ネコの裁きの日は近い
悪役令嬢ものに見せかけたナニカ。
恋愛と言うより、ネコ愛。
ネコと和解せよ。
7/10 後書きの一部を修正
ネコは神である。
世の人間達にそう崇められ、神格を得たネコが治めている世界。
これは真実である。
宗派によってマンチカン派や三毛猫派やスフィンクス派などと言った、神の姿が種類別に見えるモノ達。
大雑把に短毛種派、長毛種派と言った大きな枠で見えるモノ達。
そもそもとしてそんな種類など関係なしに見える、お猫様派と言ったモノ達。
様々な派閥が有るものの、すべからく神はネコであると認めている。
……未確認情報だが、人間の頭に神様の耳を付け、尻に神様の尻尾を生やした存在こそが神と主張する派閥が有るとか無いとか。
話を戻す。
なぜネコ様が神だと認識したのか。
それはとても簡単である。
第一に
規則性は無いが、世界中に時折「ニャー」と言う音が鳴り響くのだ。
第二に
極めて稀だが、まるで巨大なネコが寝転がるかの様に、大地が激しく揺れる。
第三に
夜の空に浮かぶ、ネコの瞳孔。
時に細く、時に丸く。 夜空を動き回り輝き続ける様子はまさにネコの目。
ここまでは、こじつけだろうと思うモノも居るかもしれない。
しかし次に挙げる根拠こそが、ネコが神であると明確に示す証。
~~~~~~
「ネコスキー王国の王太子であるニャンゴロー・ネコスキーがここ、公式の夜会にて宣言する!
我が元婚約者アルギーレ・ワンゴスター伯爵令嬢! 貴様は神の巫女であるチュルール・チャーオ男爵令嬢を不当に扱い、お猫様を操り様々な妨害をしていた罪はとても重い!
よって貴様との婚約を破棄し、国外追放とし、ニャンゴローはチュルールを新たな婚約者とする!!」
などと、この世界で夜に何かあったとする。
「そんな!? ニャンゴロー様! 私は巫女様に何一つしておりませんわ!!」
「嘘をつけ! 神の目は私生活を含めて全てを見ている! 貴様がそのまま気に障る振る舞いであるならば、神がお猫様パンチを下さるだろう!!」
そう。 第五の根拠がそれ。
見え方はヒトによるが、お猫様の手にしか見えない巨大な前肢が天より伸びてきて「てしっ」とお猫様パンチをして消える。
肉球の可愛らしさや愛らしさや美しさやぷにぷに感やお猫様の香りを感じはするが、パンチされた場所は悲惨なこととなる。
巨大な石が空から降ってきたみたいな破壊力でもって、メチャクチャな惨劇の地と化す。
しかし全てはお猫様、神のすることであり、お猫様は可愛い。
お猫様 イズ ゴッド
全てはお猫様のする事。 お猫様には逆らえない。
お猫様の奴隷たる我々には、お猫様のなさる事として全てを受け入れるしか無いのだ。
「何をおっしゃりますか! 神は心を見ますわ! 神に対して恥じる行いをせぬまま、今まで生きてきた自信があります!!」
「その言葉こそ、神に対して恥じる嘘であろうが! 神に巫女と認められたチュルールが、嘘を吐くなど有り得ん!!」
この後もしばらく、
無罪だ、いや有罪だ、神に誓ってやってない、神はお前を認めない、お猫様は可愛い、お猫様は愛しい、お猫様はビューティフォー、お猫様こそ真理、お猫様愛してる、お猫様大好き、お猫様に埋もれて寝てみたい、それは許さんこの罪人が、だから私は悪くない。
と、しばらく水掛け論が続く。
有罪無罪、お猫様可愛い。
これをもう、何周しただろうか。
この夜会に居合わせた者達はもう、完全に疲れ果て、呆れ果てていた。
むしろコイツら仲良いなとまで、思ってしまう。
ニャンゴローの影にひっそりとチュルールも居たが、そのチュルールでさえ生暖かい目をふたりへ向けるほどに。
ここまでループした水掛け論を、まだ続けられるのだ。
いつまでも飽きずに繰り返す。
が、終わりはどうやっても、やってくる。
終わりは衛兵の絶叫が運んできた。
「会場上空! 神のお猫様パンチを確認! 会場に居合わせた皆々様は、散開・退避をお願いします!」
ついに来た。
この場の全員は、そう思いながら各自蜘蛛の子を散らすように、バラバラな方向へ逃げ出した。
神のお猫様パンチは前述の通り、破壊をもたらす。
これは無秩序に見えて、実は規則性が有る。
場所にパンチするパターンと、ヒトにパンチするパターン。
ふたつとも良く知られており、神のお猫様パンチと聞いた瞬間に人間達は逃げ出す。
なぜか?
