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魔法世界の超能力者  作者: 壱弐参


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第五部 その十

 ――トレーディア城内会議室――


 円卓状のテーブル、扉から最奥にアレクトが腰掛け、その後ろにバッツが立っている。アレクトの右側にミーナ、ディール、ラッセル、左側にムサシ、リッツ、ピピンが等間隔に座っている。

 会議室に呼ばれた理由を聞かされていないムサシ達は、アレクトの言葉からその訳が話されるのを待っていた。


「一体なんなんすか、どう考えても俺、場違いっすよ?」


 リッツが椅子にもたれかかりながら周りを見渡す。


「まあまあ副隊長、そんな事言ってるとディールさんにまた扱かれてしまうよ?」

「ピピン、このメンバーを見て何か気付かないのか?」

「ははは、なーに、わかってますよディールさん」

「このメンバー……と言いますと……あっ」


 ラッセルはディール達が気付いた事に遅れて気付いた。


「へっ、どうせ俺にはわかりませんよー。……陛下、そろそろお伺いしたいんですけど?」

「……あぁ、すまないな。少し考え事をしていた。では、これより臨時会議を行う。この場にこのメンバーを集めたのは他でもない。長らく連絡のとれなかったシグルドからの連絡が入った」

「おぉ~、シグルド隊長元気なんです?」

「マジすか、大戦の勇者……シグルド大将……」


 シグルドの名前を聞いた瞬間、リッツは椅子から身を乗り出し固まった。


「シグルド殿……お懐かしいものですな……お会いした時、まだ私は准尉の階級でした」

「そうですねー、あの時のラッセルさんも私もまだ若かったですから」

「ゴホンッ」


 無駄口が目立った会議室にムサシの咳払いが響く。


「今は陛下の話を聞く事が最優先だ、お喋りはその後にして頂こう」

「陛下、シグルドは……いや、シグルド殿の連絡の内容とは?」


 ディールが片肘をテーブルに載せ、アレクトの顔を(うかが)う。


「……魔族がまたも活発に動き始めているとの事だ」

「「なっ!?」」


 ラッセルとリッツが口を開け驚き、ピピンの飄々とした顔が一瞬固まった。

 ムサシは腕を組み押し黙り、ディールは拳に力を込めた。

 違った驚きを見せた皆は、手に汗握りアレクトの次の言葉を待った。


「現在魔族はイースティアの東に集結しつつあるとの報告だ。断言は出来ないが、魔族との戦争が近い可能性がある事を視野に入れてくれ。現在先発隊としてシグルドと……その供が偵察に向かっている。その報告次第では先の大戦の悲劇を無くすべくこちらからの先手が必要となるだろう。シグルドが筆頭というのを前提に、ムサシ、ディール、バッツ、ラッセル、ピピン、リッツで精鋭を選考し、私に提出しろ。魔法が効きにくい魔族の事だ、ルーネが戻り次第、その中にルーネを加え特殊魔法兵団を組織しろ」


 アレクトがバッツに目をやる。


「バッツ、魔族の事で一番詳しいのはシグルド、ルーネ以外ではお前のみだ。何かあるか?」

「はっ、僭越ながら説明させて頂きます。魔族の正体は人間の亜種……と言うより元人間、と言うのが正解でございます。また、先の一念殿が発病した《砂熱》の原因となる体液には注意が必要です。個体数は少ないものの、その種の戦闘能力は人間のソレとは圧倒的な差がございます。近年、各国との距離が出来てしまいました。しかし、これを機に各国と協力体制をとるべきかと存じます」

「同感だな。次、ムサシ」


 バッツが一度頭を下げ元の位置へと戻る。


「やはり早急な対応が必要かと思います。大戦の英雄、シグルド殿からの連絡となれば、各国への号令がし易いかと思います。現在、三ヶ国間同盟が成立している状況です。聖王国と繋がりのあるイースティアへ兵を送る事になるかと思われるので、ギン王へはバルト聖王から伝えてもらうように、陛下から連絡するのがよろしいかと」

「あぁ、一念が戻って来てからの方が早い可能性もあるが、現在セドナがグリードに乗って、聖王国へ向かっている」

「流石でございます、陛下」


 ムサシが目を伏せアレクトに敬意を表した。


「ディール、何かあるか?」

「規模はわかりかねますが、前回同様、魔族の狙いが不透明なのが問題ですね。狙いがわかれば対策がし易いのですが……こればっかりはシグルド殿の連絡待ち、という事になります、か」

