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魔法世界の超能力者  作者: 壱弐参


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第五部 その三

 聖王城東塔地下二階に位置する剣錬所。地下一階にある訓練所とは違い、より実戦に近づける為、ここでは木剣を使用せず真剣を使い兵達が日々鍛錬をしている。

 剣錬所の四方には回復担当の魔術師が常時待機し、突然起こるアクシデントに対応出来る様になっている。


 剣錬所を訪れた一念だったが、兵達のほとんどが一念の存在に気付かなかった。それもそのはずで、中央の一角ではゲオルグ中将とアーツ大尉の模擬戦が行われていた。

 剣錬所ではトレーディア同様に障壁を発生させる一角があり、その場所では魔法や強力な剣術を使う事が可能である。


「大尉、中将に勝てたら昼飯おごりますよぉ!」

「ゲオルグ中将、負けたら全員がたかりに行くであります!」


 様々な野次が飛び交う中、アーツが意外な程善戦を繰り広げていた。


(あれは……アーツが炎闘気(フレイムオーラ)を発動してるのか? 対してゲオルグさんは剣のみだな……)


「虎の太刀、裂爪っ!」


 ゲオルグの掛け声と共に、剣先から鋭い斬撃の衝撃波が発生し、アーツに向かい襲い掛かる。


「燃え盛る業火より生まれし火の精霊よ、巨大な障壁となりて我を守りたまえ! ファイアウォール!」


 その瞬間、アーツの正面に大きな火の壁が現れ、ゲオルグが放った斬撃がその中に飲み込まれていった。


「よし!」

「余所見はいけねぇな、ボーズ!」


 瞬時にアーツの背後をとったゲオルグは即座にアーツの首筋に剣を当てた。


「あー、くそっ。……負けてしまいましたか」

「なんでぇ、勝てるつもりだったのか?」


 ゲオルグはそう言いながら剣を鞘へ納めた。


「そのつもりにならないとゲオルグさんには勝てないんですよ」

「しかし、旧友の接近に気付けねぇようじゃまだまだだな、ボーズ」

「旧……友?」

「ほれ、あの眠そうな顔。見覚えねぇのか?」


 ゲオルグは顎で一念の存在を促し、一念も笑顔で返答した。


「一念!」

「お久しぶりです。ゲオルグさん、アーツ!」


 一念の声と共に周りの兵達もその存在に気付き始める。


「一念さん!」

「お元気そうで!」

「一念様!」

「ハハハハ、皆さんもお元気そうで!」

「おう、今日はどうしたんでぇ?」

「えーっと実は――」















 ――トレーディア城、ミーナの部屋ではイリーナ、メル、フロル、エメリアが行うジャンケン大会が開催されていた。


「「ジャンケン、ポンッ!」」

「……勝ったわ」

「あー、負けたぁあああっ!」


 メルが悔しそうな表情をし、フロルが小さな声で勝ち(どき)をあげた。


「これで私とフロルの決戦ね」

「……私にも負けられない戦いがあるわ」


 ジャンケンの総当たり戦での勝者はエメリアとフロル。因みにイリーナは全敗、メルはイリーナに勝ったのみである。


「ペッタンコ」

「……おばさん」

「あわわわっ……二人が怖いよぅ……」

「もうほっときましょうイリーナ様」

「それじゃ、最後の勝負を始めて頂戴♪」

「ジャンケン――」








 同時刻に歩兵部隊でのくじ引きが終了した。ナビコフ少将が見事当たりを引いた人物の名前を言い挙げた時である。


「一念中将に付き添うのはトロン少佐である!」

「やったぁっ!」

「ト、トロン君……良ければそのくじを交換してもらえないでしょうか?」

「い、いくらパティさんのお願いでもそれはっ……その……」

「ダ、ダメ元で言ってみただけですっ」

「ははは、パティ准将殿の顔は真剣そのものだったであります」

「アッシュ、あなた覚えてなさいっ」

「それは怖いですね」

「パティ准将殿は最近一念様に構ってもらえないから焦ってるんですよ」

「なっ、テルー!」


 テルーが、パティを茶化し、歩兵部隊の皆に笑いが広がる。

 勿論パティは一念とあまり会えてはいないが、毎日必ず精神感応(テレパシー)で連絡を取っている。会おうと思えばいつでも会えるが、忙しい一念を気遣い約束して会う機会は1週間に1度と決めている。それを知るものは当人同士とバディのみである。










 そして魔法兵団のくじ引き結果は……。


「くじの結果、一念中将の付き添いは私、ルーネと決まった!」

「「「団長、ずるいですーっ!」」」


 アイリン、メイ、フローラ含む女性兵多数が不満を露わにし、ルーネに迫り寄る。しかしルーネは素知らぬ顔で兵達をあしらった。


「何か問題でも?」

「団長がくじを引くなんて聞いてないです!」

「くじを引く者はこの場に残れと明言したはずだが?」

「うぅ……」


 アイリンが代表して文句を言うが、ルーネの一言は正論であり、そしてその目には口を挟ませない圧力がこもっていた。そこへ助け舟を出す人物がいた。


「団長、団長のその姿も大人げないですよ?」

「む、セドナか」

「「セドナさん!」」

「なんだ、セドナも行きたかったのか?」

「貴重な体験ですからね。出来れば行きたかったのですが、団長が先に当たりを引いてしまいましたので……」


 当たりくじは一枚。当たりが出た時点で終了の為セドナまでくじ引きの順番が回らなかったのである。勿論セドナはそれについての不満を出さないが、ルーネのアイリン達への対応について少し諌めたのだった。


