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魔法世界の超能力者  作者: 壱弐参


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第四部 その八

「ドラゴン」

 賭博国家ギブリグの将。階級は中将。

 実直な性格でジョージのお気に入り。かつてカジノに出入りしていたドラゴンがルーレットで連戦連勝した時、ジョージも客として賭け事を楽しんでいた。ドラゴンの幸運に(あやか)って同じ番号に賭けたところ、大当たりになり、話が弾みギブリグ軍にスカウトしたという噂。

 当時は貧相な身体をしていたが、ひたむきな性格さからか軍内でもメキメキ成長し、頭角を現した。




 ――「砂熱(さねつ)」により一念が倒れてから三日。

 一念の身体はようやく回復の兆しを見せた。

 今日も朝からエメリアが一念の介抱をしており、そのそばには房江の姿もあった。


「一念ちゃん大分元気になったわねっ」

「そうですね。あと、一日二日……って感じかな?」

「駄目よ、あまり無理しちゃ。房江様だってそう思ってるわよ」

「そうよ、ここに来て無理した分、しっかり休まないとっ」

「ハハ、ありがとうございます」

「……あら?」

「房江様? どうしました?」

「いえ、鳩が……」

「鳩っ!」


 一念は鳩の侵入口がある天窓から鳩が下りて来るのを待った。

 鳩は侵入口から一念の肩まで下りてきた。


「よしよし。お疲れ様」

「一念ちゃん、その鳩は?」

「トレーディアからのお使いですよ」

「まぁ、急ぎの用事かしら?」

「多分人と会う事にはなります」

「その身体じゃ無理……とは言わないけど、やめておいた方がいいわ」

「まぁ指示書次第だから」


 一念は鳩の脚に付いている金属の筒を開いた。

 中には小さな紙が入っていた。


 《中央区広場の酒場。青いフード》


「手抜きだな。前回と指示が一緒だ」

「何て書いてあったの?」

「ちょっと出掛けなくちゃ……」

「やめなさいって。いいわよ私が行くから」

「エメリアが?」


(んー、精神感応(テレパシー)ならもう使えるからいいか……)


「じゃあエメリア、お願いするよ」

「任せてっ!」


 一念はエメリアに指示書という名の小さい紙を手渡した。


「中央区広場の酒場。青いフード?」

「中央区の広場に大きな酒場があるだろ?」

「あぁ、ウェッジがやってるお店ね」

「そうそうあのスキンヘッドの」

「あれは若禿げよ」

「そ、そうなの?」

「えぇ、私に振られたショックらしいわ」

「あ、はい」

「で?」

「そこにいる青いフードのお客さん……」

「話を聞いてくればいいのね?」

「いや、そのお客さんの顔を覚えて戻って来てくれ」

「あー、そういうことねっ」

「そういう事です」

「……どういう事ですか?」

「まぁ、一念ちゃんの言う通りにして戻ってらっしゃい」

「……はい? わかりました」


 エメリアは怪訝な表情をしながら、一念の自宅を出て中央区へ向かった。





 ――トレーディア東国境近くの平地。

 森林は少なく、砂地とまではいわないが、荒野の様な地面に地響きの様な足音が鳴る。

 先頭集団には第一歩兵部隊隊長ナビコフ大佐、同副隊長アッシュ中佐を陣の左側に置き、第二歩兵部隊隊長パティ大佐、同副隊長テルー中佐がその少し下がった右側に置かれている。その中央、第一・第二歩兵部隊の間に強い眼光を放ち腕を組む人物…ムサシ中将が立っていた。

 後方集団には第一魔法兵団団長セドナ少将、同副団長シルフィー大佐を第二歩兵部隊の少し下がった右側に置き、第二魔法兵団団長ラッセル少将、同副団長バディ大佐を更に下がった右側に置いている。その中央第一・第二魔法兵団の間に不思議なオーラを纏う人物ルーネ中将が構えていた。

