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神様にお願い  作者: りりね
4/26

お迎えに参りました

私とつむぎが周囲の人間から身を隠すようになってやっと4日が経った。

今日は8月14日、現在の時刻は9時19分。

あと2時間半も経てば迎えが来るはず...

この4日間、本当に苦しかった。

つむぎがいないと何回心が折れてたのか分からないほどに辛かった。

私が見つからないことに苛立った人達が家を燃やした。

私の友達だった人達は学校で酷い目にあっている。

逃亡中の私を見たと嘘の情報を流した中年の人は手足の骨を折られ、車椅子生活を余儀なくされたらしい。

1番心にきたのは数回会話しただけのクラスメイトが鬱憤晴らしの標的にされ、辛さのあまり自殺未遂をして今も寝たきりになっていると聞かされた時だ。

つむぎは「私に責任は無い」って言ってくれたけど、そう簡単に割り切れない。

でも...どこか"自業自得だよね"と思える冷たい自分がいる。

「ねぇ」

「えっ!?」

びっくりした、急に話しかけられるのは未だに慣れない...

「お腹空かない?」

「へ、平気だよ!」

嘘、本当はペコペコだ。

でもあと少しのところで食欲に負けるのは嫌だ。

下手に動いたりしたらそれこそ命取り...

みんな今までより必死になって私を探しているんだから。

ぐぅ〜

「嘘ついたね」

「うぅ、ごめん...」

こんな切羽詰まった状態なのにお腹はすくんだもんね..

「仕方な...伏せて!」

つむぎが私の頭を地面に押さえつけた。

『ごめん、我慢して』

遠くで怒鳴り声が聞こえる。

こわい...みつかりたくない...

少し経つと怒鳴り声は遠くなっていった。

「もう大丈夫、痛かった?」

「えほっ、だ、大丈夫...ありがと...」

苦しかった、でも見つかるよりは絶対マシ。

「じゃあ私たべもの盗ってくるね」

「えっ!わ、わたしもい」

「ダメ、大人しくしてて」

「でも...」

「葵震えてる、それと食べて元気付けないと」

言われて始めて気がついた。

立とうとしても立てないくらい足が震えてる。

「でも、つむぎが危ないよ!

今のあの人たちは怪しい動きしてたら何してくるかわかんないよ!」

あの狂った人達の前につむぎを晒せない。

空腹なんて我慢するから一緒にいて欲しい...

迎えが来たらきっとみんな元に戻れるはずだから!

それまで耐えれば全て元通りだから!

「ううん、いく

友達なら友達の役に立ちたいから」

なんで分かってくれないの...

私なんか友達の資格ないよ。

友達を巻き込んだだけじゃない...

今更に危険な事をさせようとしてる...

「でも...ふが!?」

つむぎに口を塞がれた。

「でもは野暮だよ、すぐ戻ってくるし」

そう言ってつむぎは私を置いて出ていってしまった。


それから1時間ほど経ってつむぎは戻ってきた。

戻ってきたつむぎは額から血を流していた。

額だけじゃない、ところどころ切り傷や擦り傷まみれだ。

「あぁ、ああああ!!!」

「しー、静かに」

「でも...でも!」

「見つかるよ?早く食べて」

つむぎは無理やり私の口にサンドイッチをねじ込んできた。

「〜〜〜〜〜!!!!」

「ふふ、ぶさいくだね」

「うぅ、ううう...」

涙で顔がグチャグチャだ。


つむぎとご飯を食べてから少し経った。

「落ち着いた?」

「うん」

助けて貰ってばっかりで情けないな...

「あ、あの」

「うん?」

「つむぎはなんで私を助けてくれるの?」

「えっ?」

「だって、今の私ってただのお荷物だし...

それに匿ってるのバレたら...」

「そうだね〜」

メリットなんてひとつも無いのに助けてくれる。

理由が知りたい...

「それは...もがっ!?」

突然、太い2つの手がつむぎの口を塞いで力強く首を絞めあげた。

「てめぇクソガキ!指名者様を独り占めか?おい!」

「ひぃっ!?」

気がつくと周りには10人ほどの人が立っていた。

どの人もまともな目をしていない。

どう考えても終わりだ...

