているが、最近の行動は目に余るものがある。

 今回の側妃の決定も事後承諾だった。決定する前に国王である自分に許可を取れと言ったら、側妃を娶るくらいでいちいち許可を取るのは面倒だと返された。それでも先に許可を取るように注意した。

 何故なら、前にメリッサたちが住んでいた邸を勝手に取り壊されていたからだ。これにはさすがにアルベルトも怒った。王宮が管理しているものを王妃の独断で壊すとはどういうことかと。それに対して王妃はあんな小さい邸に住む側妃なんてもう出てこないから、それならそこに花を植えようと思ったというのだ。

 王妃の独断でしていいことではないと言って、関わった人間全員に確認をしたら、アルベルトが許可したことになっていた。

 そのことについても怒りが湧いて、勝手に自分の許可があると嘘をついて業者を入れるとは越権行為だと言ったら、あんな邸を壊すくらいで一々許可を取るのは面倒だ。自分の判断で進めても良いだろうと言うのだ。自分は王妃だ、それくらいの権限はあると。

 他にも王妃の独断で決めて注意をしたことがある。

 側妃二人を蟄居させた為、邸には子どもたちだけになったのを良いことに、勝手に邸を奥の方に移動させたのだ。子どもたちに聞けば、王妃の使用人たちがやって来て勝手に荷物を全部移動されたらしい。その時に、残っていた側妃の荷物は箱詰めにされ今住んでいる場所に送られたらしく、フランカもラウラも泣いていた。

 その時も勝手なことをするなと怒った。すると王妃は通う必要のない邸なのだから奥でも良いだろうと言うのだ。これから王宮に近い邸は王太子の側妃たちが使うから移動させただけだと。

 子どもたちに自分が会いに行くのだからそのままで良かったと言うと、馬に乗って行けば良いと返された。メリッサのところに馬に乗って行っていたことを当てこすっているのだろう。何にせよ、自分の許可なくこういったことはするなと注意し、王宮の使用人たちに、子どもたちを元の邸に戻した。

 こういったことをすればするほど、王妃への信頼は薄れ心は離れる。今では頭痛の種だ。

 アルベルトの母親は王妃だった。他に側妃が三人。子どもは実の妹一人と側妃の子どもで、弟が一人、妹が三人いた。自分以外は王家の色を一色ずつ持っていた。母は側妃たちとの交流もし、良好な関係を保っていた記憶がある。王妃の仕事をしながら側妃や側妃の実家との交流をしていた。

 父が若くして病で急逝し、後を継いだのは18歳だった。王太子教育は終わり国王としての勉強も始まっていたが、急なことで戸惑うことも多かったが母が支えてくれた。

 そしてアルベルトが王妃を迎えた後妹を降嫁させた。他の側妃たちの意見を聞き、弟は妻を娶り王都にある王家の離宮に住まいを移し、その母である側妃もそこに移った。他の妹たちにも次々に降嫁先を決め、残りの側妃二人は特に仲が良く、こちらもまた王都にある別の離宮に移り、今も元気に二人で過ごしていて、たまにご機嫌伺いで会いに行っている。弟は王城に通いながら自分の補佐をずっとしてくれている。そして母は、八年かかって大仕事を成し遂げ、全てを見届けた後、父の隣に眠る人となった。

 既にその頃自分は結婚もし子どもがいて母も安心したのだろう。

 その頃は王妃も勝手なことをしたりしなかった。王妃としての仕事をこなしながら子育てもして、側妃たちとも上手くやっていて、その為母と同じようになってくれるだろうと期待していたのたが、いつの間にか勝手なことをするようになった。

 その信頼が崩れ始めたのはわかっている。メリッサの毒物事件からだ。どう考えてもメリッサ以外、その場にいた全員が関わっていたのは間違いない。あれだけいて何も証拠もなく目撃者もいないのは逆におかしい。

 前日の診察でも経過は良好だと言われていたのだ。検査結果で毒物は検出されなかったということになっているが、検査員からは検出されない毒物もあることを聞いていたから全員を疑った。しかし曖昧にするしかなかった。

