夫の愛を受け止めた王太子妃と妻を愛し尽くしたい王太子
母の邸を後にし王太子宮に戻ると時間が遅かった為に静まり返っていた。ユリアナの部屋の前でフレデリクにまた後でと言われて別れ部屋に入るとエレンとマーヤが待っていた。
「お帰りなさいませ。ご準備いたしましょう」
エレンに言われて頷きまずお風呂に入った。体を丁寧に洗われ揉みほぐされて、髪も洗い乾かされた後何度を梳かれる。
「フレデリク殿下がお選びになった夜着でございます」
受け取ったユリアナは真っ赤になった。
「こ、これを着るの?」
「はい。申し訳ございません。私どももこれを渡された時は一応苦言を呈しました。ユリアナ様は清楚なお召し物がお似合いになると言ったのですが、どうしてもフレデリク殿下がこれが良いとおっしゃるので。申し訳ごさいませんが今夜だけで良いので着てあげてください」
ユリアナはフレデリクが望むならと夜着をまとった。白い夜着は肌が透けて見えるほど薄い生地で、袖もなく肩ひも式で、長さもひざ上までしかない。裾はヒラヒラとフリルが付き、合わせ目を止めるリボンの色はピンクで三つ並んで付いていた。
ほぼ全裸と変わらないとユリアナは着た後両手で体を隠した。
「本当に、殿下は・・・。男の欲望というのはこういうものなんですかね?私にはわかりませんが、ユリアナ様、やはり別の物を用意しましょう」
そうエレンが言ったがユリアナは首を振った。
「フレデリク様がお望みなら恥ずかしいけど頑張るわ」
「今夜だけと仰ったほうが良いかと。気を良くして次々こんなのばかり買われてはユリアナ様が風邪をひきます」
「ふふ、そうね。さすがにこれは今夜だけにして欲しいわ。恥ずかしくて落ち着かないもの」
ユリアナは二人に感謝を伝えて下がらせるとベッドに座り、膝が露わになっていることに気付き手で押さえてフレデリクを待った。
いよいよこの日が来た。今宵フレデリクの妻となる。口付け以上のことをするのだ。本で読んで知識はあるが、もちろん実践はない。母からはフレデリクに身を任せれば良いと言われているが、どのようなことが起こるかわからないのはやはり緊張してしまう。
俯くと前髪がサラリと落ちてきた。ユリアナの前髪は長く、後髪と同じ長さで、普段はハーフアップやカチューシャ、髪留めなどで落ちてこないようにしているのだが今は何もつけていないので、落ちてきた髪でこのまま顔を隠していたいと思った。ずっと落ち着かず、これからのことを考えるだけで頭が沸騰しそうになる。
今でさえこんななのだ。フレデリクに触れられたらどんな風に自分はなってしまうのかと不安と恥ずかしさが込み上げ、逃げ出しそうになるのを懸命に抑えた。
フレデリクの妻になるのだから、必ず通る道なのだ。しかも今夜限りで終わることではない。これから幾度となく共にする夜に求められたら応えなければならない。母から体調が悪ければ拒めば良いとも言われたが、ユリアナはフレデリクを拒める自信がない。フレデリクに求められたらそれ以上応えたくなってしまいそうだ。
「ユリアナ」
「きゃっ!」
ユリアナが一人考えているうちにフレデリクが側に来ていた。
「驚かせるつもりはなかったんだ。一応ノックもしたんだが応えがないから入ってきた。
着てくれたんだね。可愛いよ」
そう言ってフレデリクはユリアナを抱えてベッドに横たわらせ、上から伸し掛かってきた。フレデリクが両手をユリアナの顔の横につき見下ろしてくる。
「そんな目で見ないでください」
「どんな目?教えてユリアナ」
「あ、熱くて、見つめられたら溶けそうな目です」
「そうか。ユリアナとの夜を過ごすのを待ち焦がれていた。だから溶けるほど見続ける。愛してるよ。ユリアナ」
そう言って口付けされ、私もと言いたいのに言えないほど激しい口付けが直ぐに始まった。
長い口付けとフレデリクが太ももを撫でるのに、ユリアナの心拍数が上がっていく。
口付けから解放された時にはユリアナの目はとろんと熱に浮かされたようになっていた。