「なぁ?お前如月葵だよなぁ?なぁ?そうだろぉ!?」

「あ....あぁ....」

「こたえろよォ!!!!!」

「は、はい...」

もう何も考えられない...

怖い怖い怖い...

「なぁお嬢ちゃん、俺を選んでくれるよな?」

急につむぎを締め上げている男がにっこりと笑いながら語りかけてきた。

顔は笑っているが目の奥が笑ってない。

不気味すぎる。

「えっ」

「なぁ?分かるよな?指名してくれるよな?」

「おい金さん!抜けがけか!?」

周りを囲んでいた男の1人が怒鳴りはじめた。

このまま揉めてくれればまだ逃げら

ゴンッ

"金さん"と呼ばれた男は何の躊躇いもなくシャベルで怒鳴る男の頭を殴った。

人の頭からしてはいけない音が聞こえた。

「ひぃっ...」

いつも物静かで冷静だったつむぎも目の前の出来事に顔がひきつっている。

「文句あるやついるか?」

周りを囲んでいた人たちまで凍ったように動かなくなった。

今、この場の支配者はこの男だということは誰が見ても明白だった。

「ごめんね、お嬢ちゃん?痛い思いはしたくないよな?」

またこの笑顔だ。

「は、はい...」

「じゃあ誰を選ぶか分かるよな?」

「は、はい...」

「聞いたろ?お前らは散れ、いますぐに」

男の冷たい声を聞いた周りの人達は一目散に逃げ出していった。

そして、葵、つむぎ、男の3人が場に残った。

首を絞めるまではいかないが強めに掴まれているつむぎ。

首を掴みながらイライラした様子の男。

それを見て震えながら涙を流している葵。


この光景がしばらく続いて少し経った頃、男のスマホが鳴った。

どうやら正午にアラームをセットしていたようだ。

「お迎えに参りました」

えっ!?誰!?

男が急に現れた。

ボロボロの葵たちとは対照的に綺麗なスーツを着ている。

「如月葵様、お迎えに参」

「おい!俺も連れていけ!指名されてんだよ!」

スーツの人の言葉を遮るように男が叫んだ。

「指名された?如月様からはまだなにも聞いておりませんが」

「あ?善良な国民様が言ってることを信じらんねぇのか?

これだから公務員様はよぉ!」

公務員と呼ばれた男の眉がピクっとなった。

「まあ、指名が本当でもまずは如月さ」

「あ?じゃあお前!」

「えっ」

私!?

「公務員様を説得しろ!じゃないとこいつの首を折る

ダチなんだろ?」

男はつむぎの首を絞めはじめた。

「ごぶっ!おぇ....!」

つむぎの顔が歪む。

「あぁ...!つむぎ!ねぇ!お願い!あの人も連れてって!指名!指名するから!はやく!死んじゃう!!」

「ふむ...」

「なにしてるんですか!お願いします!お願いします!」

「本当にアレを選んでしまってよろしいのですか?」

「えっ?」

「あまり口出しするのは好きでは無いのですが、"アレ"を選ぶのはあまりに愚かです」

それってどういうこと...?

「ああ!?なにごちゃごちゃ言ってんだよ!はやく連れてけよ!死ぬぞこいつ!」

あ!そういうこと!?

なるほど!

「すみません!指名します!つむぎです!つむぎを指名します!お願いします!つむぎも一緒に連れていってください!」

「かしこまりました」

一瞬の出来事だった。

公務員はニヤリと笑った途端、手刀で男の首を飛ばした。

「はぁ?」

「ゲホッ!ゲホッ!」

開放されたつむぎは吐いていた。

「だ、大丈夫!?ごめん、私何も出来なくて...」

「ううん、ありがとう

本当に...」

つかの間の休息、とはいかないようだ。

「そろそろ時間ですね

如月様、手紙をおかりしてもよろしいでしょうか?」

「は、はい

どうぞ」

「ありがとうございます」

公務員さんが私の渡した手紙を掲げると急に目の前に扉が現れた。

「えっ!?」

「なにこれ...」

「神様のお力です

ではいきましょうか」


私たちは得体の知れないドアに吸い込まれるようにはいっていった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] デスゲーム始まる前段階の時点で中々のエグさで本番はどれだけえげつない事になるのか期待が高まりますねぇ あと恐怖でおしっこ漏らしてそうな葵ちゃん可愛い
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