 確定できないものを決めつけて罰を与えれば、各実家が黙っていないだろうから。メリッサには悪いがあの時はそうするしかなかった。

 メリッサが対象になった理由は分かっている。間に何人も子どもがいるが、王太子以来の王家の色を全て持つ王女を生んだからだ。二人目ももし王家の色を全て持って生まれてきたら。それが嫌だったのだろう。

 それを嫌だと思う時点でこの国の妃として失格なのだが。それでよりメリッサに自分の気持ちが傾いたのは勝手だが仕方ないことだと思っている。

 生まれていないとはいえ、人を一人、我が子を殺したのと変わらない妃たちより、健気に生きるメリッサを信頼し愛してしまった。それまでは平等にしていたつもりだったが、より傾いたのはあの事件のせいだ。他の妃たちにわからないように贈り物をしたり、夜の相手もメリッサにしか求めないようになったのだ。

 メリッサへの嫉妬は流産させても終わることなく、嫌がらせという形で続いた。その度に捜査をするが犯人がわからない。

 王家の色を持って子どもが産まれることは王家としては良いことのはずなのに、自分の息子以外が全て持って産まれてきたことから始まったことなのだ。

 こんなはずではなかった。そんなことを今更言っても遅い。だがそう思ってしまう。

 王妃には母と同じようにして欲しかった。実際母がしていたことを側で見ていたはずなのに何を見ていたのだ?夜一人でいるとそんなことを考えてしまう。

 アルベルトは手紙の封を切り、中から手紙を取り出した。そして書かれている内容に驚くと同時に嬉しさで心が久しぶりに満たされた。

 既に生まれて数ヶ月経っているらしく、名前はアルフォンスだという。ユリアナが決めたらしい。メリッサではこんな名前は付けないだろう。

 手紙には生まれた報告だけしたかったことと、して欲しいことは何もないと書かれていた。認知もいらないと。ガーナット王国にもあるがインデスター王国にも戸籍制度がある。子どもが産まれると父と母の名前が記されるのだ。時には望まれない子だとして父親が名前を書かない場合もある。メリッサはアルベルトに父の欄に名前を書かなくても良いと言っているのだ。

 だがそれはできないとアルベルトは強く思った。離婚したとはいえ、我が子に変わりはない。今直ぐは難しいが近い内に日程を組んでインデスター王国に行き自分の名を書いてこようと誓った。

 普段はメリッサからの報告の手紙には返事を書かない。あくまでも報告書なのだ。それを読むだけ。ユリアナには誕生日に手紙と贈り物もしたがメリッサにはない。離婚した手前できないのだ。

 だが今回は喜んでいるとことを伝える手紙くらいなら良いだろうとアルベルトはペンを持った。


「メリッサ様を国に呼び戻すべきです!」

 そう言ったのは王妃の兄だ。今は議会の最中だ。メリッサの子どもを国王の子として認定する為には議会で賛成をもらわなければならない。王妃の兄なのにメリッサに戻れとは、妹にそう言うように言われたのかもしれない。他国にいては自分が何もできないから。

「金色の目をお持ちだということは国益を考えてもメリッサ様に帰国命令を出してでも戻らせるべきです!」

 鬱陶しい。アルベルトは戻らせるつもりは一切なかった。その方がメリッサも息子も安全に暮らせるからだ。

「帰国命令も何も、メリッサは既にインデスター王国の国民だ。しかも伯爵家の跡継ぎとして養女になっている。我が国が口を出せるものではない」

「そもそも離婚したからと言ってさっさと他国の人間になるなど側妃としての自覚はあるのでしょうか?!」

 別の者が言う。この者も王妃の親戚だ。

「離婚したのだから好きにすれば良い。しかも養女となった家は代々内務大臣補佐をする家だ。特に王族の公務に関して管理する職務らしいからユリアナの側で働けると判断したのだろう」

「そうですな。そう言われて打診されればメリッサ様ならお受けするでしょうな」

 そう言ったのはアルベルトの側近の外務大臣だ。

「そんなおかしなことはない!娘のためとは言え国籍を変えるのが早すぎる!ましてや侍女まで!」

「侍女は向こうで結婚したのだから良いだろう。何かおかしいことがあるか?」

「それはそうですが、侍女は41歳ですよ!計画的なものを感じます!」

「どういう意味だ?それに何歳でも結婚していいだろう?」

 アルベルトはそう発言した者を睨んだ。

「そ、それは妊娠したのがわかって連れ戻されると思って慌てて変えたのでは?と」

「慌ててそんな良い家の養女になれるとでも?前に議会で説明したはずだが?

