表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/3

 稀に、前世の記憶と言うものを持って生まれる人がいる。例えば見た事が無い景色を知っていたり、一度も見たことも無ければ触れた事さえない、機械の操作方法を知っていたりと様々だ。

そして、それは同じ世界で稀に起こる事柄だが神の気まぐれか、将又は悪戯か…非常に稀有な事で、極稀にではあるが、別の世界の記憶を持った魂が世界線を超えることがある。


 そして、そんな極稀な魂を持つ子供が、別の世界に産まれ落ちた。




 最初はほんの小さな違和感だった。


 おんぎゃあ!と元気に生まれてきた私が最初に思ったことは『どうして視界が歪んでいるのだろう?』と言う疑問だった。

 何も歪んで見えない中で、初めに聞こえてきたのは優しそうな女性の声。と


「ローゼマリー様、元気な男の子ですよ!」

「あぁ…漸く生まれて来てくれたのね。私の可愛い子。マリアンナ、早く見せて頂戴」


落ち着いた大人の女性!と言うような女の人の声だった。

そしてひょいっと、持ち上げられた時に『んん゛!?』と明確な違和感を覚えた。

『自分はこんなにも小さかっただろうか?』

一度、疑問と言うものに気づいてしまえば、別の疑問も次々に思い浮かぶ。


「あら?ナヴァール王族の証である赤い瞳をしているわ!クリストフにそっくりね!でも髪は私と同じユベール帝国の銀髪なのね。……これは、少し危険かもしれないわね」

「ローゼマリー様?どうなされました?」

「何でもないわ、マリアンナ」

「顔立ちはローゼマリー様に似て可愛らしいですね」

「えぇ、そうね。でも、この垂れ目な所はクリストフ似ね」

「確かに国王様と同じですね」


 国王…?この人は今、国王と言ったのか?私は一体どこに生まれたのだろう?

…私?生まれる?何を言っているんだ?あれ?これはどういう事なんだ?

何故、産まれてすぐの私はこんなことを考えている?

これじゃあまるで……


私は浮かび上がる様々な情報に、思わず泣くのを止めた。


「ラインハルト。あなたの名前はラインハルトよ。ナヴァール王国の第六王子として恥じない子に育ってね。……生まれて来てくれて有難う」


これじゃあまるで、生まれ変わったみたいじゃない。


それを理解するとともに、頭の中に流れ込んできた膨大な情報に私は気を失ってしまった。



●●●



時が経つのは意外に早く、産まれて半年がたった。


産まれてすぐに、気を失ったことで随分と母や傍付きメイドに心配をかけたようだが、今は落ち着いている。そして、その間にいくつかわかったこと、思い出したことがある。


まず、私は元々地球と言う星の日本と言う国で生きていた日本人だったこと。

そして、覚えていないが何らかの理由でしんでしまったらしい。

最後に覚えているのが、今まで体験したことが無い位の衝撃と無重力感。そして、自分から流れ出る血の色。これだけだ。

余りにもヒントが少なすぎるが、恐らく車、それも大型トラックに跳ね飛ばされたのか、爆発に巻き込まれたのだろう。

これ以上考えても何も分からないから、深く考えるのはやめた。私は死んだ。これが事実だ。それと、私の前世の話は割愛させてもらう。まあ、兄が居て、兄の影響を受けて男勝りな性格だったとだけ言っておこう。これ以外はただ平凡な人生だったし。


そして、何の因果か知らないが私は異世界の王族に生まれ変わったらしい。

比喩で無く、文字通りに。

お肌ぷにぷにの赤ちゃんになった。これに関しては諦めた。いや、最初の頃はかなり絶望したが。

結局のところ、私は前世の記憶を持った赤ん坊。これに落ち着いた…と言うより腑に落ちた。今はこれよりも厄介な事実があるし。


現在の私に分かる情報は少ない。それは私の母親であるローゼマリー・ナヴァール(旧姓ローゼマリー・ユベール)と私の目と髪が原因だ。

まず、私の髪は銀髪、と言うよりプラチナブロンドに近い。一緒だと思うが違う。私は少し金色に近いのだ。なので、"銀"髪では無い。次に目。

これが最大の原因とも言える。

私の目は赤目なのだ。見事なまでの赤い瞳。この赤い瞳はナヴァール王族の象徴とも言われている。そして現在、赤い瞳を継いでいるのは第一王女と私"だけ"なのだ。

この国には既に王太子がいる。が、王太子は赤い瞳ではなく碧眼なのだ。しかし、王太子は現在14歳。私の社交界デビューが4~7歳と考えてもギリギリ二十歳を超えるか?だ。そこに私が出てきたら?


荒れる。


間違いなく荒れる。別に私は王を目指すつもりはない。と言うか、そんなめんどくさい役職に就きたくない。頼まれてもお断りだ。

荒れるのは貴族の方だ。絶対に私を王にしようと担ぎ上げて来る貴族が出る。それが問題だ。詰まる所、後継者争いになるという事だ。

そんな事、勿論私はするつもりは無い。全力で拒否させてもらう。


と、母も同じ事を考えたのだろう。現在の私は(ほぼ)軟禁状態だ。


私に会いに来る人・合う人は母親のローゼマリーさん、傍付きのマリアンナさん、そして父親でありナヴァール王国の国王であるクリストフさんの3人と非常に少ない。

後は外にいる人をチラっと見かけるぐらいだ。勿論、外に出たことなど一度も無い。


まあ、そんな中でもある程度の情報は集めることは出来た。

何故か?


ひとえに言ってマリアンナさんと言う存在が大きいだろう。



元日本人です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