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昼下がり  作者: 磯目かずま
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応募書類

 わたしは採用の担当もしているので、書類選考用の提出書類の管理もしている。

 提出してきた書類をスキャンして審査の共有ドライブにあげる。書類が出そろったらエクセルのリストを作ってそこに点数を付けられるようにしておいて、上位者を面接に呼べるように手配する。

 まあ、自分の仕事というのはそういうスケジュール管理や事務作業なので、決定権はないから気楽なもんだ。


 採用といってもうちでは新卒もあれば中途採用もたくさんあるのでいろんな人が応募してくる。

 しかも、なんだかクリエイティブな感じの人を募集するような場合だと変な人も応募してきて、部署内でこんなやつ応募してきましたよ~といって爆笑して癒しの時間を得たりしている。


 例えば経歴欄に「縁起物販売」とかいうのがある人がいて、研究テーマは「陰陽道とパワースポットについて」とかだったから、こいつ絶対詐欺師ですよ!とか言ってげらげら笑ったものだ。

 ちょっと前には、応募締め切り日の夕方に、郵送で送れと要項に書いてあるのに手持ちで45ℓのゴミ袋くらいの真っピンクの手さげバッグに業績書類をパンパンに詰めて持ってきたおばさんがいた。

 守衛で止めてもらっていたのだが、面白そうなので本人に会わないようにちょっと見に行って守衛の方に話を聞くと、「郵送のみと明記してなかった(そうとも読めるといえば読める)から持ってきた。また、荷物は返送希望らしい」とのことであった。なるほど要項を読めばそう読めなくもないが、よく考えたらそんなことはなかったので、その場でお引き取りいただいた。バッグがチャックで開けられるタイプのやつだったのでちらっと中を見たら、ファイルがぎちぎちに詰まっていて、ようそんなに業績かき集めて持ってこようと思ったなと逆に感心したが結局あきれた。

 あとは、郵送で必着に間に合わなかったから手持ちでもってきて「あ、このレターパック使わなかったからよかったら使ってください!」といって渡してくるおっさんがいたり、応募書類が入った封筒が何かの懸賞ハガキのメソッドでも参考にしたのかという感じでデコられていたり、証明写真がプリクラだったり、最終学歴が「温泉博士(全然非公認のよくわからないやつ)」とかだったり、履歴書の年月欄の記載が19XX年とかになっていて、「世界は核に包まれた~って北斗の拳かよ」とか言って爆笑したりした。


 まあ、そんな人たちは面白いだけで書類で落ちるからたいして害もないし、笑い話になるだけである。

 困るのは、インチキをしたりいちゃもんを付けてくる手合いである。

 経歴詐称をしたり、詐称というのではなくてもちょっと何かのプロジェクトに関わっただけであたかもメインで仕事してましたみたいなほらを吹く人もいる。そんな人はうさんくさいから結局面接で落とされるものだが、中にはうまいこと切り抜けて入社してしまう人が出てくる。

 そういう人はたいてい必要とされていたポストで全然仕事できないし、全部外注して自分のコネとか仲間内の太客に金を落とそうとするし、予算をうまいことだまして取ってきて私物をさんざん購入したり、挙句の果てにはそれで規定違反をして謹慎とかさせられたのに逆に裁判を起こして事を大きくしてかき回してきたりする。

 そんな人がいると、現場は締め付けが大きくなるし人事も面倒なことが増える。やりたい放題やって金ふんだくってとんずらするような人をそもそも入社させてしまったのが問題なんだが。

 あとは、普通に面接とかで落としたのに、理由を聞いてくるような手合いも面倒だ。そういうのにはお答えできませんで通しておけばいいのだが、しつこく食い下がってきたり、転職情報サイトとかでうちの悪口を書き込んだりしてくるようなのもいるからこれも困る。

 あるとき、どう考えてもこいつこの前うちに来た人だなとわかる人が書き込んでいるのを見かけた。その文章はうちの悪口やよくない点を3000字くらいで延々と語るもので、ところどころ涙や笑いを誘う非常に読ませる名文であった。これが高評価と多大ないいねを獲得してしまったがゆえに、うちの会社を「○○ 評判」というサジェストで検索するとそれが最初に出てくるほどである。これはまあ部署内での笑い話だが。


 わたしは審査が終わった後に、合格者には採用通知を、落ちた人には「お祈りメール(または書面)」を送る担当でもある。

 わたし自身は適当に就活していたらあっさり入社できてしまったのでお祈りメールは5通ほどしかもらっていないが、世の中にはこれを何十何百ともらっている人もいると聞く。

 そのうちの一通にわたしも日々貢献している。これを受け取ったときの何ともいえない気持ちを想像するといたたまれないが、そんなことは気にすることでもないな、という気持ちであえてそっけない文面にしている。

 そして、送付されてきた応募書類を片っ端からシュレッダーにかける。うちの部署のシュレッダーはちょっと元気がないので、一気に突っ込むとエラーになって詰まって面倒なので二人分くらいづつ入れるのがベストである。

 一生懸命書いた手書きの書類が紙くずになるのを見るたびに、早くデータで書類提出できるようになんないかなあとしみじみと思う。そもそも来た書類をスキャンしてデータにしているんだからそうしてくれたらわたしの仕事も減って嬉しいのだが。


 そうして今日も紙くずになった応募書類を燃えるゴミに出しに行って、ついでに今日は自販機でサイダーでも買って休憩スペースで飲もう、そう思ってわたしは一仕事終えた気分でオフィスを出ていくのであった。


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