動物の診療所
あるところに動物の診療所がありました。
お医者さんは馬です。
その馬の四肢には不思議な魔力が込められており右足には憎しみの魔術、左足には悲しみの魔術、左手には冷たさの魔術、そして右手には温かさの魔術です。
この噂を聞きつけた金持ちのワニは馬に言いました。「俺は今までの人生、成功の連続だ。悲しみなどありゃしない。どうだ、試しにお前の魔術を試させてくれないか?」と誇らしげに言いました。
馬は喜んで自分の魔力がこもった左足を切り落として金持ちのワニに食べさせました。
後日ワニは最愛の人を無くし、悲しみに暮れるのでした。
涙を流しながら「これが、悲しみか…?」といった瞬間に頭が爆発して死にました。
次に来たのは怒った顔をした鹿でした。「私にはどうしても許せないやつがいる。憎くて憎くて毎日が苦しい。あなたのうわさを聞いてきました。右足を私に下さい。」
馬はまた、自分の憎しみの魔術がこもった右足を切り落として鹿に食べさせました。
そのあと、鹿は復讐を果たしました。
「どうだ、私の憎悪をすべてぶつけてやる。死ね。」
鹿は相手を八つ裂きにし息の根を止めました。
高揚感に達した鹿は笑いました。しかしその瞬間に体の内臓すべてが破裂し、死にました。
三番目に来たのはリスでした。
「おっせかいでうるさい友人がいる、お医者さん、左手を下さい。」
馬は冷たさの魔術がこもった左手を切り落としてリスに食べさせました。
リスは親友に対して冷たくし続けました。
このリスは、よく浮気をして、べつの雌のリスとよく交尾をしていました。
それを親友が言い冷めていたのでしたが、リスは、陰湿に冷たくし続けました。
そして親友は二度とそのリスの前に現れることはありませんでした。
「あれは不必要な友だ」と笑いながら言った瞬間、体中のすべての穴から血を流して死にました。
さて、右足しかない馬のところに来たのは幼いうさぎでした。
「お父さんもお母さんもいなくてさみしいんだ。温かい家庭の中に生まれてればこんなことにはならなかったと思うんだけどなぁ。」と悲しげに言うのでした。
「これをあげるよ。」
馬はそう言って自分の最後の右手を切り落として食べさせました。
うさぎは食べた瞬間、医者の知識はもちろん、憎しみ、悲しみ、冷たさ、温かさというものは何なのかを知りました。
馬は「この診療所を君が受け継いでほしい。そして四肢がない私を終わらせてくれないか?」と言って目を閉じました。
うさぎは、言われた通り、馬にとどめを刺しました。
するとうさぎの体にも魔力がこもったのでした。病気になった動物、悩みがある動物を救い続け、そのうさぎはいろんな人から感謝されて幸せに暮らしたのでした。
この魔術は何のために生み出されたものなのか、誰も知らない。
しかし、 呪いも想いも受け継がれるのは事実である。
解釈の仕方は人それぞれ。
正直作者もわかってない。
幼い時に見た夢の内容がぼんやりと記憶に残っていたので書いてみた。