夢のはじまり
初めての投稿です。
やり方があまりわかっていないのですが、読んでくださると嬉しいです!
___予知夢を見たことはありますか?___
『予知夢』
夢で見た現象が、そのまま現実となって訪れること。
災害を予告したり、占いとして使われたりする。
___私、 白瀬 海は 予知夢が見える。
始まりは突然だった。
幼稚園生の頃、普段仕事であまり遊ぶことができない父と、遊園地に行くことになった。楽しみで仕方がなかった私は、その夜、「早く寝なさい」と母に促され眠りについた。
そして、おかしな夢を見た。
行ったことのないはずの遊園地が鮮明に浮かび、その中で私と父が笑顔で手を繋いでいる。もう片方の手にはたくさんのおもちゃを抱え、幸せそうに笑っている。すると突然、赤い光が差し込み、父が私の手を離した。
「お父さん!」
はっと目覚めると、いつもの家の天井が見えた。なんだ、夢か。安心して父の顔を覗く。大好きなお父さんの、いつもの笑顔がそこにあった。
しかし、
遊園地へ行った日、父は通り魔に巻き込まれ
死んでしまった
父のお葬式で号泣する母に、私はなんと声をかけたらいいかわからなかった。ただただ、あの夢は本当だったのか、とどうしようもない気持ちに襲われた。塞ぎ込んだ母に、いま話を打ち明けることなど到底できはしなかった。
小学校に上がると、新しくたくさんの友達ができた。
もちろん、父がいないことは悲しいことだったが、友達によって立ち直ることができた。
私は花ちゃんというピアノが上手な女の子ととても仲良くなった。遊びに出かけたり、お泊まり会を開いたりもした。
あれ以降、予知夢を見ることもなかった。
もう見ることはない。そう思っていた私だったが、その夜はやってきてしまった。
夢の中で、花ちゃんが笑っている。すると赤い光が差し込み、その笑顔が崩れてしまうのだ。
(あの光と、同じだ…)
はっと目覚めると、汗をびっしょりとかいていた。胸がどくどくしている。どうしよう。あの子も、お父さんのように死んでしまうかもしれない。
まだ幼かった私は、いてもたってもいられず、次の日の学校で後先を考えずに
「花ちゃん、死んじゃう!」と大きな声で伝えてしまった。
「私、夢で見たの!花ちゃんが死んじゃって…」
「何言ってんの??そんなわけないじゃん、やめてよね〜」
笑い出す花ちゃんや周りの子を見て、「そ、そうだよね…はは」と言葉を濁す。
確かに、お父さんのはたまたまだったのかも。現に花ちゃんは元気だし…
よかった、と安堵したのは、一瞬のことだった。
花ちゃんは1週間後、下校中に交通事故に巻き込まれて亡くなった。
(花ちゃんも死んじゃった…!なんで、なんで…)
花ちゃんの死は、私の人生を変えるものでもあった。
次の日から私は、死神と呼ばれるようになった。
「こいつといると、死ぬぞ」
「白瀬 海は呪いが使える」
学校中にデマが広がり、いじめられた。違う、と訴えても、誰も信じてはくれなかった。言っても仕方ない。全てに疲れ、学校へ行けなくなってしまった。
(お父さんや花ちゃんが死んだのは、私のせいなの?)
布団にうずくまり連日泣きわめく私を、母は心配そうに見つめていた。
それから1年、私は誰とも話さずに過ごした。予知夢は度々見たが、部屋から出ないためその人がどうなったかは分からなかった。
「…ねぇ、海」
ある日、母が私に話しかけてきた。
母は私が不登校になっても責めたりせず、ただ、そっとしておいてくれていた。私は母に見捨てられるのが怖くて、夢のことを話せないでいた。しかし、
「…いったい、なにがあったの?」
悲しそうに尋ねる母を見て、もう秘密にはできないと思った。
私の話を母は驚きながら、しかし冷静に聞いてくれた。
「そうだったの…お母さん、わかってあげられなくてごめんね…!」
「お母さんは海のこと、信じるよ」
「…ありがとう」
私は母の目をまっすぐ見ることができなかった。
私はひとつ、母に言わなかったことがあったのだ。それは、
母は、もうすぐ死ぬということ。
私は引きこもっている間、母の予知夢を見ていた。
「お母さんはもうすぐ、死ぬ」
まだ小学生だった私に、それを伝えるほどの覚悟と勇気はなかった。
数日後、
お母さんは発作で倒れ、死んでしまった。
身寄りのなくした私をもらってくれる親戚はいなかった。
小さいこの街で、私の噂は広まっていた。
「この子を預かったらなにがあるかわからない」
押し付け合いのような話し合いが何度も行われた。
(もう…死んだほうがマシかもしれない)
人生を諦め、死を選ぼうとした時だった。
「俺が引き取りますよ」