「今度一緒に夜着を買いに行こう」
楽しそうにフレデリクが言ってくる。
「フレデリク様はこういったのがお好きですか?」
「どんなのでもユリアナが着れば可愛いよ。でも、よりこういうのを着て欲しいかな」
「恥ずかしいです。こういうのは」
「ダメか?」
「ダメじゃないですけど」
「なら時々で良いから着てくれたら嬉しい」
「じゃあ、時々なら」
そう言うとフレデリクがユリアナの髪をかき分け耳を銜えた。
「あっ、や、」
「ユリアナは耳が弱いからな。反応が可愛い」
「ダメ、です、あ、いや、」
背筋をビリビリ何かが走り抜ける。
そしてハラリと夜着の紐が解かれ肌が露わになっていることにユリアナは気付いた。耳を舐められながら太ももから腰をなぞられて、更に体に何かが這い上がり仰け反った。
「フレデリク、さ、ま、」
ユリアナはフレデリクの名を呼んだ。それにフレデリクが顔を上げユリアナを見つめてくる。
「ユリアナが本当に嫌がることはしない。今日は痛いこともあるだろうけど、なるべく痛くないようにする。
それから眠るのが遅くなるのを覚悟して」
フレデリクはそう言いながら今度はユリアナの額に口付けをしてきた。
「フ、フレデリク様。こんなに早く紐を解かれるのなら、こういうのを着なくても良いのではないですか?」
思い切って言ってみたがフレデリクの人差し指がユリアナの唇を塞いだ。
「それを言ったらダメだよ。脱がすために着てもらうんだからね。ユリアナ。諦めろ」
そう言ってユリアナの首筋に顔を埋めたフレデリクは、一度や二度で終わることなく、初めてだからこれ以上はと言うユリアナに、少しでも早く慣れような、と言って更に愛撫を繰り返し、ユリアナはなるべく応えたい一心でフレデリクのしたいようにさせ、フレデリクの言うことに応えた。
ユリアナの体はフレデリクの口付けがされていない場所はないというほどで、足の指先までも口付けされ咥えられ、その度に腰が震えたが、フレデリクからもたらせるものだからと全てを受け止め、ユリアナは声を上げ続けた。
やっと眠りにつけたのは外が明るくなる頃だった。疲れ切ったユリアナと違って、充実した顔をしたフレデリクがユリアナを腕の中に抱き寄せ、ユリアナはフレデリクの鼓動に安心して僅かな眠りについた。
髪を撫でられる感触でユリアナが目を覚ますと、先に起きていたフレデリクがユリアナの髪を撫でていた。
「おはようございます。何時ですか?」
「おはよう、ユリアナ。まだ七時だよ」
「えっ?まだそんな時間ですか?よく寝たと思ったのですが。フレデリク様は寝てらっしゃらないのですか?」
「ちゃんと寝た。目が覚めたら可愛い妻がすやすや腕の中で寝ていたから見ていた。こんな幸せな朝を迎えられて嬉しいよ。これから毎朝ユリアナの寝顔を見られるから幸せだな」
ユリアナはそっとフレデリクの頬に手を添えた。
「明日は私が寝顔を見ますからね。絶対に先に起きます」
「それは無理だな。先に起きるのは難しいだろう」
「何故ですか?明日は無理でも明後日があります」
「いつか見られると良いな」
フレデリクがそう言ってまたユリアナの髪を撫でた。
「フレデリク様。昨晩、私はフレデリク様のお気持ちに添えていましたか?」
そう聞いたユリアナの手をフレデリクが握った。
「添えるも何も、ユリアナの反応が可愛い過ぎて全く止まらなかった」
「良かったです。こういうのって相性というのがあるのですよね?相性が悪いとお互い辛いと聞きました。良かったなら嬉しいです」
ユリアナが笑いかけると唸りながらフレデリクが肩に顔を埋めて来た。そのままフレデリクが聞いてきた。
「ユリアナのそういうのは天然なのか?それともわかってて煽っているのか?」
「おかしいことを言いましたか?すみません。書物に書いてあったので心配になって」
オロオロとユリアナが言うとフレデリクが伸し掛かってきた。
