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其之十五

 山のふもとには誰一人としていなかった。死体もない。

あれだけの数がぶつかり合って、全員無事に帰宅するというのは到底考えられない。なにがあったのか。

「マスターたちも、今度は本当に消えちまったのか…?」

「なんで……」

「お、おい、あれみてみろ」

 地平線の先を指差し、タラノは驚いた表情で言った。その先には、真っ赤に染まる大地がゆらめいていた。あの位置は……ザルジュの森だ。

「そんな……」

「……これで、俺たちの帰るところは無くなったんだな……」


城へ、今回の事を報告する事にした。不本意だったがゾタを休める安全な場所がほしかった。

こうなったからには、殴ってでも王に国を見つめさせるとタラノは息巻いていた。

しかし、到着した城の中はものけのカラで、もう何年も人が住んでいないような感じだった。

おそらく王は、王という存在は、既にこの国にはいなかったのだ。何があったのかは分からないが、王が見捨てたこの国がこのように滅びる事は当然じゃないかと思う。それでも、この国を愛した者達が最後には立ち上がり、そして力をあわせ救おうとしたという事実は、なによりの誇りになるだろう。ヴィル王国の誇りに¦¦¦¦。


「ルディコ、これからどうするつもりだ?」

 城のベッドで横になるゾタを見つめながら、タラノはそう尋ねた。

「一度、ザルジュの森へ行くわ……。この目で確かめたい。その後は……隣の国へ行こうと思う。会ってみたいんだ、私と同じ、ザラロナ族以外のエルフに。きっといる、そう感じるの。どんな暮らしをしているのかなあ、はやく会いたい。……もちろん、ゾタが目を覚ましてからの話だけどね」

「おれも、ゾタが目を覚ましたら行くかな、隣の国へ。護衛が必要だろ? なんせルディコは伝説の聖騎士様だからな、ちゃんとお守りしないと」

「ふふ、そんな事思ってないくせに」


あの時現れたあの青年は、聖騎士の血を受け継いだ者だったのかもしれない。

忌み子と恐れられた私……、あのまま何事もなく暮らしていても、いつかは人間との間の子という事でつらい迫害を受けたかも知れない。それを察して、あんな事をさせたのだろうか。村のみんなを恨む前に、守ってくれたお父さん、お母さん、おじさん達を恨む前に、恨まないために、その矛先を私自身に向けさせたかったのだろうか。


この剣が、私に語りかける

心配ないと

白銀の光を放ちながら

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