どっちにしろ被害範囲が大きいから。
場所だろうがヒトだろうが、その周囲に居たら肉球で「ぺちっ」とされるのは明白。
狙いがヒトだった場合は、その被害者を出来るだけ減らす為にバラバラに散開して逃げる。
しかもお猫様パンチは(思ったよりも)すぐに来る。 ちょっと立ち止まって、一休みなんてしている余裕は無い。
それを、この世界の民には遺伝子レベルで刻み込まれている。
神のお猫様パンチ。 今回の狙いはなんだったのかと言えば……。
『お猫様パンチ、ありがとうございまーーーすっ!!!!』
ヒトだったらしい。
パンチ落着で轟前に若い男女の声が響いたのを聞く限り、ふたり固まって逃げたらしい。
巨大なお猫様の前肢が消えた後、少し経ってから被害者確認に動いた衛兵から、大声がした。
「神様の遊び相手を務まれましたのは、ニャンゴロー殿下とチュルール様であらせられます!!!」
そう、神の罰(?)を受けたのは、そのふたり。
神の遊び相手を務める。
これはこの世界独特の言い回し。
神はお猫様である。 お猫様パンチは、遊びの一貫である。
つまり、神に選ばれたのだ。
神に選ばれるのは大変に名誉あることであり、当人からすれば一生に一度の体験だ。
ならば神へ捧げる言葉は、感謝である。
~~~~~~
ネコが神である世界。
それはネコが、全力でネコをしている世界である。
思ったよりもネコの黒看板ネタをブチ込めなかった事に、軽い失望感。
ちなみに自分は、猫と犬のどっち派かと訊かれれば、強いて言えば犬派と答えます。
もちろん猫だって好きだけど。
でも猫を飼ったことがないので。
以下、本編には入れてない蛇足設定。
~~~~~~
お猫様
ネコは神である。
つまり世界へ降臨した神であり、天にまします神の僕であり、地上へ現界なされておられる小さくて愛らしいそのお姿は神の獣である。
ネコは絶対であり、唯一無二のネコである。
ネコを讃えよ。
ネコ
普通に地上にも居る。 天(神のおわす場所)にも居る。
この世界はネコに満ちている。
ネコスキー王国
付けた名前は特に意味が無い。
神がお猫様って事で、各国はそれぞれ猫が好きと主張した名前にする~とかって決めたけど、一国しか出てないのでその設定に意味は無い。
ワンゴスター伯爵
お猫様が好む主食の原料を国で一番生産している事から、結び付きを強めようとして王家側から政略結婚を打診した。
ニャンゴローの乱心を知った伯爵家当主は王家へ不信感を抱き、以降は王都へ卸すモノ全ての品質をとにかく下げた。
下手すりゃ粗悪品一歩手前の品まで。
結果として王都に暮らすお猫様はより良いエサを求めて他の地へ移り、減ってしまう。
それに気付いた王都民達は、神の加護が薄くなるのではと心配して、これまた他の地へ逃げ出す者がかなりの数になったとか。
神の巫女
人間側が勝手に付けた称号。
今まではマタタビーム公爵の領都が、周辺国で一番お猫様が集まる土地として、とても長いこと有名だった。
それを最近、チャーオ男爵(の娘であるチュルール)が開発したお猫様のおやつレシピによって、男爵領の領都がその地位を奪取。
お猫様が大変好まれる、そのおやつを開発した立役者であるチュルールは、お猫様(つまり神)に愛されている。
そう認識されて、神の巫女だな。 と祭り上げられただけ。
ミドルネーム
実は有ったが、文字数の関係で削除。
この世界のミドルネームは全国共通で、爵位を示すモノのみ。
騎士爵 フー ネコの警戒する唸り声
男爵 ミー 幼猫の鳴き声
子爵 ナー 仔猫の鳴き声
伯爵 ミャー 子猫の構って声
侯爵 ンナー 成猫の鳴き声
公爵 ニャム 猫らしい(?)おねむ(?)な声
王家 ニャン 一番猫らしい(のか?)鳴き声
辺境伯とか他の細かいのは未設定。
平民だけど、国に貢献する特別な功績を上げたものに“ニャホニャホ”ってミドルネームを名乗って良い褒美を考えたけど、どうしよう……。
ニャホニャホ・タマク□ーさんネタ、どうしようかな?
