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魔法世界の超能力者  作者: 壱弐参


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第四部 その十一

「グリード」

 トレーディア国唯一の飛竜。オス。

 一頭しかいないが故に大事に育てられ、戦闘訓練や躾は完璧な状態である。

 バッツに育てられ、実技戦闘もバッツと行う事がある。

 命令は絶対という理解力もある。バッツの事を友と思い、良き師とも思っている。

 たまにセドナがねこじゃらしを持ってグリードに寄ってくるが、その理由に関してはグリードもわかっていない。



「ゲオルグ」

 聖王国城内警備部隊隊長。階級は中将。

 茶髪で髪の毛は針金の太く、毬栗(いがぐり)の様な髪型である、額の中央に縦一本の傷がある。

 魔法は使えないが剣の達人である。しかし、かつて異世界より飛ばされて間も無い頃のムサシが、聖王国を訪れた時に勝負を挑んだところ、一刀のもとに叩き伏せられた苦い過去がある。

 聖王国の広い城内を警備する部隊の隊長。リエンの手により本丸頂上付近の警備を却下されたのを怪訝に思っている。



「スプリガルド」

 ウエスティン国飛竜騎士団団長。階級は中将。

 坊主頭だが眉は太くキリッとしている。首元に魔族に噛まれた傷がある。

 月並みの実力、人たらしの才能、真面目な性格、実直。このどれか一つでも欠けていたら、彼はこの階級までこれなかっただろう。

 部下からの信頼があり、掌握能力にも長けている。

 聖王国との傘下同盟には最後まで反対したが、彼の意見は聖王国の政治力に押しつぶされてしまった。



「ピピン」

 国家特殊部隊ブレイブのメンバー。

 小柄(百五十センチ程)な身体ではあるが、その力はナビコフ程度では相手にならない。黒髪の短髪で、アレクト並の目の細さ。

 魔術師としても優秀で、その力はセドナに迫る程である。

 ディールの良き相棒、良き友としてシグルド不在のブレイブを支えている。気さくで面倒見がよく、周りのフォローも忘れない気のきいた、要領の良い人間。



 ――聖王国。聖王城内。シーダイムとアーツは謁見の間の奥、本丸の頂上への階段を目指すべく、聖王城外壁内の中央塔まで辿り着いた。

 幸い塔内の警備は少なく、シーダイムとアーツにより、中央塔一階の兵を片付け終えたところだった。


「はぁはぁ……」

「大丈夫か!? アーツ!!」

「だ、大丈夫ですっ」


(無理もない、この若さでこれだけの戦闘だ。極度の緊張と魔法の行使で身体の負担は想像以上だろう……。

 確かに陛下さえお助け出来れば、リエンの失脚に追い込めるし、我々への配慮もして頂けるだろう。

 ボスの話によると陛下の体調はかなり良くなったと聞いた。「夕べ陛下と話しちゃったのよ。アーツ君と遊んで、一念ちゃんと遊んで顔が腫れ上がっちゃった♪」と言っていたが、アジトに陛下が来たというのは俄かに信じ難い。しかし、ボスやエメリアが言うのだから間違いないだろう。

 陛下さえ復調すれば私、アーツ、陛下でリエンを叩く事が出来るっ)


「シーダイム、何難しい顔してるの?」

「いえ、何でもありません……。っ!? サ、サエ様!? 何故ここにいるのですか!?」

「サエ様!?」

「アーツ君、シーダイム、ボーッとしてる暇はないわよ!」

「あ、ちょっ、サエ様!!」

「追うぞ、アーツ!」

「は、はい!」


(なんだあの速さはっ? ボスが戦闘経験あるなんて聞いた事ないぞっ?)




 ――ウエスティン西外れを飛ぶ、一念、バッツ、飛竜(グリード)

