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愛する人の側に戻った王女と王女を可愛がりたい王妃と王女

 やっと二人が去り王太子宮に落ち着きが戻って来た。明日の朝にはインデスター王国を去ってくれると思うとユリアナは安心すると共に、迷惑をかけたインデスター王国の方々や、ガーナット王国の人たちに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 帰りの道中、大人しくしていてくれたら良いのだが。

 ユリアナはそんなことを考えながらフレデリクが戻るまでの間を談話室で過ごし、今は明日から始まる公務について内務大臣から説明を受けていた。

「本来はユリアナ王女殿下のご公務についての説明担当はアレリード伯爵になります。しかしご存知の通り今は休暇中ですから私が参りました。

 ではご説明を始めます。明日は王妃殿下と共に孤児院に慰問に行っていただきます。三か所です。二か所目では王妃殿下が子どもたちと一緒にお食事を作られますのでそのお手伝いをお願いします。そしてそこでは子どもたちと一緒に食事もします。他の二箇所はクッキーを子どもたちと焼きます。

 それから明後日は王立学園の剣術大会の見学に王妃殿下と一緒に行っていただきます。

 明々後日からは王太子妃教育がしばらく続きます。お忙しくなりますが、きちんと休暇もありますので大丈夫ですよ。もちろんメリッサ様の侍女の方の結婚式の日はもちろんお休みです」

 中々予定が詰まっているなと思いながらも、それだけ期待されていると思うと嬉しさが増す。

「わかりました。料理もクッキーも作れますのでお役に立てそうです。

 王太子妃教育は教科書や資料があるなら先に持ってきてもらっていいですか?読む時間がありそうなら先に目を通しておきたいので」

「かしこまりました。そのように手配します。ダンスのレッスンも予定にあるのですが、フレデリク殿下が講師を女性にするようにとのことなのでそのように手配しております」

 内務大臣が少し笑っているようだ。

「フレデリク様が男性の講師を嫌がったのね」

「その通りです。他の講師も全て女性ですよ」

 内務大臣の言葉にユリアナは何とも言えなくなった。きっと大変だったろう。

「なんだか申し訳ありません。お手数をおかけします」

「いえいえ。フレデリク殿下がそれだけ大切にされているということです。私もですね、いくつになっても妻が大事なものですから、ついつい買い物について行って色々と買ってしまうんですよ。妻に途中で止められるまで。そんなにいらない!っていつも怒られています」

「ふふふ。仲がよろしいんですね。素敵なご夫婦です」

 内務大臣が怒られている姿を想像しユリアナは笑った。

「さて、では明日からよろしくお願い致します。今日はゆっくり休まれてくださいね」

 そう言って内務大臣は去って行った。

 次回からは王城のユリアナの執務室で予定を聞くことになっている。いよいよ本格始動だ。

「ユリアナ様。フレデリク様がお仕事で遅くなられるそうなので、お食事をご一緒できないと連絡がありました。お部屋にお運びしますか?」

 エレンが聞いてきたがユリアナは首を振った。

「食堂へ行くわ。部屋で食事をすることに慣れたくないの。フレデリク様はお忙しいからこんな日が多いでしょうけど、気分的にはいつでもご一緒していたいから」

 そう言って微笑むユリアナにエレンとマーヤはキュンとした。なんて可愛らしいことを言うのか。こんな言葉をフレデリクが聞こうものなら仕事を放り出して来そうだ、と二人は胸の中に収めておくことにした。

「では、そのようにします。もうそろそろお時間ですから参りましょうか」

 ユリアナは食堂に着くと、やはり一人の寂しがあったが、忙しいフレデリクの邪魔はできないと思い静かに食事をした。どれも美味しいがやはり物足りない。

 早く一緒に食べる家族が欲しい。そう思った瞬間、目の前にフレデリクとフレデリクに似た子どもたちがいるように見えて、そんな未来が早く来ますようにと願った。

 食事も終わり、湯浴みをして談話室でフレデリクが戻ってくるのを待っている間、ユリアナは持ってきてもらった貴族名鑑を見ていた。当主の姿絵と共に、爵位や領地の特産品、国政に関わっている人はその役職など、色々と書かれていて中々面白い。

