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昼下がり  作者: 磯目かずま
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マイナス思考矯正ギプス

 わたしは自分を卑下するのが日課になっているので、なんて自分はダメな人間なんだという趣旨の内容を脳内でリフレインしているのだが、それをときおり妻に話してしまう。自分ではときおり話しているつもりだが、実のところ二日に一回とかの頻度で話していることも多く、さらには刺激となるような展示を見に行ったり、書籍を読んだり、イベントに出たりすると必ずといっていいほど悔しさを丸出しにして情けない恨み節を吐いてしまうのである。


 そのため、そんなことをいつも聞かされる身になってみろ!ということでしばしばけんかになる。わたしは、自分の落ち度しかないわけであるから謝るのであるが、謝ることが一種の攻撃性を帯びてきてしまう傾向にあるため、謝り続けて逆に事態を悪化させてしまう。


 最終的には落ち着いてきて場が収まるのだが、その後も発作のようにマイナス思考になり無気力に椅子に座って時間ばかり過ぎてしまうことが多い。これを解消するようなアイテムがあればいいのに、ということから考案されたのが「マイナス思考矯正ギプス」である。これは、装着した者の脳波を測定し、マイナス思考なことを考えたら電流が流れるという代物である。「あ~あ、なんて自分はダメなん…ビビビビ!!ぐわーっ」という感じで電流が流れ、いずれ脳内は条件付けによってプラス思考で埋め尽くされるという算段だ。


 こんなアイテムは実際に作ったらまずいので生まれようもないだろうが、簡単にこれを実行することもできる。すなわちマイナス思考になっているときに妻に隣にいてもらい、「あ、こいつマイナス思考に陥ってるな」と判定次第わたしにビンタしてもらうのである。これにはいくつかの利点がある。まず、元手がかからない。変な機械を購入する必要がなく経済的である(妻への報酬は別途必要かもしれない)。次に、けんかをした後に行うと、妻のストレス解消にもなるし、くだらないことをしていることでなんかどうでもよくなってきて笑顔になる。あとは、顔のマッサージになるといったところだろうか。ここで大事なのは必要以上に強力なビンタをしないことである。あくまでも猫パンチみたいなものにしておくべきである。


 これを実行して妻に容赦なく連続ビンタを浴び、なんか楽しくなってきた後に風呂にでも入ってくれば、たいていのマイナス思考はどっかにいかせることができる。いまどきは大みそかにビンタをするような番組もコンプライアンスで難しいのかもしれないが、元気があれば何でもできる!といってバチボコにビンタされるのには何かしらの効能があるからそれが存在しているのだ。これはきっと、座禅でわざわざ肩をたたかれるときに感じるある種の快感のようなものなのだろう。

 

 そんなこんなでわたしは、ざわつく気持ちによって近づいてくる大みそかを感じながら、ちょっと肌寒いオフィスで貧乏ゆすりをしているのであった。


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