 トレーディア軍は簡易的な斜線陣(ロクセファランクス)の陣形をとり、相手の出方を伺う。


 対する聖王国軍の先発隊、聖合魔第一師団にオーダイム中将が構えており、その後方に同第二師団グラハイム中将が構えている。

 第二師団から数キロ後方にはリディアーナ大将率いる大魔道兵団、更に後方にライネル大将率いる聖王国聖騎士団、その後方には西の国ウエスティンからの飛竜騎士軍団が配置されている。

 聖王国軍は数に物を言わせた長蛇(ちょうだ)の陣形をとり、トレーディアへと向かっている。


 トレーディア軍約二万、聖王国連合軍約四万の軍勢である。


 ナビコフ、パティがムサシの元に集まっている。


「先発隊はオーダイムですか」

「厄介ですね」

「うむ、大戦時の活躍は目を見張るものがあったと聞く。油断するなっ」


「「はっ」」


(武者震いか。……こんな時はいつも吉岡一門との戦いを思い出すな。……死ぬなよ。一念)


 後方の地ではセドナ、ラッセルがルーネの元へ集まっていた。


「リディアーナ大将も来ている様ですな……」

「ええ、彼女とは古い仲だから気乗りしないけれど」

「セドナ、ラッセル。気を抜かず生きて戻れ」


「「承知しました」」


(ギブリグの応援がどれだけ時間がかかるかがこの戦争の鍵となるやもな……。一念、何をしているっ)










 飛竜騎士軍団の後方にある渓谷には、ある一団が全身泥まみれになりながら歩いていた。

 ディール少将率いる、トレーディア国家特殊部隊ブレイブの一団である。

 ディールのすぐ後ろで息を切らせているリッツに、ディールが話しかける。


「リッツ、大丈夫か?」

「はぁ……はぁ、はぁ……だ、大丈夫です…」

「無理をする事はない。本番(せんそう)で力を出せる様にしておけ」

「はっ!」(ブレイブの連中全員息切れしてねぇ……バケモノ揃いかここは!? トロンなんて死にそうな顔してるぞ。なんで俺が副隊長なんだ? 陛下……)

「フッ……」(育ってきたな。この戦いでリッツは成長するだろう。皆もそれに気付いている。さすが陛下、良い目をしている)


(一念、何してんだお前っ)


 その時、先発隊オーダイムの元に早馬が到着した。











 ――聖王国。バルトの寝室。


(どうしたっ。……何をしている一念。先程から何度も飛竜が飛び回っている。この量は異常だっ。これはまるで……まさかっ!?)




 ――聖王国。中央区広場前の酒場。

 エメリアは青いフードを被った人物を発見していたところだった。


(あれがトレーディアの密使……)


「おぉ! エメリアじゃねぇか! 元気にしてっか?」

「えぇ、まぁ。ミルクもらえる?」

「おぉ任せろぃ!」


 ミルクを注文したエメリアだったが、密使の顔を何度か確認して、ウェッジがミルクを出す前に店を出た。

 後日談になるが、この日エメリアに全く構ってもらえなかったウェッジは、三日間は落ち込んでいたという……。







 ――トレーディア国アレクトの自室。

 部屋扉前にはレミリアが待機し、天井裏にジャンヌ、バルコニーにメルとフロルを配置し、部屋中央にイリーナが立っている。

 応接用のソファーにはアレクト、その隣にミーナ、正面にジョージが座っていた。


(一念さん、どうか無事で……)