 これを全部覚えないとならないと思うと面白いなどと言ってられないのたが、少しずつ頭に入れようと見ていると、フレデリクが戻って来たと知らせを受け、ユリアナはガウンを羽織り出迎えに行った。

「お帰りなさいませ。それからお疲れ様です」

 そう言ってユリアナは笑いかけた。こんな言葉が言える日が来るなんてと、嬉しさがこみ上げる。

「ユリアナ。ただいま。それからお帰り。一緒に食事を摂れなくて悪かった」

 そう言いながらフレデリクがユリアナを抱きしめてきて、ユリアナは大人しくその腕に抱かれそっとフレデリクの背に腕を回した。

「いいえ。お忙しいのですもの。お時間のある時にご一緒できれば良いです」

「談話室で待っていてくれ。直ぐに行くから」

「はい」

 手を繋ぎ談話室の前でフレデリクと別れると、ユリアナは談話室でまた勉強しながらフレデリクを待った。

「ユリアナ」

 名を呼ばれて振り向くとフレデリクが談話室に来たところだった。

「フレデリク様!」

「何を見てたんだ?」

 ユリアナは夜着姿のフレデリクに心臓が跳ね上がった。湯浴みをしてきたのかまだ少し濡れた毛先や、夜着の上からでもわかる筋肉から漂う色気に目眩しそうで、それを気付かれないように、明るく答えた。

「貴族名鑑です。覚えようと思いまして」

「そうか、徐々にでいいぞ」

 ユリアナの横に座ったフレデリクがユリアナの肩を抱き寄せてきた。ユリアナはそんなフレデリクの肩に頭をもたれかける。

「やっと二人きりになれたな」

「はい。ご迷惑をおかけしました」

「そんなのはいい。こうして側にユリアナがいてくれれば」

「はい。私もフレデリク様のお側にいられて嬉しいです」

 フレデリクがそっとユリアナの頬に触れてくる。

「約束したことしてもいい?」

「はい」

 ユリアナはフレデリクの紫の瞳に吸い込まれるように目を閉じた。

 始めは額や頬に軽い口付けを。そして唇に触れるだけの口付けをしたあと、フレデリクは更に求めて舌を潜り込ませてきた。ユリアナはそれに応えながらフレデリクの広い背中に腕を回した。

「う、うん・・・」

 段々激しくなる口付けに頭がぼうっとしてきて、それでも少し唇が離れるとフレデリクの名を呼んだ。

 口の中を舐め尽くされ息も絶え絶えになった頃、やっとユリアナは解放され、荒い息を整えながらフレデリクを見ると額に優しい口付けをされた。

「ユリアナ」

 名を呼ばれて心臓がキュッと締め付けらる。こんな風に呼ばれたことなんてない。フレデリクだけがユリアナの名を呼ぶとおかしくさせる。心臓を握られたようで、切ないようでいて、心が振るえて落ち着かないのに嬉しくて溜まらない。

「フレデリク様、もう一度口付けをしてください」

 そう言ってユリアナはフレデリクの髪を撫でた。

「お母様が結婚したらもっと凄いことをするのだから今から口付けには慣れておくようにって。

 ダメですか?」

 そう言った瞬間ユリアナはソファーに押し倒されていた。

「ダメなわけない。何度でもしよう」

 フレデリクの唇が再度額に口付け、ユリアナがフレデリクの首に腕を回すと今度は唇を吸われた。そして長い口付けが続く。フレデリクの片手がユリアナの太ももを何度も撫で、その度に背中を何かが走り抜けた。

