異端な魔法使い①
2人の男はどこかに去ってしまったようだ。魔法の手ごたえがあった分、あの男2人も無事ではすまないはずであったが、なにも痕跡がない状況だった。
ソフィアは、ステファンの遺体を馬車の中に収容し、自らが御者となっている。貴族のソフィアが御者となるのは身分制が蔓延る世の中で珍しい。
「お嬢様、私が御者をしますので」
慌てふためく、リリを制して、馬を巧みに操っている。
「速いね。馬。」
「最高だ。くぅわー」
やかまかしいスターリンとウェールスは子供のようにはしゃいでいる。
「なんで、あなたたちもいるの?」
ソフィアは少しロープの袖が焼けているウェールスを見て、話している。ギリギリのところで避けたのだろう。ウェールスが御者席の隣に座っている状態だった。
「そんなつれないことを言わないでくれよ。俺たちが敵を引きつけていたおかげで、お嬢さんの攻撃魔法を打てたんだろう。我らのおかげで、助かったのだ」
スターリンは先ほどのことは気にもとめず、自分の手柄のように言っている。
「本当にしばきたい」
「お嬢様、堪えて堪えて」
ソフィアは平常心に戻しながら、山林の中を駆けていく。
「それにしてもあなたはなんで魔法を使えるの?」
「ある人に魔法を教わったのさ」
「魔法を教わったって、失礼だけど、あなたその黒い瞳は、オステンの民でしょ。オステンの民には魔法使いの家系はないはずよ…魔法使いの家の者以外の者が魔法を教わったからって使えるようなものではないはずよ」
「魔法は誰でも使える」
「そんなことはありえないわ。魔法は血筋が大事なの。そのために魔法は親族にしか伝えないという血の掟があるのよ」
「そこがどうにもこの世界の引っかかっているところなんだよな…でも見ただろ俺が魔法を使うところを…」
「それは…」
ソフィアにはとても信じがたい思いでいっぱいだったが、目の前で目にしたことは紛れもない事実だった。
「俺はこの世界を誰もが魔法を使える世界にしたい!そのためには金がいる!」
ウェールスの瞳は今までになく真剣なものだった。
「ふっ、バカねお金があったってそんなものこの国の貴族たちが許さないわ」
ソフィアは半信半疑ながらも、どこかこの青年のバカげた夢を笑う気にはならないのだった。
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