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魔法世界の超能力者  作者: 壱弐参


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第五部 その七

「サフラ」

 農業国家アグリカの大将兼外交大臣。女王フーディアより絶大な信頼を置かれ、良き友人、良き相談役として腕を振るう。

 過去、女王候補の筆頭だったが、幼い頃よりフーディアと「どちらが女王になっても、残った片方は女王を助け、アグリカの平和に尽力する」と約束し、その約束を今も違えた事はない。

 よくわからない性格として有名であり、稀にフーディアや部下達を困らせる事もあるのだとか……。




 ――アグリカ城内、大樹洞の謁見の間。


 一念達一行はサフラの案内によって、謁見の間の玉座前まで来ていた。

 玉座には白く透き通る様な肌の女王が座っていた。精錬された動きで優雅に立ち上がる。

 女王は神秘的な美しさを放っており、肩の露出した薄手のドレスにトロンは赤面してしまう。

 一念も少々驚いたが、現代ファッションを見慣れているせいか間も無く正常を取り戻す。


 その前方、一念達の左右には重臣と思われる人間達が、五人ずつ十人並んでいる。

 一念以外のメンバーは女王に釣られる様に跪く。

 周囲の重臣達は一念の行動を咎めない。予めフーディアが指示を出していたのか、それとも一念の突飛な行動が各国で有名なのか……。

 サフラが書簡を持って行き、女王の隣に書簡を掲げ跪く。


「ようこそおいで下さいました、吉田一念殿。アグリカ国女王フーディアと申します」

「本日はお招き頂き感謝します。とはいえ、突然の訪問をお許し下さい」


 慣れない口調がとてもぎこちない。フーディアがそれに笑顔で返す。


「うふふ、緊張感が伝わってきますね」

「あ、わかりますか?」

「とても硬くなってますわ」

「いやー、一年いてもこの形式には慣れなくて……」

「まあ」


 これもまた形式上なのか、フーディアは口を手で塞ぐ演出をする。


「では楽にお話下さい。我等の関係は対等、上下の関係等ないのですから」

「そりゃ助かります。それで……えーっと……」

「?」


 フーディアが軽く首を傾げる。


「何を話すか考えてなくて困ってます」


 周囲に……いや、重臣達に動揺が走る。先程の応酬かの様に一念の強烈な個性を相手方に与えた。

 一念にその気は無いが、遠回しに女王に対して話題提示を求めたのである。確かに女王は「上下の関係は無い」と言ったが、ここまでは予想していなかったという重臣達の面持ちだった。


「単刀直入がお好きなようですね、それはそれで私も助かるかもしれません」

「ありがとうございます」

「では書簡の中身を見させて頂きます」

「はい、お願いします」


 サフラの手元で書簡を開け、中の親書を取り出す。サフラはフーディアが親書を取ると立ち上がり前方にいる重臣達の隣に控えた。

 フーディアは丸まった親書を開き黙読する。そして文末と思われる箇所に視線を向けた時、フーディアの口元がほのかに緩む。


「皆の者、一念殿と詳しい話がしたい。下がっていなさい」


 その発言にまた動揺が広がる。親善大使と言えども護衛を一人も付けずに女王であるフーディアを残す訳にはいかなかったのだ。本来であればルーネ達も一念を一人にする訳にはいかない状況なのだが、一念の特異性故にそういった行動に至らなかった。

 困ったフーディアの前にサフラが進言する。


「では、陛下と私、一念殿とルーネ殿を残し、下がって頂くというのはいかがでしょうか?」

「こちらは俺一人でも構いませんよ?」


 この発言による重臣達の反応は様々だった。

 殺されるかもしれない状況の中の発言に剛の者と判断する者、大将であるサフラへの侮辱ととる者、単純に頭がおかしいととる者……。


『一念、吉田一念』


 その時、一念はルーネからの信号を受信した。


『はいはいー?』

『信を得るのであれば我々も下がった方が良さそうだぞ』

『そうなんですか?』

『他の重臣達も残していた方がいいのだが、フーディア女王がそれを好しとしない様だからな』

『なんだか気がすすまないですねぇ』

『人から好かれる為には何かしらの努力は必要なのだぞ? 国にも同じ事が言えるわけだ』

『そんなもんですかねぇ』

『ふっ、では女王に進言しよう。むしろ私が言った方がいいだろう』

『へ?』


 先ほどの受信……これが、一念がこの一年の間に修得した新たな超能力、精神感応(テレパシー)の「遠隔受信(リモートレセプション)」である。

 一念の精神感応(テレパシー)は、一念から発信しなくてはいけないが、超能力の使えない他者からも使える精神感応(テレパシー)、これが遠隔受信(リモートレセプション)だ。勿論一念相手限定だが、一念から半径百キロ以内であるキーワードを強く念じると一念とコンタクト出来るようになっている。因みにこの距離は身体能力向上によって可能になった一念の発信可能距離と同等である。キーワードは「吉田一念」。この単語を頭で強く念じた為、ルーネは一念と精神感応(テレパシー)で会話出来たのだ。先日のジョージ王も、この手段でトレーディアにいる一念とコンタクトを取ったのだ。