「あ、うん、う・・・」

 もうこれ以上はおかしくなると思った瞬間フレデリクの唇が離れた。ぼうっとその唇を見つめると濡れていたので、ユリアナは指でそっと拭った。

 するとその指をフレデリクが咥えて舐めてきたのにゾクリとして指を引いた。

「フレデリク様。口付けだけです。それ以上はダメですよ」

 ユリアナは太ももに置かれていたフレデリクの手を握って外させ自分の頬に当て頬ずりするとそう言った。

「ユ、ユリアナ?これは逆効果だぞ」

「何がですか?」

「いや、まあ、良い。そうだな」

 そう言ってフレデリクはユリアナを抱えて起き上がった。

「半年理性を試されそうだ」

 そんなことを言うフレデリクの肩に寄りかかるとユリアナはその手を握った。

「私もです」

 ユリアナがそう言うと、フレデリクが深呼吸しているのがわかった。ユリアナも上がった息を整えようと一緒に深呼吸すると、横でフレデリクが頭を肘に埋もれさせていた。

 しばらくそんな時間が続き、夜も遅くなりそれぞれの部屋に行く時間になっていた。

 離れ難いと思いながらも明日はそれぞれの仕事が待っている。

 ユリアナはフレデリクの額に掛かっている髪を後ろに撫でつけると、その瞳を見てそっと額に口付けた。

「お休みなさい。フレデリク様」

 そう言って立ち上がると自分の部屋へと行ったのだった。

 残されたフレデリクが天を仰ぎ、魂が抜けかけているとも知らずに。


 ユリアナは翌朝フレデリクと一緒に食事を摂ると王宮へと向かった。今日から王太子の婚約者としての公務だ。

 母国でも公務はしてきたが、やはり他国となると緊張する。しかも王妃ミカエラと一緒なのだ。先日の晩餐会でとても優しい素敵な方だと分かっていても、改めて義母になると思うと、気に入ってもらいたいし、仲良くもしたい。

 そんな意気込みを持って向かったのだった。

 ユリアナが王宮前で待っているとミカエラが出てきた。

「おはようございます。王妃殿下、今日はよろしくお願い致します」

 ユリアナはきっちりとカーテシーをして言葉を待った。

「そんな畏まらなくて良いわ。私はユリアナの義母になるのよ。お義母様と呼んでね」

「恐れ多いです」

 金色の髪で水色の瞳のミカエラが首を振るとキラキラと音が聞こえるような美しさだった。

「あら、ダメよ。それ以外は認めないわ。さあ言ってみて。お義母様、よ」

 ユリアナは緊張しながらも従うことにした。

「お義母様、よろしくお願い致します」

「ふふふ。今日はそこまでにしておくわ。本当は敬語もいらないんだけど、ユリアナは急に言われてもできないだろうから。その代わり結婚式までには家族としての言葉使いになれるようにしてね」

 そう言って笑うミカエラは美しく、年齢を感じさせない。

「はい。善処します」

「もう!真面目なんだから。まあ、徐々に慣れていきましょうね。さて出かけましょう」

 そう言って二人で馬車に乗り込むと慰問先へと向かった。

 慰問先ではどこでもミカエラは歓迎され、またユリアナも同じく歓迎されたので安堵した。

 一緒に食事を作ったりクッキーを焼いたり。ミカエラは手際良く作っていく。かなり慣れているようで、ユリアナもずっと母たちと作っていた為、邪魔することなく戦力として働けることにミカエラに驚かれた。

 子どもたちは可愛く、珍しい水色の髪に触れたがるのを望まれるままに触らせたり、一緒に遊んだりと久しぶりに目一杯体を動かし、程良い疲労感を感じながら公務を終えることができた。