 インデスター王国側がユリアナが来ると同じくして、母親も来るなら国籍を変えると安心して暮らせるだろうと考え、ちょうど跡継ぎを探していた王妃の伯母が名乗り出たと。

 メリッサが悩んだことと、手続きに時間がかかったから連絡が遅れただけで、本来行って直ぐにインデスター王国側からの打診があって、それを結果的に受けただけだ。メリッサが自分で養女先を探したのではない」

「それはそうですがあまりにも。それか、生まれた子の戸籍に陛下の名前もいらないなんて本当に陛下の子どもなのですか?」

「疑うのか?」

「生まれたことでもらえるお金もいらない、認知もいらない。報告だけなんておかしいでしょう?そもそも子どもが生まれない体だったはずですよね?」

「向こうの医者は誤診だと断言したそうだ。その後妊娠しなかったのは極度の緊張状態で生活していた為だろうと言っているそうだ。何故そんな生活をしていたのかは言わなくても分かっているだろう?

 あの時診察した医者はもういないから確認は取れないがな」

 そうあの時典医だった医者は事件の半年後に事故死した。それも今では事故死かどうか疑わしいものだ。

「時期的にも私の子で間違いない。それに目は金色だと言ったはずだ。それでも疑うのか?」

「いえ、そ、それなら陛下のお子ですが」

「お金がいらないのは、向こうで十分収入があるからだ。領地経営が上手く行っているらしい。しかも生まれた子の国籍は生まれた時からインデスター王国だ。だから離婚したのもあってガーナット王国からの祝いと私の遺産を放棄するということだ」

 アルベルトは認知についての話に入ろうとしたがまだ異論があるのか、王妃の兄が声を上げた。

「いいえ!やはりメリッサ様には戻ってもらいましょう。陛下のお子様です。危険なことに合ってはいけません!こちらで育てましょう!それかお子様だけでも連れ帰り王妃に育てさせましょう!」

 アルベルトは机を叩いた。

「何故そうなる?メリッサの子だ。王妃が育てる必要はない!」

「しかし、王妃もそれを望んでいます」

「王妃が?そんな話は聞いていない。私が聞いていない話はなかったことにしろ。この場に王妃の意見などいらない」 

「ですが!」

「もう他国の人間だ。こちらで犯罪をしたわけでもあるまいし、メリッサが拒否しているのだから、インデスター王国に二人を引き渡せというのは受け入れてもらえない。ましてや、生まれた子は伯爵家の跡継ぎとして育てられるのだ。

 王妃の伯母ということはユリアナの夫である王太子の大伯母だ。実家は公爵家だぞ。ありとあらゆる手で拒否してくるだろう。

 我が国としてもこのことで他国と揉めたくはない。私には結婚していない子どもがまだ王女が二人王子が四人もいる。

 離婚後生まれた子は認知はするが、我が国に連れ戻すつもりはない」

「認知されるのですか?メリッサ様はいらないと」

「そうだ。だがメリッサはそれで良くても子が父親が不明では可哀想だ。そのうちインデスター王国に行って、顔を見て確認してから戸籍に私の名前を書いてくる。

 所謂婚外子になるが問題ない。私の遺産はユリアナには行くが生まれた息子には行かないようにする。メリッサが望んでいるからそれだけは叶える」

 静まり返った議場が国王の意見を諾としようとした時、またも王妃の兄が声を上げた。

「今の王家は花が足りません!側妃二人もいなくなってしまいましたし。メリッサ様に戻ってもらえば、」

「その発言は本気で言っているのか?王妃と第二側妃、王女二人を侮辱していると思わないのか?王太子妃もいる、近々王太子の側妃も増える。それに花が足りないとは、どういうつもりの発言だ?我が妃と娘には花がないというのか?答えよ!」

