勇者一行、衛兵に捕まる。
やっと学校パートが書けた……。
「ふーん、今日はシャーロットさんが朝食作ってくれたんだ。」
「ああ、美味しかったよ。旅で慣れたって言ってたけど、それにしたってかなりの腕前だったな。」
「……私も料理の勉強しようかな。」
「何か言った?」
「何でもありませーん。」
ツトムたちが通う高校の屋上にて。ツトムと杏は、休み時間にアレックスたちのことを話していた。
「アレックスたちを転移させた魔法使いって、この世界の人なのかな?」
「……その可能性は、無くはないな。」
杏の素朴な疑問にツトムは答えた。この世界において魔法は空想のものとされているが、存在はしている。
現にこちらの世界でも創作扱いされてはいるが魔法使い、若しくは魔術師と呼ばれる歴史上の人物が存在する。そして、ツトムのようにあちら側の世界からやってきた人間の子孫であれば、魔法を使える可能性が高い。
「もしこっち側の魔法使いだったら厄介だろうな。」
「……どういう事?」
「魔法が空想とされるこの世界であれ程の魔法を使える奴が、母さんに気づかれる事なくこの街の中に溶け込んでるんだ。俺たちの事も気付いているだろうな。もしかしたら、俺たちのすぐ近くに居るかもしれない。」
「!」
魔法使いである事を悟らせずに一般人に紛れ込んでいるという事実に、杏はゾッとした。思わず腕を押さえると、ツトムがそっと杏の肩に手を乗せて向き合う。
「大丈夫だよ、杏。」
「ツトム……。」
「俺が居るから。だから杏はあ」
「おーい山田ァ!5限の数学の宿題写させ……あ。」
バァンという扉を開ける音と共に現れたのは、ツトムたちの友人の田中勇だった。明らかに良い雰囲気だったツトムたちの水を差したことに気付いた彼は、顔を青くする。
「俺、今めちゃくちゃタイミング悪かった?」
「ほんっと空気読めないよねー、田中。だからやめとけって言ったのに。」
慌てる田中の後ろから現れたのは、同じくツトムたちの友人である鈴木莉花だ。丁寧に巻かれた栗色のサイドテールを揺らしながら、莉花はツトムたちをニヤニヤと見つめて言い放った。
「田中がメガネ先生に怒られるのは自業自得ってことで!という訳で、邪魔者はここで退散するね〜!」
パタン、と扉が静かに閉まる。
「「……。」」
暫しの沈黙。そして、予鈴が鳴った。
「とりあえず、放課後アレックスたちの所に行くか。」
「……そうだね。」
ツトムたちは何とも言えない表情で教室に戻ることにした。
当然だが、田中は宿題を写させてもらえなかったので廊下に立たされた。
放課後、ツトムたちが校門へ向かうと何やら人だかりができていた。
「何だろ?」
「行ってみるか?」
人混みを掻き分けて前の方に出ると、そこに居たのはアレックスたち勇者一行であった。
「お、ツトム。杏!助けてくれ!このおっさんたち全然話聞いてくれねぇんだけど!?」
「ちょっとぉ!この街の衛兵さん頭固すぎない!?」
焦った顔でアレックスとイザベラはツトムたちに助けを求める。しかし、ツトムたちは思わず固まってしまった。
「はーい、君無視しなーい。もう一度聞くよ?何で街中で真剣を持ち歩いてるのかな?」
「魔王がいつ襲ってくるか分からねえのに丸腰で歩ける訳ねぇだろ!?」
「君もそんなはしたない格好で歩かないの!悪い大人は沢山いるんだぞ。もっと自分を大事にしなさい。」
「いやこれ魔女の正装なんだけどぉ……。」
アレックスとイザベラは衛兵から職務質問を受けていた。
あの2人がツトムたちの名前を呼ぶものだから、視線が一斉にこちらを向く。
「「(こっち見ないで……)」」
ツトムと杏は自分たちは無関係だと主張しようとしたが……
「丁度良い所に来てくれた!ツトム、杏!エリザベス様にそろそろ学校が終わるタイミングだと聞いてな。2人に聞きたいことがあって来たんだが、見ての通り頭の固い衛兵に捕まって校内に入れなかったんだ。」
「どうにかあの人たち宥めてくれませんか?」
お巡りさんには捕まらなかった(というより他2人がヤバすぎて後回しにされた)シャーロットとノアに話しかけられてしまった為、ツトムたちはもう言い逃れはできなかった。
「お前らマジで帰れェェ!」
その日、学校中にツトムの叫びが響き渡ったのは言うまでもない。
現代日本側のキャラクターは、基本よくある名字+カタカナ表記でも違和感のない名前にするようにしています。