 そして三カ所周り終え王宮に戻ると、ミカエラに晩餐に誘われた。

「フレデリクは今夜も遅いと連絡が来てるわ。こっちで一緒に食事をしましょう」

「ではお言葉に甘えて」

 ユリアナは今日一日で少し親しくなれたと感じて誘いに応じた。

「さあさあ、行きましょう。晩餐の時間までまだあるからお茶でも飲みましょう」

 そう言って談話室に連れて行かれるとマレーナが先に座っていた。

「お帰りなさい。お母様お義姉様」

 マレーナは会ったその日からユリアナをお義姉様と呼ぶ。血の繋がった妹たちさえ呼ばなかったので、慣れない呼び名にどぎまぎして落ち着かない。

「お義姉様どうかした?」

「いえ、そんな風に実の妹にも呼ばれたことがなかったのでどう反応したら良いのかと」

「お義姉様。私は義妹よ。敬語なんて要らないわ。普通に話してね。

 それにこんなに素敵なお義姉様ができたなんて私はとっても嬉しいの。お義姉様」

 そう言ってマレーナは腕に抱きついてきた。フレデリクに似た銀の髪に紫の瞳。顔立ちはミカエラに似て優しげな美少女のマレーナにお義姉様と呼ばれて嬉しくないわけがない。

 そんなマレーナが可愛く思えてユリアナは優しく頭を撫でた。

「ありがとう。マレーナ様。私もこんなに可愛らしい義妹ができて嬉しいです」

「お義姉様。言葉使いが中途半端よ。それに私のことはマレーナでいいの」

「ふふ。そうね。気をつけるわ。マレーナが義妹で私も嬉しい」

 ユリアナがそう言うとマレーナがよりぎゅっと腕に抱きついてきた。

「ほーんと、あのお兄様がこんな素敵な人を見つけてきて掴まえるだなんて褒めてあげないと。

 お義姉様。お兄様ってね、堅物で真面目が服を着ているような人間だから、つまらないと思うかもしれないけど、妹にもお母様にも優しいのだけが取り柄なの。

 だからきっとお義姉様にはもっと優しいと思うから我慢してね」

「そんな我慢なんて。私のことも大切にしていただいてますから大丈夫よ。それにちゃんとお話もしてくれて、約束も守ってくれているし、お願いも聞いてくれるの」

「こんな素敵な妻を蔑ろにする夫だったら、私が制裁してやるところね」

 そう言ってマレーナはふふふと笑った。

 陛下も忙しく結局晩餐は三人ですることになった。

「これから男性陣が忙しい時は三人で食べましょう」

「お母様、いい案ね!お義姉様も良い?」

「ええ、もちろん。私も楽しくて嬉しいです」

「じゃあ決まりね」

 晩餐の間中、ユリアナはマレーナからの質問責めにあった。ガーナット王国とはどんなところか、から始まり、フレデリクとの出会った時の話まで。

 聞かれるままに答えていたら気付いたらデザートになっていた。いつの間に食べたのかと疑問に思う程自然に話しながら食事ができて、楽しい時間を過ごすことができた。

 談話室で少しお話しましょうというミカエラの言葉に頷き、ユリアナは王宮の談話室に戻った。

「ねえ、お義姉様。明後日観劇に行きましょう。実はチケットはもう準備してあるの。推理物よ」

 ユリアナは誘われて驚いた。妹たちはマレーナから観劇のチケットをもらっていたが自分には声がかからないと実は心配していたが、まさか一緒にと誘ってもらえるとは。

「ええ是非!フレデリク様に許可をもらっておくわ」

「大丈夫!私がさっき遣いをやって知らせておいたから。楽しみだわ」

「マレーナばっかりずるいわ。どうしてお母様も入れてくれないの?」

「二枚しかチケットが取れなかったの。だからお母様は別の方法でお義姉様と交流してね」

「まあ!ウソっぽい!初めから二人で行くつもりだったでしょ?」

「娘のことを疑うなんて。酷いお母様ね」

 そう言うマレーナは酷いと言いながら笑っている。いつもこんな風に話しているのかもしれない。

「良いわ!じゃあ、来週宝石商を呼ぶからユリアナに似合うものを選んで贈るわ。だから王宮に来て一緒に選びましょう」

「そんな、宝石商だなんて。フレデリク様にもたくさんいただいていて」

「どうせあの子の選ぶものなんて、アメジストが付いているものばかりでしょ?わかるわよ。あの人の息子だもの」