「も、申し訳ありません。そのようなつもりではなくもっと花があればと、」

「これから王太子の側妃がまだ増える。他の王子たちも結婚して城に残ればその妻が花を添える。何が足りない?」

 最終的に王妃の兄はこれ以上は不興を買うと思ったのかやっと黙った。

「では、メリッサの子は婚外子としていずれインデスター王国に行って直接確認後私の子としてサインしてくる。だが遺産はない。それで良いな」

「陛下の御心のままに」

 そう言って全員が頭を下げて議会は終了した。


 アルベルトは不快でたまらなかった。議会にまで王妃の手が回って意見を推してくる。そんなことをアルベルトは望んでいない。

 王妃の役目はそういったことではない。王家の所領の管理で国王の補佐をすること。視察や慰問、子どもの教育、側妃たちとの関係を良好にすること。そういったことだ。

 特に視察や慰問の数は多く、1年でどれだけの数をしているかわからなくなるほど行っている。それらをするのは国民が喜ぶからだ。国民に寄り添う王家として大切な公務だ。

 それを王妃はきちんとこなしている。だから感謝をし、王妃として立てて来たつもりだったが、メリッサがいなくなってからというもの、王妃の職責以上のことを勝手にし始めた。

 メリッサの子を王妃が育てるなど信頼できるわけがない。

 今、この崩れてしまった関係をどうするべきか、それがアルベルトの頭を悩ませている。

 アルベルトが執務室に戻り書類を読んでいると王妃の来訪を補佐が告げてきた。

「通せ」

 アルベルトは書類を手に扉を見た。そこへ王妃が入ってきた。

「どうした、シーラ」

 黙ってこちらを見てくる王妃にアルベルトから声をかけた。

「認知されるそうですね」

「ああ」

「私はメリッサを呼び戻すべきだと思います。ここで暮らさせるべきなんです」

「メリッサの邸はもうないのにか?」

 その言葉に王妃の眉間にシワが寄った。

「あれはたまたまです。もう戻らないと思ったからしただけです。他にも邸はありますからそこを使えば良いのです」

「メリッサの国籍はインデスター王国だ。その子どももな。離婚も成立しているし、私はメリッサと再婚するつもりはない」

「別にアルベルト様が再婚なさらずともアルベルト様のお子を育てる為に戻れば良いだけです」

「メリッサを乳母にでもするつもりか?

 メリッサは向こうで伯爵家に養女に入ったと言ったはずだ。当主としての教育も進んでいるだろう。インデスター王国の不興を買ってまで戻すつもりはない。生まれた子は婚外子だ。認知はするが、メリッサの希望通り、私の遺産が渡ることはない」

「王家の色を持った子どもです!他国の国民にするなど反対です!」

「おかしなことを言うな、シーラ。ではユリアナが産んだ子が王家の色を持って生まれたらこちらに渡せと言うのか?

 これまでも他国と婚姻関係を結んだ王族が何人もいる。婚外子が他国の国籍でも問題あるまい」

「私がその子どもを育てたいのです。陛下の最後の子どもかもしれません。だから王妃の私が育てます。私の気持ちを汲んでください」

 そんな感情を感じられない顔で言われても本心だと誰が思うのだ。

「何と言われようと私の決定は変わらぬ。

 シーラ。最近のお前は疲れているようだ。公務は全て王女たちに回すから休むように」

「私から王妃の仕事を取り上げるのですか!」

「そうではない。疲れているようだからたまにはゆっくり休めと言っているだけだ。いつも公務で忙しいからな。良いな。一週間邸でゆっくりしていろ」

「はい」

 そう言って王妃は去っていった。

 ガーナット王国では王妃が国政や議会に加わることはない。過去に国王より力を持った王妃がいて、その時に国が荒れたからだ。それ以来一切関わらせないことになっている。それを王妃はわかっているはずなのだが。

 頭が痛い。アルベルトは飴玉を一つ口に放り込んだ。以前ユリアナが疲れた時に舐めると少し楽になると言って王都の菓子屋から買ってきたものを今も自分で買い続けている。確かに舐めると少し楽になる気がするからだ。それでも今日は一個では足らず二個舐めてようやく落ち着きを取り戻したのだった。

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