表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】異世界生活は難しい。〜勇者一行、現代日本に転移する〜  作者: 松竹紅葉
第1章 勇者一行、召喚される?
17/86

勇者一行、魔核竜を討伐する。(5)

アレックス頑張ってます。

「プハッ!ハァハァ……有難うございます。」

「ノアも無事で良かった。」


 ツトムから回復薬(ポーション)を貰って回復したノアは、ゆっくりと身体を起こした。ノアの周囲には、彼のことを労るように幾つもの光が飛び回っている。


「君たちにも心配をかけてしまいました。咄嗟に加護を与えてくれて有難うございます。」


 ノアが言葉を掛けると、色とりどりの光は飛び跳ねるようにクルクルと回った。


 精霊使いになるには、様々な系統魔法の適性と精霊に愛される才能が必要とされている。精霊を気遣う姿から、ツトムはノアが精霊に愛される理由が分かった気がした。


「今アレックスがあの炎のドラゴンと戦ってる。合流してやってくれ。俺はその間にシャーロットたちにも回復薬(ポーション)渡してくる。」

「えっ!?いやいやツトム!君は今すぐにでも逃げ……」

「アレックスに頼まれたんだ。」

「!」

「だから行くよ。」


 ツトムのその眼は、真っ直ぐにノアを見つめている。その真剣な眼差しに、ノアは見覚えがあった。


「……分かりました。少し待っていてください。」


 ノアはすぐ近くを漂う赤い光に話しかけ、詠唱を始める。するとツトムの身体が一瞬熱くなり、温かな光で包まれた。


「火の加護です。気休めでしょうが。」

「ありがとう、じゃあ行ってくる!」


 駆け出したツトムの背を見送った後、ノアはすぐさまアレックスの元へ向かう。アレックスに与えた加護がそろそろ切れる。幾ら勇者と言えども、強化魔法(バフ)無しに戦うのは厳しいだろう。


 ましてや、あの炎龍ともなれば。


「全く、1人で戦おうなんて烏滸がましいにも程がある!」


 昔からそうだった。魔力探知は下手くそだし、料理をさせれば辺りは更地と化し、普通だと馬鹿にされれば子供のように怒り出す。その癖、誰かの為に戦う時は誰よりも真剣で頼もしい。そんな姿に周りの人間は心を動かされ、勇気を与えられてきた。


 きっと、自分に回復薬(ポーション)を飲ませてくれた彼も。


「弟ばかりに無理をさせる訳にはいきません。君たちも協力してください!」


 周囲を飛び交う精霊たちは、ノアの言葉に反応する。言葉は話せずとも心は通ずるのだ。


「全力でいきます!此処で食い止めますよ!」






「……ベラ、イザベラ!」

「シャーロット!」

「ツトムか!?」

 

 シャーロットの声がする方へツトムが向かうと、彼女は黒い何かを抱えていた。シャーロットも怪我は負っていたものの、自分で歩ける程度には傷が浅かったようだ。


 シャーロットはツトムが現れたことに驚いたが、手に持っていた回復薬(ポーション)を見て、すぐさま状況を把握したらしい。

 

「ツトム、頼む早く回復薬(ポーション)を!イザベラが!」

「え、イザベラ?……まさか」


 ツトムはそこで漸くシャーロットが抱えていた()()()()がイザベラであることに気が付いた。


 美しい金髪は見る影もなく、皮膚は完全に炭と化していた。微かに聞こえる呼吸音で辛うじて生きていることが分かる。だが、その命の炎は今この瞬間にも消えようとしていた。


「イザベラ!回復薬(ポーション)だ!早く飲め!」


 シャーロットはツトムから回復薬(ポーション)を受け取ると、イザベラの口に流し込む。しかしイザベラの意識は既になく、口から液が溢れるだけだった。


「何でイザベラだけ……」

「あの熱波が来る直前、イザベラが咄嗟に防御魔法を放ったんだ。自分の身を顧みずに。……馬鹿だよ、本当に。」


 そう呟くシャーロットは目に涙を溜めていた。


 確かに不思議だった。結界石で身を守っていたツトムは兎も角、アレックスたちはあの炎龍の間近に居たのだ。全員がイザベラのようになってもおかしくはなかった。


「頼む、飲んでくれ!このまま死ぬ気か!目を覚ませ、イザベラ!お願いだから飲んで……ッ!」


 普段の誇り高い姿とは打って変わって、今ツトムの目の前に居るのは仲間を失う恐怖に怯える少女だった。




 ……アレックスに託されたのに。

 

ツトムは己の無力さを痛感していた。

 

彼等が命を賭して戦っている中、ただ何もせずに居た自分が許せなかった。


目の前で潰えそうな命を前に、何も出来ない自分が許せなかった。


……結局、()()()と何も変わらない。自分は無力な子供のままなのか。


「俺は、結局何もできなかったのか……」


 ツトムは拳を強く握りしめた。


 あの日、助けを求める杏の姿が脳裏を過ぎる。何も出来なかった自分が情けなくて、悔しくて。だから母親から魔法を教わったのだ。


……大切な人を守れるように。


 しかし回復薬(ポーション)が使えぬ今、ツトムたちにできることはなかった。その間にもイザベラの呼吸音は更に小さくなっていく。


ツトムたちが絶望に打ちひしがれていた時だった。




「諦めちゃダメだよ!」

「でも俺たちじゃもうどうしようも……って、え?」

 



後方で響いた、この場に不釣り合いな明るい声。


鈴を鳴らしたような可愛らしいその声を、ツトムはよく知っている。振り返ると、ツトムたちが想像した通りの少女がそこに居た。




「「杏!?」」




佐藤杏、15歳。突如覚醒した女子高校生。

目の前に現れた救世主は満面の笑みでこう言った。




「助けに来たよ!」

久々に杏が登場です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