「フーディア女王陛下」

「なんでしょう、賢者ルーネ?」

「では我々は控えさせて頂きます。その後の判断は女王陛下のご判断にという事で……」

「わかりました。……皆の者、偉大なる賢者にこの様な事を言わせるとはなんたる事か、すぐに彼女達を別室に案内しなさい。彼女は常に結果を出して来た。先の戦争の話を聞き、今後の糧とする臣は、もし戦争が起きた際にその糧を利用し助けてくれる臣は、私にはいないのでしょうか?」


 少々演技のかかったフーディアの発言に、すぐに彼等は慌て、我こそはと先頭を切りルーネ達を案内し始めた。そう、実績のあるルーネの発言だからこそこの図式が成り立ったのだ。そして、聖王国元宰相リエンとは比べ物にならない程の名声の持ち主のルーネと話したくない臣等、この場にいなかった。彼女は知識の宝庫だからである。

 人払いが済んだ後、サフラは前方(先程重臣達がいた場所)に控え、フーディアは少し疲れたという感じでストンと椅子にもたれかけた。一念はフーディアのこの人間性を見て、クスリと笑ってしまった。


「あ、ごめんなさい」


 一念の言葉にフーディアとサフラは目を丸くし互いに見合わせた。そして――


「「ぷっ、あっはっはっはっはっはっ!」」


 突然二人が笑い始め、一念は困惑の表情を灯す。


「見た、サフラ? あの人たちの慌てぶり?」

「えぇ、見ましたとも。あれは後世に語り継がれるかもしれません」

「やっぱりそう思う? 私一念殿が「何も考えてない」って言った時、笑い堪えるの大変だったんだからっ」

「女王陛下とはやはり気が合いますね。私もでございます」


「「あっはっはっはっは!」」


(まるで女子高生の会話だなこりゃ……)


 そう、まさに一念が思った通りだった。二人の見目はおそらく二十の前半というところか、一念と左程年齢が変わらないのだ。

 フーディアは、神秘的な美しさとは裏腹に、こういった人間性は当然持ち合わせているのだ。サフラもフーディアとの会話の中に形式上の上下関係を入れつつも、フーディアとは親友同士と言った感じで楽しそうに話している。


「で、今の一念殿っ」

「女王陛下、少し見せ過ぎではございませんか?」


「「うぷぷぷっ」」


 二人が笑いを堪えながら話す中、一念は周囲の状況に追いつく事が出来たのか、ようやくこの状況を笑う事が出来たのだった。


「あははは」

「あら良いわね、今の笑顔。心から笑えないとその表情は出ないわ」

「そういうもんですかね?」

「そうよ。あ、楽にしてください。サフラ彼に椅子でも」

「かしこまりました」

「あぁ、大丈夫ですよ。椅子はいらないので」

「駄目よ、ちょっとした長話になるんだから疲れてしまうわ?」

「いえ、腰掛けない訳ではないので」


 と言うと、二人は先程とは違った意味でまた見合わせた。

 一念は百聞は一見に如かずという感じで、念動力(サイコキネシス)を利用し、その場に腰かけて見せた。そしてそれが冗談だと言わせない様に、空中浮遊(レヴィテイション)まで混ぜて披露した。


「話には聞いてたけど、異能型……という訳じゃなさそうね」

「一念殿、それは私にも……その」


 サフラはそれを体験したくなったのか、皆まで言わずにアピールする。その上目遣いは並の男であれば即答で是としそうな程の魅力があった。実際に一念もややたじろいでしまった。


「ちょ、ちょっと窮屈になってしまいますが、良いですか?」

「は、はい!」


 後方に回避し、己を保とうとする一念を追いかけながらサフラは猛烈にアピールした。

 一念はすぐにサフラに念動力(サイコキネシス)をかけ、パーソナルスペースを確保した。


(むぅ、これはこれで初めてのタイプの人だな……)


「わぁああっ♪」


 サフラはまるで少女の様な笑顔を見せる。苦笑する一念は頬をポリポリと書いている。そしてフーディアは――


「一念殿、一念殿っ!」


 自分を指差し、「私はまだか」という感じでサフラ同様に、一念に念動力(サイコキネシス)を求めた。


「あぁ、はいどうぞ」

「あら? わっ、これは……凄い……わ」


 サフラとは違った驚きを見せたフーディアはすぐに何かを閃いたのか、一念と会話を弾ませる。


「これは一念殿が飛べるという事を意味していると思っても?」

「実際に今日飛んで来ましたからね」

「論より証拠ってのは本当ね。アグリカでは「実際には飛竜に乗っていた」とかの話も出ていたのだけれど……」

「私達は信じてはいましたが、全てと聞かれるとお恥ずかしい話になってしまいます」

「あははは、仕方ないですよ」

「では、私達を天樹の頂上付近まで飛ばせるかしら? あそこに気持ち良くお茶が飲めるスペースがあるのだけれど……いかが?」


 両手を合わせ、サフラに負けない魅力でお願いされてはいけない。無論、断る一念でもないが。


「それなら……お茶の準備をお願いします」


 同意の表すためか、必需品の準備をお願いする一念だった。

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