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魔法世界の超能力者  作者: 壱弐参


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第四部 その十五

「な、何故武器を納める!?」


 ライネルはムサシに激昂した。


「お前は勝負に負けないと、納得しないみたいだからな」

「なっ!? しかし、何故剣を!?」

「ずべこべ言わずにさっさと来い!」

「くっ! ……はぁっ!!」


 ライネルがムサシに駆け、自然体のムサシはライネルの剣だけに意識を向ける。ムサシに斬りかかったライネルは側面から首元を狙い、右から水平に剣を払った。

 ムサシはライネルが剣を振ったと同時に、両の掌でその剣を包み込んだ。


「なっ!?」

「新陰流……無刀取り」


 ムサシの万力で包まれたライネルの剣はびくともせず、その力により、ライネルの身体は剣ごと地に捻り倒された。


「ガッ! ……ぬぅ!」

「勝負有りだろう」

「こ、殺せ!」

「人の話を聞け。殺せないと言っただろう」


 オーダイムに回復魔法を唱えながら、遠目でそれを見ていたリディアーナの表情に、焦燥の色が出る。


「ライネルッ!!」


(オーダイムは……なんとか大丈夫そうだ。しかし、このままではライネルがっ!!)


 その時、南側から轟音が起こり、その方向へリディアーナが顔を向けた時、ムサシとライネルの上空には三人の人影があった。


「お待たせしました! ムサシさん!」


 その声の方向に向き直るリディアーナ。


(あれはグラハイム先生……。なぜルーネが? それに……)


「と、飛んでる……?」


 ゆっくりと降下する一念に、ムサシが声を掛ける。


「待ったぞ、一念」

「お待たせしました」

「周りの兵を少し静かにさせてくれ、グラハイム」

「ですな」

「グ、グラハイム先生!? 何故ルーネと!」

「ライネル……今から言う話をよく聞きなさい」

「……?」


 ライネルはグラハイムの意図が理解出来なかった。

 そのライネルを見て少し顔を緩めたグラハイムは、大きく息を吸い、全ての兵に届く程、大きな声を張り上げた。


「聖王バルト様は健在である!! 繰り返す! 聖王バルト様は健在である!!

 我々は宰相のリエンに嵌められたのだ!」


「「っ!?」」


「リエンは陛下に毒を盛り、この三年間聖王国の玉座に座っていた!!

 増税、罰則、新法律、ウエスティンの傘下同盟……全ては陛下の望みと偽り、我々を欺いていた!!

 勿論! この戦争もである!! 我々聖王国軍は、この場でトレーディア軍との休戦協定を結ぶと共に、国賊リエンを成敗し、陛下をお助けする!!」


「な、なんと……」


 ライネルは困惑していた。グラハイムが言っている事を初めて疑った。それこそ、隣にいるルーネに欺かれているのではないのか? と……。

 しかし、過去から今までの間、グラハイムがライネルに言った事は、全て事実ではなく真実だった。そのグラハイムが嘘を吐くはずがない、とも思っていた。


「私はトレーディア軍中将ルーネである! 聖王国軍の前線部隊は、全て我が国の吉田一念准将が鎮圧した!!」


「「なっ!?」」


「しかし、案ずることなかれ! 一念准将が鎮圧した兵達は全て生きている!!

 先程見たはずだ! 空に浮かぶ無数の兵を、そしてそれが静かに下ろされる様を!!

 現在我が軍が、総力を以て、聖王国軍含む全ての兵の治療に当たっている!!

 速やかに武器を納め、聖王国に帰り、主を守れ!!」


 全ての兵が沈黙を守った。グラハイムの話は勿論、ルーネの話にも耳を傾けた。聖王国にも賢者ルーネの様々な伝説が残っているからだ。

 そして、ルーネが語った事実を、本日この場で目撃したからである。


 ルーネとグラハイムは互いの顔を見合わせ、そして声を上げた。


「「聞け、皆の者!! 戦争は終わりだ!!!」」


 そして一念は、自らの次の行動を考えていた。


(まずディールさん達……そしてバルトだ!)