 グリードを拾ってすぐの出来事である。一念とバッツとグリードは精神感応(テレパシー)で会話をしていた。


『いいですな。この調子であれば一刻と少しでトレーディアの平地に着く事が可能でしょう』

『グゥウウ』

『アハハ、グリードもようやくこの速度と精神感応(テレパシー)に慣れてきたみたいですね』

『ほぉ、これは精神感応(テレパシー)という魔法なんですかな?』

『あぁ、うん。そうですね』

『ところであの反乱軍のリーダー。……名前は房江様とおっしゃいましたかな?』

『えぇ、房江さんがどうかしましたか?』

『あの方の足運び……只者ではありませんな』

『あぁ、バッツさんはわかっちゃいました?』

『ハッハッハ、伊達に長生きはしておりませんぞ?』

『アハハ、あの人も軍人ですね』

『ほぅ、聖王国のですかな?』

『いえ、あー……内緒ですよ?』

『フフフ、内緒話は大好きですぞ』

『あの人、俺と同じ異世界から来て、その……知り合いなんですよ』

『ほぉ、一念殿以外にもこの世界に来た方が……。では、以前聖王国に異世界人が現れたという噂は……?』

『えぇ、房江さんの事ですね』

『して、あの方が一念殿の世界で軍人だったと?』

『えぇ、自衛隊という部隊……かな?そこにいたんですよ』

『ほぉ、通りで……』

『房江さん、この世界に来て、生きる為に必死に訓練したんじゃないかな……』

『ほぉ?』

『多分あの人、今めっちゃ強いと思いますよ』

『ほほ、それは何よりですな』

『怒らすと怖いんです』

『肝に命じないといけませんなぁ……』

『グゥウウ?』

『アハハハハハッ!!』

『フフフフッハハハハハ!!』

『グゥウウウグルル!!』



 ――聖王国。本丸扉前。

 房江を先頭に、少し離れてシーダイム、遅れてアーツが扉に向かい駆けて行く。

 本丸扉前にいる兵二人が房江に対して抜刀した。

 房江は駆けながら跳び上がり、一瞬にして扉右側にいた兵に近づき、その右手に一瞬、乗った(・ ・ ・)。同時に剣を抑えられた兵の後ろ首を脚で刈り、正面へと引き倒す。

 失神した兵を確認する事なく、向かってくる扉左側にいた兵の足を払った。前に倒れ掛かる兵の後頭部を右手で掴み、加速させそのまま地面へ叩きつけた。


「ふぅ♪」


((うっそ……))


 シーダイム、アーツが房江の体術に圧倒されている間に、房江は扉を開く事に成功していた。


((速い……))


「アーツ君、シーダイム! 置いていくわよ!」

「「はい!!」」


 房江が扉の侵入に成功し、謁見の間が目前となった時、複数の兵と、異様な大きさの剣を持つ男が、謁見の間扉前に立ち塞がった。

 房江がブレーキをかけ、それにより追いついたシーダイムとアーツが正面の敵に対して腰を落とし構えをとる。

 少し息切れしたシーダイムが剣の男に声を掛ける。


「ふっ、ふっ……ゲオルグ先輩」

「久しぶりじゃねーか、シーダイム」

「あら、お知り合い?」

「元上司であり、聖王国軍人育成学校の先輩です」

「まぁ、それはそれは」

「綺麗な人じゃねーか。お前のコレか?」


 ゲオルグはニカッと笑い、左手の小指を立てる。


「ちっ、違いますよっ!!」

「ハッハッハッハ、相変わらずお前はからかい甲斐があるな! なぁお前ら!」


 複数人……六人の兵から失笑の声が聞こえる。


「皆お知り合いなのね♪」

「ゲオルグ先輩以外は、全員元部下です」

「あらあら、それは戦い難いわね♪」


 ゲオルグは房江の言葉に眉をピクリと動かした。

 周りの兵の顔にも緊張が走る。


「ほぉ、俺達と戦うってか? お嬢さん」

「あらお上手ね♪ でも、仕方がないでしょう? 私達の狙いは、陛下の救出なんだから」


 その言葉でゲオルグは怪訝な表情をした。


「救出? そりゃ一体どういう事だ、シーダイム?」

「陛下はリエンに毒を盛られ、身体を悪くされています! 我々は密かに陛下と連絡を取り合い、救出の機を(うかが)ったんです!!」

「陛下が……?」

「邪魔をするなら、あなた達を倒して行きますから問題ありません♪」

「サエ様っ! 挑発しないでください! 先輩めっちゃ強いんですから!」

「大丈夫♪ 多分私の方が強いから♪」

「「……はぁ」」

「聞き捨てならねぇが、今はそんな事はどうでもいい。本当に陛下がそんな事に?」

「ええ、陛下は今、本丸頂上にある寝室に捕えられてるわ。この機に乗じて脱出をする様に連絡をしたはずだけど、謁見の間にいるリエンと陛下が鉢合わせたら、戦力的に陛下の方が不利なの。だからそこをどいてくださる?」

「よく口が回るお嬢さんだな」

「ゲオルグさん、あなたリエンに忠誠を誓ったの?」

「そんな事あるか、俺が忠誠を誓ったのは、陛下ただ一人だ!」

「では謁見の間に共に行きましょう。そこで全てがわかるわ。もし何も起きなければ、私達を捕えるなり殺すなりして頂戴」

「肝が据わったお嬢さんだ」

「それは光栄ね♪」

「ふむ……」

「もう、優柔不断な人ね。じゃあ、あなた達はリエンを信じるの? それともここにいるシーダイムを信じるの? ……どちらが信用における人物か、もうあなた達の中では答えが出てるんじゃない?」


