悪魔の子は奇跡の子
とある女の子が、生まれた。
ちょうどその日から世界各地で大雨、強風が続くようになった。
困ったことに、1日3時間だけしかまともに外に出ることが出来なくなった。
*
「今日も雨、やだな」
みんなが毎日空を見ながら憂鬱そうにつぶやく。
1人遠くの小屋に住む女の子──名前はメル。
も、空を見ながらため息をついていたり
そんなある日のこと。
「メルっ!ーーー!!」
村長さんが駆け込んできた。
村長さんは言った。
婚約者のアルが倒れた。と
アルは、バケモノと言われたわたしの数少ない味方。
「助けなきゃ!」
わたしには、力がある。
きっと村長もその力を頼りに来たのだろう。
「アルは、アルの所へ連れて行って。はやく!」
この世界には魔法がある
使える人間はまだまだ少ない。
しかし、魔法を使える人間はどんどん増えている
それでも、こんな田舎じゃ、みんなバケモノだと嫌う。
そんなバケモノと呼ばれたわたしは
怪我や病気を治す力がある。
それでも完璧ではない。
100%ではない。
だとしても全力で、頑張るしかない。
「アルっ!〈体力よ〉そして〈癒しよ〉」
少し、顔色が良くなってきた。
このまま全力で助けなきゃ!
「〈メルが望むは、アルを助ける力、希望の光よ〉」
ひときわ強い光が村全体を包み込んだ。
*
アルが目覚めた数日後
「俺は、もうすぐ死ぬ」
そう言っているらしい。
理由は、そう決められているからだと。
村全体でアルを守った。
メルも守った。
それでもその時は訪れた。
メルの力を欲し殺しに来た、冒険者が村を焼き回った。
村長とアルに守られて
メルの目の前で2人は殺された
メルが好きだった。お前は奇跡の子だ。笑っていればいい事がある。笑って生きろ。
それが2人の最後の言葉
どれだけ、癒しを求めても即死した2人が生き返ることだけはなく。
*
雨も風もマシになり、食べ物が手に入るようになった。
魔法が使える人間が増えて、魔法学校も完成した。
100年たった今、おとぎ話として、語られている。
そのおとぎ話だと、アルは生きているし、村の人々に祝福されて、アルと結婚し、メルは幸せに暮らしました。となっている。
しかし、現実は残酷で、2人はもちろん、村人は全員死んだ。
力に目が眩んだ冒険者は、いまや、目も当てられないほどに悲惨……いや、 苦しめられて死ぬよりも辛い目にあっている。
どんなに苦しませてもこいつらだけは許せない。
わたしは、ハッピーエンドのこのお話が好きよ。
だって、わたし、メルはアルと結婚出来るみたいだから。
100年経っても変わらない姿のメル
「復讐したいが為だけに、本当にメルは悪魔の子になっちゃったんだもの。笑えちゃうわよね」
もう、殺してくれと呟くことしか出来ない
“冒険者”たちは、死ぬことが許されないまま、100年経っても、吊るされていた。
そう、メルは本物の悪魔になり、癒す力以外にも力を手に入れたのである。
その対価は、言えない。
……後悔ないようにみんな生きてゆくんだよ。
途中で何も出てこなくなったから
ここまででおしまい。