 ――聖王国、聖王城謁見の間。


 リエンはバルト、房江、ゲオルグ、シーダイム、アーツの攻撃を受けていた。

 バルト、ゲオルグが斬り込み、房江は近接、遠隔と器用に立ちまわっている。シーダイムが三人の攻撃に出来るスキを埋め、後方からはアーツが、適宜火系統の魔法を放っている。


「はぁっ!」

「くっ」

「っしゃああ!!」

「ぬぅっ」

「よいしょ♪」

「ふ、ふざけおってっ」

「燃え盛る業火より生まれし火の精霊よ、火の玉となりて彼の者を燃やし尽くせ……ファイアーボール!」

「っ、レ、レジスト・ファイア!」


 アーツの魔法がリエンに届き、リエンの身体が一瞬燃え上がる。


「抵抗魔法が間に合っている、手を休めるな!」

「「おぉ!!」」

「ちぃっ、フィジカル・ブースト・マキシマム!」

「サエ殿!」

「はい♪ スペル・ブレイク!」

「なっ!?」


(先程から何なのだあの女は、全属性の無詠唱魔法だと!?

 ……現在ルーネ以外にそんな事が出来る奴がいるとは思えぬ。……しかしこれは一体?)


 無論、房江は全ての魔法の修得は終えていない。それどころか一つの系統魔法の修得もしていない。

 房江が使用可能なのは「大魔法以外の全ての魔法」である。勿論、そこまで修得するのには凄まじい鍛練が必要である。そして大魔法を修得せず、別系統の魔法の修得に移行すると、精霊間での弊害が起き、大魔法が修得出来なくなってしまう。

 これは一念にも言える事……という訳ではない。補助系統魔法と回復系統魔法は、他の魔法の平行修練が可能となっている。理由としては、二つの魔法は複数の精霊の力を借りるからである。

 しかし房江は、それを問題視せず、大魔法以外の魔法の修得に努力を注いだ。

 因みに、アンアースの世界でこれを行う者はいない。皆無と言っていいだろう。この世界では賢者こそが最大の栄誉(ステータス)であり、大魔法こそが魔術師の証明だからである。


「皆、追いつめるわよ♪  フィジカル・ブースト・マキシマム・オール!」

「なっ!?」(死ぬ気かこの女!?)


 リエンが驚いた理由は一つだ。

 魔法力の枯渇。これが起こった場合、魔術師は死に至る。その魔法を発動する魔法力がない場合は、魔法を発動する事が出来なくなる。

 しかし、発動した後に魔法力を吸い取る「フィジカル・ブースト・マキシマム」は、効果時間が切れるまで魔法力を吸い取り続ける為、魔法力の枯渇が起こる場合がある。

 勿論それを見極めて、発動するのが魔術師であるし、危険だと解れば解除が可能である。しかし、フィジカル・ブースト・マキシマムは、他者からの「スペル・ブレイク」がないと解除出来ない。

 フィジカル・ブースト・マキシマムの効果時間は約三分。これを房江本人、バルト、ゲオルグ、シーダイム、アーツの五人に使用するとなると、膨大な魔法力が必要となる。となると、魔法力が枯渇する可能性は非常に高い。

 そしてこの場に、スペル・ブレイクを詠唱が出来るのは房江とリエンのみである。

 リエンは宰相の地位である事から、将官以上の能力は把握している。バルトは雷系統魔法と回系統復魔法、そして補助系統魔法の修練中に病に伏した。ゲオルグは元々剣士型で、魔法を使う事は出来ない。シーダイムは軍医であったという事から、回復系統魔法と、水系統魔法を修めている。更に、補助系統魔法を房江に任せている事から、アーツが補助系統魔法を使えないという事に気付いていた。

 無論リエンがスペル・ブレイクを使う事も可能だが、先程から隙がなければ呪文名すら言えない状況である。


 つまりリエンは、房江が捨て身で自身を倒そうとしている……としか考えられなかった。

 対して房江は、そんな事など一切考えていなかった。房江にはあったのだ。魔法力が枯渇しないという絶対的な自信が。

 リエンと同じ考えに至ったバルト、ゲオルグ、シーダイムの三人だったが、房江の表情から自信を読み取り、すぐに攻撃に移った。


「ゆくぞっ!」

「「おぉ!!」」

「くっ、サンダーボルト!」


 リエンが放ったのは雷神の下位魔法である。大魔法が放てない以上、全員の足止めをしてから、スペル・ブレイクを放つという考えに至ったのだ。

 雷神の下位というだけで、サンダーボルトは雷系統魔法の上位魔法である。レジスト・サンダーを使っているとはいえ、全員が怯む可能性は高い。これはリエンの最後の賭けであった。

