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魔法世界の超能力者  作者: 壱弐参


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第五部 その二十八

物凄く久しぶりで申し訳ありません。

 イースティア東の城門。

 一念とリッツがイースティアへ戻ると、そこで待っていたのはシグルドたちだった。

 一念の帰還に顔を綻ばせたシグルドに、隣のルーネが目を細くしてじとりと睨む。


「まるで我が子を見るような視線だな、シグルド?」

「確かにそうかもしれんな」

「ほう?」


 そう聞き返したルーネは、シグルドの優しい瞳を覗くように見た。


「よもや勇者の後継者に……とでも思っているのか?」

「近いな……」


 すんと鼻息を吐いたルーネは不服そうな様子だ。


(ここまで素直になられると、いじりようがなくなるというものだ)


 すると背後から靴音が近づいて来た。

 一糸乱れぬリズムで、一歩また一歩と近づく足音に、ルーネとシグルドはその(あるじ)が誰であるのかがわかっていたように正面を歩く一念を見ながら背後に声を掛けた。


「盗み聞きかな、バッツ殿?」


 シグルドの言葉にバッツは口を緩めた。


「ほっほっほ、そんな無粋な真似をしたつもりはありませんが……お邪魔でしたかな?」


 シグルドとルーネの間にちょこんと身を置いたバッツは、左右の仲間にうかがう。


「大戦の戦友を邪魔などと思う訳もないだろう?」

「それはありがたい」


 ルーネの優しい言葉を隣で聞いたバッツは、念動力(サイコキネシス)で飛んで来る一念とリッツをにこりと迎えた。


「どうだったかね、一念君?」

「中々強敵でしたよ……リッツは」


 真剣な面持ちで呟く一念を見て、ルーネは呆れ、バッツは笑い、シグルドは額をつまむようにおさえた。


「……確か魔族を倒しに行かせたつもりだったがね?」


 困った顔のシグルドに、一念は頬を掻いて空を見上げた。


「いやー、シグルドさんに怒られるとは思ったすけどね? 『パトロールをさぼってしまった事は正直に言うべきだー』とか一念が言うもんだからね? はははは」


 シグルドはちらりとルーネを見る。

 肩を上げて「いつも通りだ」と呟くルーネに、シグルドは頭を抱えた。


「出来る限り魔族の戦力を削って欲しかったのだが…………いや、まぁいい」


 若者の勝手な行動を過去の自分と照らし、切り替えようとしたシグルドだったが、その時バッツが割るように聞いた。


「それで、少しは削れましたか?」


 すると一念は空から目を戻し、額に手を置いて敬礼してみせた。


「魔族討伐パトロール、討伐数およそ七千(、、)! 途中さぼってすみませんでしたっ!」


 その数を聞いた時、シグルドの目に驚愕が走り、城門付近の兵たちがざわついた。

 一念が述べたのは、それ程信じがたい数字だったのだ。


「いやー、途中からテンションがいい感じになったんで一念との模擬線ついでに張り切っちゃって……魔の砂漠の現存する魔族はあらかた討伐したと思うんすけど、途中でさぼらなきゃもちこっと奥までいけたと思うんすよねー……いや、申し訳ないっす」


 リッツの軽口。しかし中にあった意味に、シグルドは未だ疑いの目を向けている。


「七千と言えば、今回の作戦の予想魔族数の七十分の一だ。それを二人でやってのけたと?」

「どっひゃー。あんなのが七十倍もいるのかよ。まぁ、一念が六千、俺が千ってとこですよ。砂中に忍んでる魔族も、一念の索敵の前じゃ透かして見えてるもんですからね。正面から突っ込んでくる魔族は俺が相手して、一念は延々と『漁業漁業~♪』とか言ってましたね」


 バッツが感心したように髭を撫で、ルーネがその様子を思い浮かべてる様子で頷く。


(……なるほど、あの力をそこまで繊細に扱えるとはな。これは希望が見えてきたか。それにリッツ君の戦力もここへ来てから着実に増している。一念君が良い影響を与えているようだな)


