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武器購入

 俺はミッションカードに書いてある項目をクリアしていくことにした。

 このミッションカードをクリア出来なければ実況者の資格無しでクビになっても文句は言えない。


 ・宿屋を取ろう ←完了

 ・武器を買おう ←未

 ・冒険者ギルドで冒険者登録をする。 ←未

 ・ダンジョンでモンスターを一匹倒す。 ←未

 ・パーティーに入る。 ←未

 ・レベルを5に上げる。 ←未

 ・Fランクの依頼を達成する。 ←未


 ナビちゃんによると、このミッションカードのそれぞれの項目の事をクエストというそうだ。

 まずは一番簡単そうな『武器を買おう』のクエストをすることにした。

 軍資金の10万ゴルダ、正確に言うと宿代を払った残りの97000ゴルダがあるのでお買い物をするだけで済む一番簡単なミッションだ。

 ソシャゲのチュートリアルミッションまんまだな。


 *


 ナビちゃんの案内で個人経営らしいこじんまりとした武器屋へ入ると店主らしき親父が声を掛けてきた。

 ちなみに頭は武器屋の親父らしく男性ホルモン出まくりでつるピカだ。


「へい、いらっしゃい! 初めての武器を買いに来たのか?」

「そうなんですけど、俺が武器を買うのが初めてとよくわかりましたね」

「店に来た客の顔位覚えておかないと、この商売は出来ねーからな」


 なんというプロ意識。

 俺は感動しまくったんだが……。


 ――『スキルでトドロキさんの事を見てるんですよ』

 ――「なんだと? そんなことが出来るのか?」

 ――『他人のステータスを覗き見出来る『鑑定』というスキルが有って、それを使えばトドロキさんが武器を持っているかどうかどころか、スキルを見て武器を扱ったことがあるかどうか迄が一目瞭然なんです』

 ――「なんだよ、感心して損したぜ」


 ナビちゃんにネタバレをされたのを知らない店主は自信満々に武器を進めてくる。

 

「男なら破壊力! ハンマーか大剣だ! どちらも破壊力抜群の男のロマン武器だぜ!」


 勧められるままにハンマーか大剣を買おうかと思ったら店主は真顔になって俺を止める。


「と言いたいところだがな、死にたくなけりゃハンマーと大剣だけは止めとけ」


 破壊力抜群なのにダメなのか?


「あれは初心者向きの武器じゃない。重いから初心者じゃ碌に振り回せないし、振り回しが遅くなって敵に当てることさえ出来ねぇ。おまけに防御が隙だらけだ。モンスターのカモになりたくなけりゃ止めておけ」


 なるほどな。

 武器の利点と欠点を説明してくれるのはわかりやすい。

 この店主はなかなか出来る奴みたいだ。


「じゃあ、おすすめはどんな武器なんだ?」

「定番の武器の中から選ぶなら、一番のお勧めは片手剣だ。軽くて扱いやすい上に盾も使えるから防御もバッチリだ」


 親父はカウンターに片手剣を並べると、さらに他のお勧めの武器も並べる。


「あとは短剣と槍だな。どっちも片手剣よりも軽いので初心者でも扱いやすい。当然攻撃も速いので手数も多くなるし盾も持てる」


 ほう、片手剣の上位互換な感じの武器なのか?

 それなら扱いやすい方がいいか。

 俺が短剣を手に取ろうとすると店主がまたまた止めた。


「短剣は片手剣よりも軽い分、ダメージが入りにくいので確実に弱点を狙う必要がある上級者向けの武器だ。力のない奴には片手剣よりもお勧めなんだが、片手剣を使える奴にはわざわざお勧めしないな」

「なるほど、槍はどうなんだ?」

「槍もいいぞ。リーチが長いので敵の攻撃の間合いの外から一方的に攻撃出来る」


 卑怯者の俺には向いてそうな武器だ。


「ただ、これも片手剣に比べると若干玄人向きの武器だな。敵の間合いの外から攻撃している分には強いんだが、一旦間合いの中迄踏み込まれると棒の先にしか刃の付いていない槍では攻撃力を失うし、盾を持てないので無防備になってしまう。まあ、その時は槍の持ち方を変えればいいんだが、とっさの武器の持ち替えなんて初心者には難しいだろうな」


 なるほど。

 この店主は最初から片手剣を勧めたかったんだが、あえて他の武器の悪いところも見せて納得して買って貰おうとしてたんだな。

 信頼できそうないい店主じゃないか。


「じゃあ、お勧めの片手剣と盾をくれ」

「まいど!」


 店主は鉄の片手剣と銅の盾を渡してきた。

 銅の片手剣の方が安いんだけど耐久性に劣るらしい。

 しかも素材的に弱いので曲がらないように剣身が太めになっていて重いそうだ。

 盾は銅板を木の盾に張り付けた銅の板金盾だ。

 木の盾並に軽いのに耐久力がずっと高く、初心者を卒業するまで問題なく使えるそうだ。


「防具はどうする? そんな装備で大丈夫か? そのぺらっぺらの服で敵に殴られたら痛いじゃ済まないぞ」


 面接からそのまま地下異世界にやって来たので今は背広しか着てない。

 大学時代に就活で散々お世話になった背広である。

 少しくたびれているが、これしか持っていない俺の唯一の戦闘服である。

 防御力どうのこうのよりも汚したくないので別の服が欲しい。

 俺はナビちゃんに防具を買っていいか聞いてみる。


 ――「防具を買っていいのかな?」

 ――『買った方がいいですが、ミッションの項目にはありませんので資金的に不安のある今はあえて買わなくてもいいと思います』

 ――「資金的に不安があると言っても所持金は10万近くも余ってることだし買ってもいいかな?」

 ――『軍資金の使い道はトドロキさんにお任せします』


 なら買わしてもらうかな?

 ナビちゃんの了解を取り付けたので、防具を買うことにした。

 まあ、信頼する親父のおすすめだからナビちゃんの了解が貰えなくても買う気満々だったけどな。


「一番いいのを頼む」

「じゃあ、これだな。鎖帷子だ。金属の板金鎧よりも防御力は落ちるが、軽くて動きやすい」


 鎖帷子は糸の代わりに鉄のリングを組み合わせた鎧というか服だ。

 普通の板金を使った鎧よりもずっと軽く、革の鎧と同じぐらいの重さらしい。

 それでいて防御力は革の鎧とは段違いなうえに板金鎧よりも通気性が良く、初心者におすすめの鎧だとのこと。


 ということで、鉄の片手剣、銅の盾、鉄の鎖帷子防具一式を購入する。

 おまけに鎖帷子の下に着るインナーをサービスしてもらった。

 全部で60000ゴルダの痛い出費だけど、ダンジョン実況者を始めるための初期投資みたいなものだ。

 残金は37000ゴルダに減ってかなり心もとないけど、宿屋十日分は残ってるからまあなんとかなるだろう。

 俺はミッションクリアの効果音を聞きながら満足しつつ武器屋を後にした。

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