 範囲型のサンダーボルトは、謁見の間にいるリエン以外の五人を襲った。

 金色の光が五人を包み、身体(しんたい)に電撃による衝撃が走る。


「「「がぁああ!!」」」


 バルト、ゲオルグ、シーダイム、アーツが、衝撃により膝をついた時、リエンにようやく笑みがこぼれた。

 しかし、膝をついたのは四人(・ ・)だった。

 それに気付いたリエンは、即座に焦燥の表情に戻った。そして、探したのだ。先程から器用に立ち回り、全属性の魔法を無詠唱で唱え、体術さえも一番厄介な相手を。


 リエンが房江の存在に気付いたのは、自身の腹部に衝撃を感じてからだった。

 無言で近づいた房江は、リエンの腹部に強烈な右肘打ちを放っていた。

 そしてリエンは間近で視認して、ようやく気付いたのだ。房江が羽織っているマントに。


「そ、それは……ミスト……マン、っかはぁっ!」


 房江はリエンが怯んだと同時に、リエンの喉めがけて左上段蹴りを放った。リエンの魔法を封じる為である。

 そしてリエンはゆっくりと仰向けに倒れた。房江は休む事なく続け、リエンが持っていたミリオンワイズを奪い、それをリエンの口の中に捻じ込んだ。

 完全にリエンの魔法を封じた房江は、そのままリエンの頭に手を置いた。


「……スリープ・マジック」

「あ、ぁ……っ」


 リエンは身体をバタバタとさせ抵抗しながらも、ゆっくりと瞼を閉じていき、ついには動かなくなった。

 膝をつき、その一連の流れを見ていたバルト、ゲオルグ、シーダイム、アーツは感嘆の溜め息を吐いた。


(((一人で倒せたのでは……?)))


「ふぅ♪ ……ヒール・オール!」


 房江の魔法により全員が回復した。

 四人はゆっくりと立ち上がり、房江を見た。


「サエ殿、ありがとうございます」

「ハッハッハッハ! とんでもないお嬢さんだ!」

「「サエ様!!」」


「いいのよ陛下♪」

「それよりゲオルグさん。リエンを」

「おう! お前ら入って来い!」


 謁見の間の外に待機していたゲオルグの配下が謁見の間に入って来る。


「ふん(じば)って牢にぶっ込んでおけ! 猿ぐつわを絶対に忘れるな!」

「「「はっ!!」」」


 ゲオルグは、リエンの身柄をを部下に渡し、すぐにその場に跪く。

 続くシーダイム、アーツがゲオルグに倣う。


「あ、やべ。……よいよい、立って話せ。」

「「しかしっ」」


 一念との流れを一度体験した房江、アーツは、顔を見合わせニコッと笑った。


「よいのだ。余はお前達の目を見て話したい。」


 ゲオルグとシーダイムが顔を見合わせる。


「「……はっ」」

「うふふふ♪」


 ゲオルグとシーダイムが立ち上がり、その次にアーツが立ちあがった。


「陛下、またお会い出来る日が来ると信じておりました」

「お身体はもう宜しいのでしょうか?」

「うむ。……ゲオルグ」

「はっ」

「元気そうで何よりだ。お前の元気は周りを元気にしてくれる。それに、鍛練も怠っていなかったと見える」

「フッ、また陛下と稽古が出来るんですな!」

「ハハハ、お手柔らかに頼む。次に……シーダイム」

「はっ」

「先程も言ったが、軍を離れサエ殿を救ってくれた事に感謝する」

「身に余るお言葉です」

「出来れば、また軍に戻り、余やゲオルグを支えて欲しい」

「はっ、喜んで!」

「そして、アーツ君」

「はっ」

「紹介状の話は無しだ」

「っ!?」

「本日この場より、ゲオルグ、シーダイムと共に聖王国城内警備部隊の配属を命じる」

「っ! ……はっ!」

「よろしくな、ボーズ!」

「やったな、アーツ君!」

「宜しくお願いしますっ!!」

「うふふ♪」

「……サエ殿」

「はい、陛下♪」

「この国を救って頂き、本当にありがとうございます」

「「「っ!!」」」


 バルトは房江に(こうべ)を垂れた。

 ゲオルグ、シーダイム、アーツは絶句し、房江の反応を伺った。


「うふふ、これも一念ちゃんの影響かしら?」

「そうかもしれません」


 バルトが地に目を向けながら話す。


「どういたしまして♪ ……うふふふ」


 房江の返事を聞き、バルトがゆっくりと頭を上げる。


「でも、一番感謝しなくちゃいけないのは私じゃありませんよ、陛下?」

「ええ、勿論です」

「うふふふふ♪」

「ハッハッハッハッハ!!」


 ゲオルグ、シーダイム、アーツは二人の笑い声を聞きながら、未だに絶句していた……。



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