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調合

流石は大きい街といったところだろう。

人の数も、店の数も半端ではない。


バザーのような店もあれば、高級そうな武器の店まで様々な店が軒を連ねる。


道行く人々もフードを被った魔法使いのような人、

どこぞやの騎士のような甲冑を着た人、多種多様な恰好をした人が堂々と街路を闊歩している。


召喚された街(リク=ドンゴ市街)では見ることのなかった光景だ。

*当然、JAPANでもあまりお目にかかれないだろう。




売られている品物も面白い!

見たことのない食べ物や色とりどりのフルーツ、豪華な剣や水晶細工の杖、

怪しげな魔法道具まで売られている。






『へーーー。本当に色々なものがあるんだなぁ』

とセンは歩きながら軒先を見て周る。


センの隣には、愛くるしいパートナー『ミニドラゴン(ピーちゃん)』がふわふわと浮かんでいる。




セン達一向は、事前に農家の家族からギルドの詳しい場所を教えてもらっていたので、そこを目指していた。



何といっても、一文なしだ。

服ONRYである。

このままでは、どうすることもできない。













さて、ギルドの場所はこっちであってるのかな?

と別れ際に貰ったメモを見るセン。





ふっと、

視界の端に、『薬草のようなものを売る露店』が目に飛び込んできた。


何となしに、地図から顔を上げその店を見つめる。

そのテーブルの上には色とりどりの瓶や陶器が並んでいる。





・・・





綺麗だな。

『もしかして『あれ』か?』と思い

近づいてみてみると。






そこに『回復薬』と書かれていた。





ここの世界に来てやっとファンタジーらしい代物を見た。

まあ、『竜』を毎日見てるといえば、見てるのだが、見た目完全に『ヒヨコ』だからな・・・

あまり、ファンタジー感を感じられなかったというか・・・

動物園のふれあい広場をマジマジと体験しているというか・・・











『回復薬』について色々聞きたかったため、売り主に聞こうとしたが、店には肝心の売り主がいない。



『あれ、何処に行ったんだ?』

と思いあたりを見回す。




すると、販売している店先の近くにそれらしい女性がいた。



「すみませ・・」

声をかけようとして目を疑った。





・・・





「・・え、ぴーちゃん!?・・何してるの?」





そこには、さっきまで隣を飛んでいたはずのピーちゃんが、

長椅子の上で女性と一緒に正座をしていた。


『え!?、何してんの?。ってか。いつの間にそこに移動したんだよ。』




『・・・』


女性がスッと、何か飲み物が入った器をピーちゃんに差し出す。

完全にそれに気を取られているようでピーちゃんの答えがない。




ちょっと気になって器の中身を見てみると緑色の液体が入っていた。

『お茶・・・かな?』センは深緑色の液体を見て思った。




*ピーちゃんは無言で満足そうに器を見ている。

何、『大変結構な腕前です。』みたいな顔してんだよ。







*したためるようにピーちゃんが再度、器の中身を見る。

★ ↓ここからは別軸でヒヨコをお楽しみください★










「あの、すみません。そのヒヨコうちのなんですけど、何か迷惑をかけてしまいましたでしょうか?」

女性がふっと振り向く。

薄紅色の長い髪がさらっと靡く。

とても綺麗で優しい目をしている。

だが、一人でも生き抜いてきたとでもいうような佇まいもある。




・・・とてもかわいい子だ。





吸い込まれるような瞳を見つめていると。


「いえいえ。そんなことはありませんよ。」

「とても可愛らしいヒヨコさんですね」ニコッと頬笑んだ。


話方がとても柔らかい女性だ。






*その噂のヒヨコも満足そうに器を小さな手で持ってクルクルと回している。

しっかり器の絵の面が自分側に来ているようだ。







聞けば『試飲』の回復薬をピーちゃんがガン見していたため、

よければどうぞということで出してもらったらしい。





「いやーーお忙しいのに、私まで頂いてしまってすみません」

試飲とのことで、ちゃっかり貰いながらセンが言う。








*ヒヨコが器を太陽に透かすようにしてカッと目を見開く