「うむ、魔王が再び出現したのであれば、またそれは対応せねばならないが、如何せん情報が少なすぎるからな……。ラッセル、大戦時新兵達を率いたお前の感想を聞きたい」

「え、えぇ……そうですね。あれから……どれだけ私と魔族の実力差を縮められたかはわかりませんが、現在のトレーディアの尉官であれば対等に戦えるかもしれません。無論、他国では左官程度の実力は必要かと思われますが……」


 ラッセルはテーブルの上で組んだ両手に力を込める。それをリッツが横目チラリと見る。


(この緊張感……ラッセルの兄貴がこれだけ……いよいよやべえな)


「大丈夫、リッツ副隊長なら楽勝だよ。後で仮想敵としてディールさんに稽古をつけてもらうといいよ」

「仮想敵……?」

「ディールさんは魔族の模倣が得意なんだ。いや、あれにはお世話になったなー」

「へぇ……」

「うーん、しっかし前回同様にはいきませんよ。こういった事前情報や魔族に関する知識、それに一念君だって――」


 アレクトの眉がピクリと動く。

 ピピンもこれが失言と感じたのかすぐに話題を変えた。

 しかし周りの者は気付いていた。国を救ったとは言え、少年に再び重責を負わせる事を避けたいアレクトの心情と、自分達が本来一念に頼ってはいけない事を。


「――って訳で白兵戦での戦力向上に関しては俺とピピンさんとラッセルさんで行いますんで、お偉いさん方は臨時の新部隊設立をお願いしますよ」


 リッツが立ちあがり会議室から出ようと扉へ向かう。


「ほぉ、リッツ……何やら自信に溢れているな?」

「そりゃそうでしょ、ディールさん。なんたって身内の仇ですからね」

「……そうだったか」

「はっはっはっは! ま、それは建前っすよ。仇がどうのこうの言ったら一念の馬鹿に怒られちまいますよ。だから精一杯やるだけですね」


 向き直り、腰に手を当て笑って見せたリッツはディールに拳を向けた。熱意を受け取ったディールは、口尻を少し上げリッツに答えた。

 リッツ、ピピン、ラッセルが会議室の扉を静かに閉め、会議室に再び沈黙が生まれる。


「…………お兄様が気に入られる理由がわかる気がしますわ」


 沈黙を破ったのは、いままで沈黙を貫いていたミーナだった。


「期待、という意味では最有力候補かと存じますな」

「バッツ殿にも期待させるとは、リッツめ、成長したな」

「ほっほっほっほ」

(みな)……」


 アレクトが席から立ち上がり、周りを見渡す。


「若輩な王ではあるが、皆の力と経験が頼りだ。民を……いや、アンアースを守る為に協力して欲しい」


 ムサシ、ディールはいつの間にか静かに立ち上がり、胸に手を添える。


「「この命、燃え尽きるまで……」」





 ――魔の砂漠――


 辺りは冷え込み、とある岩場には火を焚くシグルドと、膝をかかえる美菜の姿がある。


「よくこんな砂漠で火を(おこ)せますね。燃やす物なんてあるんですか?」

「簡単に調達出来るのだよ」

「調達?」

「乾燥した魔族の糞が良い燃料となるのだよ」

「うげっ、これ魔族の糞なんですかっ!?」


 シグルドの発言に顔を引きつらせた美菜が火から距離をとる。


「そこまで驚く事はないだろう、古より動物の糞が燃料として扱われているのだから」

「そ、そりゃ聞いた事はありますけど……」

「ふふふ、余程恵まれた環境だったのだな」

「あー、シグルドさんが言うと皮肉に聞こえますー!」


 立ちあがりながらシグルドを指差す美菜の顔は、笑ってこそいるが、やはり疲れた様子である。


「はははは、そこまで臭いを発する訳ではない。火に当たり横になりなさい」

「……はーい」


 小さな口を尖らせ、美菜は再び座り込んだ。


「む、寝ないのかね?」

「えーっと、ここを調べ終わったらトレーディアって国に戻るんですか?」

「その予定だね。最悪……イースティアで待機になるかもしれないが、おそらく戻る事になるだろう。近年現れた英雄とやらに会ってみたいからね」

「英雄……?」


 美菜が小首を傾げた。


「なんでも、ヨッシーダという青年らしい。特殊な魔法を使うそうだぞ」


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