……放置かな。
この世界の人間達
猫っぽければ猫っぽいほど、魅力があるとされる。
なので、猫みたいな目とか言われるのは、目つきに対する最大の賛辞。
気まぐれな性格とは、神に愛されたとても高貴な存在を意味する地域も有るとか、無いとか。
ニャンゴロー
チュルールに騙されたまま、お猫様パンチにて遊び相手を務める。
チュルール
新しい猫のおやつ開発者。
巫女と王家から認められた時に王太子と出会い恋に落ち、結婚する夢を見た結果として猫を被りまくる。
ニャンゴローが言ってた妨害工作とは、チュルール自身が懐に仕込んだ猫おやつの事。
巫女として王太子に話しかけるのは問題ない。
話しかける時に限って、おやつを仕込む。
香りに釣られて、おやつが欲しくてニャーニャー集まってくる猫。 猫は神獣なので無下にも出来ず立ち往生。
でも懐におやつが有るのは絶対秘密で、取り出さない。 存在も明かさない。
これを何度も繰り返せば、あら不思議。
神獣を意のままに操り巫女様を囲ませるなんて言う、神を冒涜する様な行為を平然とする神敵はだれだ? となる。
王太子と話す時だけ巫女の邪魔をする=それが不利益になる者=王太子に(巫)女が近寄ってほしくないと思う者
アルギーレしか居ないじゃん=アルギーレは神敵DA☆
はい、なすりつけ完了(暴論)
こう言った悪役令嬢こそ実は良い人系の話は、悪い手段で悪役令嬢として貶めて婚約者を寝取るヒロインこそが、本当の悪役令嬢だと思う。
アルギーレ
本当に悪いことは何もしていない、真っ当なご令嬢。
ニャンゴローを愛していて、婚約破棄されたのが信じられなくて無罪を主張……した訳ではない。
家の名誉にかけて犯罪をしていないと、こちらは何一つ悪くないと言いたかっただけで、ニャンゴローは別にどうでも良かった。
なのに悪役令嬢へ仕立てあげられそうになったご令嬢。
この騒動後も無実を主張したが原告がいなくなって、冤罪の証拠なんかも見つからなかった為にウヤムヤとなって、未解決事件で迷宮入り。
確かに絶対的な神からニャンゴロー達は裁かれたが、人間が納得するにはそれだけじゃあ足らない。 本当にニャンゴローが悪かった証拠は見つかっていないのだから。
結局完全に疑いを晴らせずに領地へ戻って、鬱憤を晴らす為なのかお猫様の主食原料を品種改良しまくる。
それが上手くいって、領地はより栄えた。
本人は王太子の件で権力者への不信感を強め、後継者は他にいるので安心して平民へ下り、お猫様の主食原料の品種改良中に知り合った農家へ嫁いだとか。
ニャンゴローの死亡確認をした衛兵
詳細未設定。
厳めしい顔して「死亡確認」と言ったとか「ミンチより酷ぇや」と言ったとか、なんかそんな話が有るとか無いとか。
巨大なお猫様パンチ
巨大なお猫様パンチは夜にだけ発動するって部分以外は、作者本人も決めかねている。
お猫様はきまぐれなので。
神の気まぐれでテキトーにパンチしてる説。
猫の目(月)を通じて世界を見ており、騒いでいたりチョロチョロ動き回っているのを見付けて、オモチャだと思ってつい手を伸ばしちゃった説。
まあどっちにせよ夜はお猫様パンチが危ないので、身分関係なく太陽と一緒に生活するスタイルの世界。
例外は、そのお猫様パンチが来ないかと、まれに居る夜に行動する賊と、それらを監視する人員位。
タイトルについて
ニャンゴロー達が裁かれる日って話。
実際は前述の通り、神のイタズラか裁きか偶然か。
まあどうにしろ人間視点からでは、神からの裁きが下ったって事で。