((まったく……すごい人がボスになったもんだな……))


 ゲオルグは少し考えた様子だったが、すぐに顔が明るくなった。そして、通る声で部下に話しかけた。


「……フッ、お前ら、今から俺は反乱軍に加担する。シーダイムを良き友、良き後輩として面倒を見てやらねばならん。もちろんシーダイムの言っている事が嘘であれば俺はその場でシーダイムを斬り、俺も腹を斬らせてもらう」

「……先輩」

「うふふ。男の子ねぇ♪」

「で、お前達はどうする?」


 兵達は顔を見合わせる事なく、全員がゲオルグの目を見つめた。


「自分も今から反乱軍であります。ゲオルグ隊長と我々は一蓮托生。お供させて頂きます!」

「自分もです!」

「私も!」

「「「自分もです!」」」

「ハッハッハッハ、俺は良い部下に恵まれた! なぁ、シーダイム?」

「ええ、先輩は最高の先輩です」

「うふふふ♪」

「ハッハッハッハ! お前らはここの扉を守れ! 相手はあの賢者リエンだ、お前らじゃ犬死にするだけだ! 言う事聞かねぇ奴はここで俺がぶっ殺してやる!!」

「「「はっ!!」」」

「中には俺とシーダイム、そして、おそらく俺より強いであろうそこのお嬢さん。あとそこのボーズ。付いてきな!」

「は、はい!!」

「よしボーズ、良い返事だ」

「そのアーツ君は、陛下のお墨付きよ♪」

「へぇ、そいつぁ良い」

「今度軍に入るから、その時は(しご)いてあげて♪」

「ハッハッハッハ!! いや、今日は面白い日だぜ!!」

「さぁ、行きましょう! 先輩!!」

「おう!!」


 ゲオルグは謁見の間の扉を開き、房江、シーダイム、アーツと共に駆けて行った。



 ――その少し前、謁見の間ではバルトとリエンが対峙していた。


『何故だ……? 何故この小僧がここにいる!? ワシの毒が効かなかった? いや、そんな訳がない。しかし……!?』

「どうした? 顔色が悪いぞ、リエン」

「こ、これは陛下、その様なお体でお部屋を出てはいけません。さぁ、お部屋へお戻り下さい」

「体? あぁ、余は今すこぶる調子が良い。お前の手作り料理を食べなくなっただけで、みるみる力が湧き出てきたよ」

「……っ!!」

「あの料理は一体何だったのか説明をして欲しいのだが?」

「そ、それは……その……」

「おい糞爺っ!! 答えろって言ってるんだっ!!」

「っ!!」


 謁見の間にバルトの怒号が響き渡った。残響音がある中、そこに房江、シーダイム、アーツ、ゲオルグが駆けつけた。


「おぉ、サエ殿!! ゲオルグ! シーダイム! アーツ君! 無事だったか!!」

「陛下も万全の体調ですね♪」


(マジで陛下がいるぜ!! くぅうう三年ぶりだ!!)


「ゲオルグ!」

「はっ! 陛下!! お久しぶりでございます!!!」

「余は今から反逆者リエンを手討ちにする。この爺、少々暴れそうだ……手伝ってくれないか?」

「はっ!! 喜んでっ!!」

「アーツ君!!」

「はっ!!」

「端で待機! 必要に応じて魔法を使え!!」

「はい!!」

「シーダイム!!」

「はっ!!」

「よく今までサエ殿を支えてくれた。感謝する!」

「はっ!!」


 シーダイムの目には涙が溜まっていた。また敬愛する主君に仕えられる事に、気持ちの昂ぶりを抑えられないでいた。


「泣くな!! 余のサポートを任せる!!」

「はっ!!」

「サエ殿!!」

「なんですか、陛下♪」

「本当にあなたは凄いお人だ。おそらくこの中で最強のあなたにお願いをする。共に戦って頂きたい」

「勿論です、陛下♪」

「……スゥ…………爺退治だっ!!!」

「「「おぉおお!!」」」

「うふふ♪」


「フィジカル・レインフォース! フィジカル・バースト!」


 リエンが魔法を使い臨戦態勢を整えた。

 対して房江も魔法を唱える。


「フィジカル・レインフォース・オール! ファイア・レジスト・オール! アイス・レジスト・オール! サンダー・レジスト・オール! ヒール・グラデュアル・オール!」


「なっ!?!?」


「「「おぉ!?」」」


 全員が驚いた。房江が唱えたのは全属性の無詠唱魔法だった。

 その時、リエンの背中に冷たい汗が流れた……。


「さぁて一念ちゃん、こっちはクライマックスよ♪」

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