残念ながら器は、漆黒の陶器のため中の液体が見えることはないだろう。







「いえいえ。」

そう言いながら女性はポーションを茶でも擦るかのように

シャカシャカと刷毛でかき混ぜ始めた。







*ヒヨコは音と陶器にインスピレーションを得たらしい。

陶器の鼓動を感じるかのように、目を細めてゆっくりと回復薬を飲む。







「・・私の店ではポーションを擦って合成してから出しているんです。

低コストでもお客さんに合わせて擦るので、その人に最適な効果が得られるんですよ」







*ヒヨコの口と器の隙間からダーーーと回復薬が流れ落ちる。

おそらく、9割方は飲めなかっただろう。







なるほど、世界に一個だけのポーションということか。

センは女性がかき混ぜているロゼ色のポーションを見つめる。





*それでもお構いなしに、さっきより強く器を傾けるヒヨコ

容赦なく自分にふり注ぐ回復薬!洗礼されること間違いなしだろう。






「もちろん、回復量は高級なポーションにはかなわないのですが・・・」







*ヒヨコは回復薬を飲み終えたらしい。

小さな声で『マジ卍』と呟いている。








「回復量はもちろん。何か・・心まで救えちゃうような、そんなポーションができたらいいな。と思って作ってます。はい。どうぞ!」








*ヒヨコが味を確かめるように、満足そうに大きく頷く。

なんということでしょう。

ヒヨコさんの口元から下の羽毛は、黄色から緑色にしっかりと染まっているではありませんか!


匠か!!








「ありがとう。」女性からのポーションを貰いながらセンが言う








*良い感じで『新!!ヒヨコAFTER』が完了したヒヨコさん。

飲み終えた器を見ながらそっと漏らす

「うむ・・ありよりのありだな・・・ワンチャンだな・・」








「そう言っても私まだまだなんです・・まだ狭い世界しか知らなくて。いつか世界中を巡って人だけじゃなく、守りたい者、全てを救えるような人になりたいと思っています。・・・え。ヒヨコさんおかわりですか?はい。どうぞ。」照れながらも、はっきりとした口調で言う。






*試飲のおかわりを貰ったヒヨコ。先程の5倍のスピードで一連の動作を繰り返す。

体も5倍のスピードでより一層、緑色に鬼色づく。






「あ。ごめんなさい。私、初対面の人に・・いきなりこんなこと言われて驚いちゃいますよね。」






*飲み終えたヒヨコここで気づく!

そうかやっと回復薬を体で吸収したことに気付いたか!と思ったら


『うむ・・少し椅子にこぼれてしまった』ことに気付いた。

何事もなかったかのように、近くの雑巾を取り寄せゴシゴシと綺麗にする。

魔法か何か使ったかのように、椅子が新品のように光り輝きだした。






「ありがとう、おいしかったよ。ご馳走様」

スッと笑いながらセンが器を女性に差し出す。








「ごめん。今手持ちのお金がなくて、お金が入ったら今度は正規品を買いにくるね。・・・・ところで、なんでお前、お祭りのカラーヒヨコになってるの?」


試飲の回復薬に満足したヒヨコがセンの方へ飛んできた。








「大丈夫!絶対なれると思うよ。・・・もうすでに二人も救っちゃたしな。」

「また、買いに来た時はポーションの調合よろしく!!」






どこから湧き出たのか、

人混みに押され店から、離れていきながらセンは女性に話す。






「・・あ、・・おれの名前はセン。」

人混みでセンの手しか見えない。手を振っている。







「私は『さつき』。・・・うん。待ってるね。」

手を振り返しながらセンに向かって叫ぶ。







・・・






・・・








さつきは人混みに紛れて消えていった、センを暫くみていたが。

「センさんか・・・心が温かくなる人だったな・・不思議な人・・」

そっと笑いながら呟く。









手に胸を当ててそっと言う。





「ありがとう・・・」









さつきは胸を当てながら、

ゆっくりと店先のヒヨコさんが飲んでいたところへ器を取りに戻る。









はっと

さつきが何かに気付く。



そこにはピカピカに輝く椅子と、

緑色で『卍』の文字がかかれている雑巾が優しく微笑んでいた。



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