ステータス
俺はナビちゃんに手に入れたスキルについて聞いてみた。
――「今、手に入れたスキルの『ステータス』ってなんだ?」
――『自分の状態を数値として見れるようになります。手を前に突き出して『ステータス』と言ってみてください』
WEBの異世界マンガで有名な定番のあれか。
いい歳したおっさん手前の男がするにはちょっと恥ずかしい仕草だけどあくまでもこれは仕事。
割り切って言われるようにしてみると、目の前の空間に俺の状態が数値として視覚化された。
すげーな、このセット。
まるでアニメやマンガの異世界物みたいじゃないか。
俺は視覚化されたステータスを見つめる。
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ステータス
――名前:トドロキ ユウスケ
――職業:無職
――LV:04
――HP:8/8
――MP:800/800
――攻撃:???(F)
――防御:???(F)
――魔力:???(F)
――知力:???(E)
――幸運:???(S)
スキル
『ステータス』 自分の状態を文字化数値化して確認出来る。
武器
ボールペン
防具
就活スーツ
所持金
97000ゴルダ
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――「なんか色々と数値が出てきたんだがどうなんだ? 数字の見えてない項目もあるけど、HPに比べてMPが凄く多いし、幸運に至ってはSだぞ。これはかなり強いんじゃ?」
――『そうですね……MPは確かに多いですね。駆け出しの初心者のMPとしてはかなり多い方です』
――「ほう」
――『MPだけならば、年に数名現れるトップクラス。初心者なのに中堅の魔法使いぐらいはありますね』
――「それは凄い。幸運はSなんだけどどうだ? もしかして英雄レベルか?」
――『幸運はですね……運気が上がるだけの役立たずのステータスでして……いろいろなスキルとの複合で初めて効果が発揮されるので冒険の序盤では殆ど意味が無いかと』
――「くーぅ! 期待させやがって……幸運は役立たずなのかよ」
――『で、でも、冒険者を続けて他のスキルやステータスが成長すればそれなりに効果が表れると思います』
それなりなのかよ。
幸運はハズレスキルだったみたい。
期待した分、目頭が潤んで今にも泣いてしまいそう。
それにしても職業が無職って。
俺の職業は実況者なんじゃないのか?
――『まだ、仮採用ですから……』
――「ぐはっ! 試用期間があるのを忘れてたぜ」
リアルの悲しい現実は置いておいて、ここは異世界って設定だろ?
ダンジョン探索ゲームなら戦士とか格闘家とかが普通じゃないの?
それなのに無職って、ないわな。
これじゃ『無能の無職がダンジョン攻略やってみた』とかのタイトルで動画をサイトにアップロードされてそう。
どうやら俺は会社には全く期待されていないお笑い枠のようだ。
だが、しかし!
お笑い枠なら、お笑い枠として生きる道がある!
やってやろうじゃないか!
プロゲーマーみたいな華麗な実況は出来ないけど、へっぽこながら必死にクリアする。
○ゐこの○野課長みたいな生き方だ。
それが俺の役割だ!
――「お笑い枠でもいい。絶対に人気の実況者になってやるぜ!」
――『その勢いです! 頑張って下さい』
――「ああ、頑張るよ」
やる気満々な俺はミッションカードを見てみる。
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・宿屋を取ろう。 ←完了
・武器を買おう。 ←未
・冒険者ギルドで冒険者登録をする。 ←未
・ダンジョンでモンスターを一匹倒す。 ←未
・パーティーに入る。 ←未
・レベルを5に上げる。 ←未
・Fランクの依頼を達成する。 ←未
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書いてあったのはまさにチュートリアルクエスト。
項目は多いけど、その一つ一つの難易度はそれほど高そうではない。
たぶんチュートリアルなので俺でも問題なくクリアできる難易度なんだろう。
――「これを一週間でクリアすればいいのかな?」
――『はい』
――「やること自体は簡単そうだけど、結構項目が多くて大変だな」
――『まだ、初心者向けのミッションカードなのでかなり楽な方ですよ。それに各項目のクリア報酬も冒険者として必須のスキルを貰えるのでかなりお得です』
――「そうなのか」
項目を確認すると、冒険者ギルドで仲間を作るのが激しくハードルが高いように思える。
俺は人付き合いがうまく出来ないから無職になったようなもんだしな。
仲間を作ってうまく立ち回れば最初の会社でも無職になんてならないで済んだはず。
でもこのミッションをやらねば再び無職だ。
俺は必死にミッションをクリアすることにした。