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魔法世界の超能力者  作者: 壱弐参


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第四部 その十二

 ――トレーディア国境付近。トレーディア軍側。

 第一歩兵部隊が後退し、第二歩兵部隊がそのフォロー。第二歩兵部隊が崩されない様に、第二魔法兵団が側面に回っている。第一魔法兵団は第一歩兵部隊の回復に力を使い、第一歩兵部隊の代わり(・ ・ ・)にムサシが単騎で聖王国軍聖合魔第一師団に対し中央突破をかけている。

 そして同様に第一魔法兵団の代わり(・ ・ ・)にルーネが背後からムサシのサポートを行っていた。


 そしてルーネの雷系大魔法「雷神」により、聖王国軍聖合魔第一師団に壊滅的なダメージを与えた。


 その時、ムサシとルーネの前に現れたのは、聖王国のグラハイム中将率いる聖王国軍聖合魔第二師団だった。

 オーダイムはグラハイムの救援を心待ちにしていた。


「グラハイム先生ぇっ!!」

「やれやれ、何度言っても先生を付ける……」


 ムサシとルーネがグラハイムを見つめる。


「グラハイム、懐かしい顔だな」

「大戦の時は何度もあの顔を見ましたな」


 グラハイムはオーダイムと後方に残存する聖合魔第一師団に指示を出す。


「オーダイム!! 足止めで構わん!! 兵と共にムサシに当たれ!!」

「おぉ!!」

「聖合魔第二師団!! これより私はルーネの足止めに入る!! 間も無く後方のライネルとリディアーナが到着するだろう!! それまでトレーディアの第二歩兵部隊、及び第二魔法兵団を叩け!!」


「「「「おぉおおおお!!」」」」


「行けぇっ!! 聖王国の勇者達よっ!!」


「「「「おぉおおおお!!」」」」


 ムサシは遠距離からの集中魔法攻撃をされ、遊撃としてオーダイムが半接近戦を行っている。


「ぬぅ…っ!!」(足止め目的だけに絞れば、戦力低下を防げ、なお且つ私の進撃を防げる……やるなグラハイムッ!!)


 ルーネの目の前に、聖合魔第二師団の中央から大きな跳躍をしたグラハイムが着地する。


「お久しぶりですな、ルーネ殿。あの頃とお変わりなく、美しいままだ」

「久しぶりだなグラハイム。肩を並べて魔族を倒した日が懐かしいな」

「えぇ、ですが本日は肩を並べる事はかないません。……フィジカル・レインフォース」

「そうだな。しかしそれは今日だけかもしれぬぞ? ……フィジカル・レインフォース」

「ほぉ、どういう事ですかな?」

「願っているだけだよ。弟子の帰還を……」

「賢者ルーネの弟子……それは興味がありますな」

「あぁ、イイ男だぞ」

「フフフフ」

「フッ……」


 二人が少し笑みをこぼし、その笑みが消えた時、グラハイムの表情は一変していた。

 その表情は死を覚悟し、なおも生きようとする戦人の顔だった。


「……参りますっ!!」

「来ぉいっ!!」


 グラハイムは剣を抜き、ルーネに駆け寄る。その速さはルーネのそれを凌駕していて、ルーネはグラハイムを引き離す事が出来なかった。


「速いな……。アイスランス!」

「それはどうも。はぁああ!!!」


 グラハイムの前に現れた無数の氷の槍はグラハイムの一太刀で大半が叩き落とされ、続く二撃目で残る氷の槍とルーネを照準とした衝撃波を放った。


「竜の太刀、飛竜!!」

「ふっ!」


 ルーネはグラハイムが放った衝撃波を、近くにあった岩を蹴り、跳躍する事で回避した。

 放ったアイスランスが全て衝撃波に飲み込まれ消えた時、グラハイムは既にルーネの背後まで跳んでいた。


「竜の太刀、咆哮!!」

「くっ!」


 グラハイムは剣の()でルーネの正面を縦に払った。ルーネの正面には壁の様な空気の障壁が出来、その壁がルーネに襲い掛かり、ミリオンワイズを正面に出し盾としたルーネを叩き落とす。