「ユリアナ。これはユリアナが悪いんたぞ。僕を煽ったという自覚を持ってくれ」
そう言って首筋に舌を這わせるとユリアナの体を撫で始めた。
「あっ、そんな、つもりないです。
う、あっ、朝ですからこれ以上はもう」
「ダメ。止めてあげない。ユリアナには僕との相性が良いのをもっと実感させないと。
大人しく可愛がられてろ」
「や、あっ、」
ユリアナは朝からフレデリクを受け止め、終わった時には息も絶え絶えだった。それでもフレデリクに求められ、応えられたことが嬉しくて、お腹を撫でた。
「どうした?辛かったか?」
「いいえ。早くここにフレデリク様のお子が欲しいなと思いまして。あれだけしたんですからもういるかもしれませんね」
そう言って笑うとフレデリクが抱きしめてきた。
「僕は何回、ユリアナを好きにならされるんだろうな。一生ユリアナには敵わないかもしれない」
ユリアナがフレデリクの胸に手を当てフレデリクを見上げた。
「私の方がたくさん好きになってますよ。フレデリク様が優しいのところも、私のことを考えてくれているのも好きだし、仕事中の真剣な顔も好き。
髪も目も、鼻も唇も、手も好き。首から肩も好きだし、逞しい腕も好き」
「いっぱいあるな。僕もユリアナの色んなところが好きだが、どこが一番好きかは言わない」
「え!知りたいです」
「教えない。僕だけの中にしまっておく。さあ、汗をかいたし、風呂に入るか」
そう言ってフレデリクがメイドを呼んだ。
「一緒に入るか?」
その言葉にユリアナは真っ赤になった。
「入りません!絶対入るだけで終わらないですもの」
「信用されてないなぁ」
「信用してないわけじゃなくて」
「じゃあ一緒に入ろう」
ユリアナは仕方なく頷いたが、やっぱりお風呂に入るだけで終わらなかったことに怒ったユリアナは、お風呂上がりにフレデリクと口をきかなかった。
謝るフレデリクに、エレンとマーヤが冷たい目を向けている。
長湯と行為に疲れ切っていたが、ユリアナはしょうがないなあと、フレデリクに甘い自分に言い訳をして謝罪を受け入れ、フレデリクの頬に口付けをした。
フレデリクに捕らわれてしまったのだ。愛する人の子どもが早く欲しいから、どれだけ求められても応えてしまうだろうと、ユリアナは全てを受け入れようと思った。
母が身籠った時に、戸惑いながらも嬉しそうな姿が思い浮かぶ。そして美しさが増していたことも。
ユリアナもフレデリクの子どもを身籠ったら嬉しくて幸せだろう。そう思ってお腹を撫でた。
「すまない。無理をさせ過ぎたな」
フレデリクが謝罪してきたのでユリアナは首を振った。
「きっとフレデリク様に似た可愛い子が生まれてきますよ。いつになるかわかりませんが、早くフレデリク様のお子をこの腕に抱きたいです」
「ユリアナ。急がなくても構わない。授かりものだからな。早く欲しいと焦ると中々妊娠しないだろう。義母上も緊張が解けて妊娠されたのだからね。
ユリアナは毎日僕に可愛がられていればそのうち子どもができる。深く考えるな」
「そうですね。私は何も考えないようにしないといけません」
「そんな畏まらなくて良い」
「いいえ。私は何も考えないようにするので、フレデリク様が頑張ってくださいね。私が早く妊娠するように」
「ユ、ユリアナ。そういうのは何というか。はあ」
「どうかなさいましたか?」
「いや、僕の妻は可愛い過ぎると思っただけだ」
「ふふ。私の夫は素敵過ぎです。じゃあよろしくお願いしますね」
「わかった。ユリアナ、自分から言ったんだから嫌とは言わせないからな。覚悟するように」
はいとユリアナは頷くと朝の支度を再開した。
これから二人で朝食だ。フレデリクのせいで少し遅くなったが、二人とも今日は休みだ。のんびり過ごすことになっている。
どんな話をしようかとユリアナが考えている時、フレデリクは今日一日どう可愛いがるかを考えていた。
そしてユリアナはおしゃべりもそこそこに、フレデリクの求めに応える一日となったのだった。