 ユリアナは何故わかったのかと驚いた。

「私も結婚当初はアメジストのものばかりで溢れて困り果てた覚えがあるの。他も欲しい!って言った方が良いわよ。私は言ったもの。

 他は似合わない女なのか?って。ダイヤやサファイアは似合わないのか?とか。そうしたら他も似合うよって買ってくれるようになったの。

 だから早いうちに言ったほうが良いわよ。ということで、私がユリアナに似合うものを選ぶから一緒に見ましょうね」

 陛下もそうだったのかと思うと面白くなってユリアナは笑った。

「はい。お義母様のおっしゃる通りアメジストのものばかりです。いずれ言いますね。今はフレデリク様のお気持ちに添いたいので」

「なんて優しい!お兄様には勿体ないわ!でもお兄様の婚約者じゃないと私のお義姉様にならないから複雑だわ!」

 マレーナが悔しそうにしているのをユリアナは微笑ましく思いマレーナの名を呼んだ。

「フレデリク様こそ私には勿体ないくらいの方だわ。私を選んでくれてとても感謝しているの。母とあの国を出られたのもフレデリク様のおかげだし、お義母様やマレーナとこうしていられるのもフレデリク様のおかげだもの。今、とても楽しいの」

「可愛い!お義姉様!」

 今度は腕ではなく腰にマレーナが抱きついてきた。

「私なんて。可愛いのはマレーナだわ」

 そう言ってユリアナはマレーナの頭を撫で、その美しい髪に沿うように背中まで撫でた。マレーナが気持ち良さそうにしている。

「マレーナばっかりズルいわ!お母様もユリアナに撫でられたい!」

「お母様はダメよ。義妹の私の特権だもの。ねー、お義姉様」

「そうですね。私もさすがにお義母様を撫でるだなんて恐れ多いです」

 そう言って笑った。

「もう!しょうがないわ。そうだ!今度仕立て屋を呼ぶから、普段着用のドレスを買いましょう。もちろん私からの贈り物よ。ユリアナの予定を確認しないと」 

 ユリアナはふと思った。何故こんなに二人は良くしてくれるのか?可愛がってくれるのか?

 それが顔に出ていたのかミカエラが話始めた。

「フレデリクはね、子供の頃から本当に真面目で、王太子として、いずれ国王となる身として、国民の為にとそればかり考えている子だったの。

 勉強と鍛錬ばかりしていて、親しい友人も少なく、浮いた噂もなくてね。たくさんのお嬢さんからの熱い視線も完全無視。

 このままじゃ面白みのない国王になっちゃうわって、心配してたの。

 ユリアナとの婚約も、政略結婚の相手として選んで、ガーナット王国まで名代として会いに行って最終決断をするつもりだったみたいなの。

 そんな子が、帰ってきたら少しでも早く結婚式をって言い出して、贈り物を自分で選んで、あれこれとし始めて、時々顔がねえ、にやけちゃって。

 どうしたのかしら?って思ったのよ。それで聞いたのよ。そうしたら、あの子ってば、堂々と、愛する女性に出会った。彼女しかいらないって。それで私に妻が夫に言われて嬉しい言葉は何か?とか聞いてきて、本当に驚いたわ。

 でもユリアナに会って、こんなに綺麗で可愛くて、優しい心の女性に出会ったら、あの子が側にいたいって思って当然だわって思ったのよ。

 だからよろしくね。あの子のこと。私の手からもう離れたわ。あとはユリアナに任せるから」

 ユリアナは途中から真っ赤になりながら聞いていた。

「私の方こそ、私を大切にしてくださっているのがとてもわかって、感謝しているんです。

 優しく包み込むような方で、私の意見も聞いてくださるし、フレデリク様の横に立って恥ずかしくないようになりたいです」

「ありがとう。でももうユリアナは充分横に立ってもいい存在よ。自信を持って」

「はい!」

 ユリアナはフレデリクに会いたくて会いたくて堪らなくなった。時計を見てもそろそろ帰った方が良い時間だ。ユリアナは暇を告げると二人に見送られ王太子宮へと戻った。幸いフレデリクはまだ戻っておらず、ユリアナは湯浴みをして談話室でその帰りを待った。

 

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