「……っ! ファイアーボール!」


 勢いよく地面に向かうルーネは、地面に対して火の玉を放ち、その爆風により、降下速度を軽減させ、ギリギリの着地を成功させた。

 ルーネが、遅れて降下してくるグラハイムに対し、ミリオンワイズで「コツン」と地面を突いた。

 その瞬間、地面には魔法陣が描かれた。

 魔法陣は赤く光り、中から炎がこぼれている。


「ファイアストーム!」


 ルーネが炎の渦を召喚し、それがグラハイムにうねりながら襲い掛かる。


「竜の太刀、鉤爪(かぎづめ)!!」


 グラハイムは宙で剣の弾幕を張り、無数の斬撃により炎の渦から身を守った。

 着地したグラハイムは、やや焦げた制服の肩部分(肩章)を手で払っている。


「やるな……」

「お褒めに預かり光栄です。しかし、やはり地力に差がある様ですな。長期戦は避けたい所です」

「短期なら勝てると?」

「いえ、単騎(・ ・)では勝てないので、数で挑ませて頂きます」

「……! ……なるほど」


 ルーネが視認したのは、いつの間にか迫っていた聖王国軍聖騎士団と、グラハイムの後方百メートルまで駆け寄っているライネル大将だった。


「グラハイム先生っ!!」

「やれやれ……ライネルの方が階級は上だろうに……」

「フッ、そういえばグラハイムは大将を辞退したのだったな」

「あなたこそ、大将の話がきているのでは?」

「階級なんぞ何の意味もないさ」

「フフフ、下の者が聞いたらどういう表情をするのか、見ものですな」

「位とは人に与えられる物ではない。自分で見出す物だ」

「フッ。……さて、第二戦目といきますかな。もっとも、二対一ですが……」


 グラハイムの左側にライネルが剣を構えて立つ。


「賢者ルーネ……」

「久しぶりだなライネル君」

「……」

「これ、ライネル、挨拶くらいせんか」

「……お久しぶりです」

「緊張しているのか? ライネル君」

「……あなたの恐ろしさはよく知っていますからね」

「フフフ。……少し話し過ぎたようだ」

「ですな」

「……参る!!」











 ――ライネルが大声をあげ、ルーネに駆けて行った頃…。その後方数キロの地では、二百五十人の少数精鋭部隊が五千人の飛竜騎士団に猛攻をかけていた。


「よっ! ……そりゃ! よいしょぉ! リッツ君、手貸そうかー!?」


 軽快な足さばきで、軽口を叩きながら(おびただ)しい量の返り血を浴びていたのは、国家特殊部隊ブレイブのメンバー、ピピンだった。


「くっ、だぁっ! ……っ! 大丈夫っす!」(ピピンさんも人外だな……なんであれだけ倒して傷一つねぇんだ!?)


 それは他の既存ブレイブメンバーもほぼ同じで、傷を負っている者は皆無に等しかった。

 最初の奇襲により、五百人程の損害を受けた飛竜騎士団は次第に態勢を立て直したが、ブレイブメンバーの攻撃力が高く十分に攻めきれないでいる。

 後方にいるトロンは、二人の既存ブレイブメンバーに守られながら、魔法による援護を行っている。


「燃え盛る業火より生まれし火の精霊よ、我が信念の槍となり彼の者を貫き通せ! ……ファイアランス!」

「「ぐぁああああ!!」」

「いいぞトロン君、その調子だ! はぁっ!!」


 トロンのガードに付いたのは、ピピンより任された精鋭二人。

 その護衛の甲斐あって、トロンはいつも以上の安心感で魔法を使う事が出来た。


「偉大なる海神ポセイドンよ、我に力を与え、天をも飲み込む波となりて彼の者を蹂躙せよ……皆さん離れて!!!!」


 トロンの掛け声により、前衛を守っていた複数人がトロンの後方まで跳び下がる。


流神(りゅうじん)!!!!」


 トロンの正面に現れた巨大な魔法陣から、目の前の全てを洗い流す様な激流が放出された。

 トロンの正面にいた飛竜騎士団の数十人が、激流により飲み込まれた。より後方にいた飛竜騎士団は、飛竜の飛行能力により回避出来たが、前方の兵は壊滅的なダメージを負った。


(さすが俺の弟!)


「やるなトロン君!!」

「へへっ……」

「へー、あの年で水系統魔法を修得してるとはね……。こりゃ先が楽しみだねぇ? リッツ君」

「へん、まだまだです……よっ!」

「ぐぁ!!」

「言うじゃないか、君も、もっともっと強くならないと……ねっ」

「がぁっ!」


 戦闘開始と同時に後方の部下達が前方に回り、ディールの攻撃から難を逃れたスプリガルドは、飛竜騎士団と互角に戦うブレイブに対し恐怖をおぼえていた……。


(くっ! たとえ四方から囲まれても、それに対応できる武力……。これがブレイブッ!!  しかし、何よりも恐ろしいのは……っ!!)