「ふむ、それは申し訳なかった」

「いえ、別に謝る程の事では……」

「仕方ありませんわ。今度行われる一念様ファンクラブ限定の食事会まで我慢します」

「「します」」


 アイリンのその発言に対しルーネと一部の女性兵の眉がピクリと動いた。


「ほぉ、今のは聞き捨てならないな」

「会員の特権ですから」

「アイリン少佐、どういう事ですか!?」

「そのファンクラブにはどうやって入るんですか!?」

「大兵舎の掲示板に部屋の番号と名前を記入し、「会長様へ」と明記すれば大丈夫です」

「急がねばなりませんわ!」

「こんな事をしてる場合ではないです!」

「ふっ、皆の者このルーネに続け!」

「「「だ、団長ずるいですー!!」」」

「非効率だと戦場では死を招くぞ!」


 ルーネ率いる集団が勢いよく駆け出し、すぐにセドナやアイリン達の目には見えなくなってしまった。セドナが右手で頭を抱え、アイリン達は自分達がやってしまった「過ち」に気付き焦っていた。


「全く、普段以上のまとまりだわ」

「アイリン隊長まずいですよぅ……」


 フローラが忠告をするが、アイリンの耳には届いていなかった。


「メ、メイさん、どうしましょう……」

「もう会長にお任せするしかないわね」

「ところでファンクラブの会長って誰なの?」

「それが……一切わかってないんです」

「私も知らないんです」

「へぇ、そうなの……」


 会長の正体が不明とわかりセドナは怪訝な表情をしたが、何かを決意した様に歩き始めた。


「セドナさん……あのどちらへ?」

「ひぇっ!? く、訓練が終わったなら部屋に戻るに決まってるじゃない」

「セドナさんのお部屋はそちらではないはずですが……?」

「あ……あぁそうだったわねっ。私ったら疲れてるのかしら。 それでは失礼するわ」

「「……はぁ」」


 セドナは踵を返し、自室へ帰る事となった。


(後で必ず記入しに行かなくては……)










「――ポンッ!」

「……私の勝ちよ」

「きぃいいいいっ!」

「フロルおめでとさん」

「フロルちゃんおめでとーっ!」

「うふふふ、エメリアはまたの機会ね♪」

「フロル、覚えてなさい!」

「……何の事ですか?」

「はははは、もう忘れたってさ」

「ほんとに可愛くない女だわっ!」

「あわわわわっ、やめようよー……」


 こうしてフロル、トロン、ルーネが一念の付き添いに決定した。





 数十分後、大兵舎にて……。


(……これは何? ファンクラブ会員応募の量が異常だわ。

 誰かが入会方法を触れ回ったとしか考えられない……)


 ファンクラブ会長である「フロル」は誰にも見られない様に、現在掲示板に書かれている情報をメモに書き取り、その場を去ろうとした。その時


「あ……」

「……こんにちはセドナ中将(・ ・)

「あなた今……」

「……えぇ、ファンクラブの応募方法を聞いたので、名前を書きに来たんです」

「あ、あぁそうだったのっ」

「……セドナ中将もですか?」

「わ、私は部下に用事があっただけよっ」

「……そうですか。では名前と部屋の場所は書いたので、これで失礼します」


 フロルはセドナに一礼をし、その場を去った。


(……よし、誰も見ていないわね)


 セドナもすぐに自分の名前と部屋の場所を書き去って行った。自分の名前が書いてあれば大抵の人にバレると気づいてないのは言うまでもない。

 そして後日開くファンクラブ公認の食事会が終わるまで、フロルがこの掲示板を確認しに来ない事を、セドナはまだ知らないのであった。







 聖王国。聖王城謁見の間。

 一念がバルトに呼び戻され、三ヶ国間同盟に関する書状をジョージから預かったところである。


「これを明日、アグリカの女王「フーディア」殿に渡してくれたまえ」

「わかりました」

「今頃、トレーディア城ではミーナ達が一念に付き添う人員を選定しているところだろう」

「アレクト達は行かないの?」

「我々の入国は許可されてないのだ。入国可能なのは一念と、その付き添い3人までだ」

「アレクト、バルト、ジョージさんが付き添いって事じゃダメなのか?」

「一念ちゃん、流石に一国の王を「付き添い」という扱いには出来ないわよ♪」

「んー、言われてみればそうかもしれない」

「ふん、少しは常識というものを勉強しろっ」

「うふふふふ、ヒーローはいつでも熱血馬鹿じゃないとね♪」

「あははは、今はクール系が多いんですけどね」

「何の事を言ってるのだ?」


 アレクトが首を傾げて聞くと、一念と房江は顔を見合わせて笑った。

完結まで時間がかかると思いますが、頑張ります!

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