 シグルドは若き才能に驚き、そして短い溜め息を漏らした。


「悪くない戦果だな」


 突如聞こえる重い声。

 その聞きなれた声に、リッツの肩がビクつく。


「うげっ!?」

「ディールさんっ!」


 リッツが漏らした声にじろりと睨みを見せるも、一念は嬉しそうにディールを迎えた。


「皆さん城門に集まってどうしたんですか?」


 錚錚(そうそう)たるメンバーにを見渡し、一念が疑問を述べる。


「一念たちの帰りを待っていたのだ」

「ムサシさんまで?」


 ディールとムサシ。二人の師が現れ、一念はただ事ではないと悟る。

 そして皆の身なりを見て気付く。バッツ以外の面々が、まるでこれから旅立とうとしているような荷物を持っている事に。


「もしかして……出発ですか?」

「うむ、これより我らパーティは魔族の中心地《大峡谷》へと向かう。各国との連携にもよるが、本軍が動くのは明後日となるだろう」


 ルーネの説明に、リッツがごくりと喉を鳴らす。


「一念、お前は連日の疲れもある。これより明後日までは十分に身体を休めるように」

「……はい」


 ディールの指示に、一念が静かに頷いた時、背後の兵たちがざわつき始めた。

 城門の前に現れたのは、トレーディア国の国王アレクト。そしてイースティア国の国王ギンだった。

 皆が跪く中、一念はポカーンとその様子を見つめていた。

 そう、一念はギンと初対面だったのである。

 一念は咄嗟に精神感応(テレパシー)を発動し、アレクトの脳内へ語り掛けた。


『なぁなぁ、隣の怖そうなお爺さん誰?』

『この国の王、ギン殿だ。大戦を知る知勇の将だ。無礼な真似はするなよ』

『マジか』

『大マジだ』


 およそ国王との会話ではないが、一念は精神感応(テレパシー)を切断すると、一度頭を下げて挨拶をした。


「挨拶が遅れてすみません。一念といいます」


 軽く会釈をする一念。


「ほう。君が一念殿か。今回の件、ありがたく思うぞ」

「どうも。……すごい……王様だ」


 感じた事のない威圧感に、一念は感嘆の声を漏らす。


「おいおい。ここにも王様がいるんだが? あぁ、皆の者。楽にしてくれ」


 また一念に怒られると思ったのか、アレクトの言葉に皆が立ち上がる。


「いや、だって威厳とか威厳とか威厳とか……全然アレクトと違うぞ?」

「悪かったな、威厳がなくて」


 腕を組んで悪態を吐くアレクトに、ギンが笑う。


「ふっふっふっふっふ。噂通りの人物だな、吉田一念殿」

「その噂、良い噂だと思いたいですねぇ……」


 困った顔をして一念が言うと、ギンはくすりと笑ってからシグルドを見た。


「シグルド殿、何卒、宜しくお願いしますぞ」

「ギン殿も、陛下をお願いします」


 シグルドはそれだけ伝え、魔の砂漠の方へ歩き始めた。

 目の端に捉えた美菜の姿に、静かに口を綻ばせながら。


「では陛下、私たちも……」

「武運を……」


 ムサシの言葉に続き、ディールは静かに頭を下げ、シグルドの後を追った。

 ルーネは一念を見て微笑み、くしゃくしゃの頭ををひと撫でする。


「またな、愛弟子」

「気を付けてください」

「一念もな」

「っ!?」


 最後にルーネが一念を強く抱きしめると、後方から野次のような声が飛んでくる。


「ず、ずるいルーネ様!」

「職権濫用ですー!」

「わ、私もしたいですー!」


 アイリン、メイ、フローラの三人が野次の中心であったのは言うまでもない。

 ルーネはこれ見よがしに長めの抱擁を見せびらかせた後、一念の顔を覗き込むように聞いた。


「ふふふ、たまにはいいだろう? な? 一念?」

「ノ、ノーコメントで……」


 苦笑する一念の頬を名残惜しむように触れ、ルーネはシグルドたちを追うように歩き始めた。

 灼熱の太陽が降り注ぐ中、伝説のパーティは魔王討伐へと向かう。

 一念は、無意識に入った拳の力を、彼らの後ろ姿が見えなくなるまで込め続けた。

 明後日には魔族との衝突が迫っている。

 その戦の要である一念は、俯き、爪の跡が残る手の平を見た後、再び強く握りしめた。


(皆……)

別作の「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」も更新しました。

是非宜しくお願い致します。

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