 スプリガルドの視線の先には、流れる様に部下の急所を突き、反撃の剣を素手で受け止めて叩き折る、ディールの姿があった。

 地面に吸い込まれる様に、次々と兵が倒れる。ディールの背後には、夥しい数の兵と飛竜の死体があった……。


(伝説の拳神ディール……その伝説に偽り無しっ!)


「ふむ、ぬるいな……」

「怯むな! 飛竜の機動力を使い、遠方からの攻撃に移れ!」

「なるほど、良い判断だ……」


「「「ファイアーボール!!」」」


 ディールの四方から飛竜騎士団の放った火の玉が向かってくる。

 深呼吸したディールは腰を落とし、ゆっくりと目を瞑り、そして見開いた。


「喝っ!!」


 地面に叩きこんだ神速の掌底(しょうてい)は、地面を爆発させ、向かい来る火の玉をかき消した。


(くっ……バケモノめっ……)


「ディールは後だ! 遠方からの攻撃を続け、残りの兵は他の敵に当たれ!!」

「的確だな。……リッツッ!!」


「くっ! ……しゃあ!! あいよぉ!!」

「そっちにいくぞ!!」


 敵に進路を塞がれたディールは、リッツに注意を促す。


「あのおっさんは……人使いが荒い、んだよぉ!! ……虎の太刀、銀牙!!」

「「「ぐあぁああ!!」」」


 リッツが放った高速三連撃は三つの衝撃波を発生させた。

 ピピンが口笛を鳴らし、リッツを褒める。


「やるじゃん。ディール少将をおっさん呼ばわりした事は内緒にしてあげる……よっ! 鷹の太刀、嘴突(しとつ)!!」

「「「ぐはっ!!」」」


 ピピンの高速三連突きにより、三本の投げ槍の様な衝撃波が決まる。

 しかし、敵の攻勢が変わった為、次第にリッツの傷が増え始め、ピピンにも傷が目立つ様になったきた。

 そして遂にブレイブメンバーにも倒れる者が現れ、そこから警備隊のメンバーに被害が出始めた。


「死ぬなよリッツ君!」

「ピピンさんこそっ!! ……なっ!?」


 それは一瞬の出来事だった。

 リッツがピピンに返事をした時、リッツの正面にいた兵がリッツに斬りかかった。

 後退してかわそうとするリッツだったが、すぐ背後には飛竜の死体があり、それに躓いてしまった。

 倒れたリッツに三人の兵が襲いかかる。


「リッツ君っ!!」


 リッツが死を覚悟し、三人の兵が剣を振り上げた瞬間、それは起きた。


 三人の兵の動きが止まり、その周り……ピピンの周りを含めた一帯の飛竜騎士団の動きが止まった。


「な、こりゃ一体……?」

「……これは!」


 ピピンは見覚えのある魔法(・ ・)を思い出していた。

 あれはそう、セドナ少将、ナビコフ大佐、パティ大佐、バディ大佐、リッツ少佐(・ ・)がトレーディアの試合場で戦った時。

 あれはそう、ムサシ中将、ルーネ中将がトレーディアの試合場で戦った時。

 その相手(・ ・)が使っていた魔法……。

 その時、上空から声が響いた。



「危機一髪だったなぁ!! リッツッ!!」


 その声だけで気付いた。リッツも、トロンも、ディールも、ピピンも……。いや、この場にいるトレーディアの全兵士が気付いていた。

 約半月前、トレーディアの国王アレクトと、子供の様に喧嘩をしていた人物。

 数日前、調印式で賭博国家ギブリグのジョージ国王が演説の際、複数回名前を挙げた人物。

 同日、パティ大佐が目に涙を浮かべ、肩を震えさせながら心配した人物……。


「くっ、へへ……へっへっへっへっ! ハッハッハッハッハッ! ……生きてやがったか!! 馬鹿野郎!!!」


 リッツが立ち上がり上空を見つめた。

 眩しい太陽に照らされ、逆光となり空に浮かぶ完全な姿は視認出来なかったが、黒い影となってその人物はそこにいた。

 黒い影は二人と一頭。

 初老を迎えるであろう、バッツ大佐。

 トレーディア唯一の飛竜、グリード。

 そして、腕を組み偉そうに胸を張っている、黒いマントを羽織った学ラン姿の青年。


「当然だろ!! 俺が死ぬわけがない!!!」


 トレーディア准将、吉田一念の姿がそこにあった。


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