 不安な表情をするイリーナにアレクトが声をかける。


「イリーナ、一念が心配なのはわかるが、今のお前の任務を忘れるな」

「は、はい!」

「イリーナお兄様も一念が心配なのよ。あまり気にやまないでね」

「そ、そんな! とんでもないですっ」

「一念君は人気者だな……」

「ふん、アレがいなくては調子が狂う」

「一念はイイ男なのです」

「確かにあれはイイ男だ」

「あらジョージ王、そういったご趣味が?」

「……私には妻がおります」


 バルコニーではメルがフロルに話しかける。


「なぁ……」

「……」

「おいフロルっ」

「……っ! メル?」

「お前すげー顔してるぞ。ちゃんと寝てるのかっ?」

「……全然」

「そういう時はせめて嘘つけよ」

「……」

「一念は大丈夫だよ」

「……っ!」

「あいつが死ぬわけない! 私はそう信じてる」

「……」

「お前が信じてやらなくてどうするんだ?」

「……うん」

「頑張れっ」

「……ありがとう」



 天井裏からジャンヌが顔を出した。


「陛下」

「どうしたジャンヌ?」

「おそらく、そろそろかと」

「……勘か?」

「勘です」

「ジャンヌの勘かぁ……」

「アレクト王。ジャンヌ中佐の勘とやらの的中率は?」

「百%だな」

「百%ですわね」




(((戦争が……始まる!!)))



 ――聖王国。一念の自宅。房江の手によりおかゆが作られ、一念はそれをおいしそうに食べていた。


「あらあら、食欲だけは完全回復ね」

「房江さんの料理はほんと何でもうまいっす」

「褒めても何も出ないわよ?」

「うまい料理が出てきます」

「うふふ、饒舌だこと」

「……ほんと懐かしいや」

「そうね、……地球、日本、研究所」

「あぁそうだ、房江さんトレーディア国のムサシ中将って知ってます?」

「えぇ、名前だけなら……その方がどうしたの?」

「彼も日本から来たみたいです」

「まぁ、確かに日本人の名前みたいだけど……昔の方?」

「何を隠そう、彼、宮本武蔵さんなんですよ」

「二天一流のっ!? きゃー! サインもらわなくちゃっ!!」

「アハハ……」(流派まで知ってるのか。房江さんすげーな)

「今度是非会わせてちょうだい?」

「勿論です。彼も聖王国の異世界人に興味を持ってましたから」

「彼も戻れてないって事ね」

「えぇ。……二十年この世界にいるそうです」

「……そう。辛い思いをしてきたんでしょうね」

「強いですね。房江さんは……」

「なんたって一度死んでますからね。そう思えば気が楽よっ」

「死んだって……生きてるじゃないですか?」

「あの時本当に溺れてたのよ。波が強くてね……。異世界に飛ばされてなかったら死んでたわ」

「あぁ、そういう事ですか」

「こっちに来たときは大変だったのよ」

「……あぁ!」

「そう、水着だったの。親切な人が布をくれなかったら、私は変質者扱いされてたわ」

「それは……笑い話ですね」

「そうね。うふふふっ」

「房江さんの水着姿か……興味ありますね」

「まぁ、色々と成長したわね♪」

「アハハハハッ」

「うふふふっ♪」


 一念と房江の会話が区切りの良いところで、一念の自宅の扉がゆっくりと開いた。


「ただいまー」

「おかえりなさい。エメリアさん」

「おかえり。エメリア」

「一念君かなり元気になったわね?」

「元気が出る話をしてましたから」

「うふふ、そうね」

「あー房江様ズルいですっ」

「エメリアはこの前、一晩も一念ちゃんと一緒にいたでしょう?」

「えぇ!? そうなんですか!?」

「あ、あれは一念君がずっと寝てた時ですよっ! 私あまり会話出来てないです!」

「欲張りはダメよ♪」

「むぅ……」


 房江に釘を刺され、エメリアは少し頬を膨らませた。

 場の空気に困った一念は話題転換の為、エメリアに指示書の話を振った。


「で、エメリア。青いフードの人はいた?」

「あぁ、いたいた。ちゃんと顔覚えてきたわよ?」

「お、サンキュー。ちょっとこっち来て?」

「……?」


 エメリアは訳がわからないながらも、一念が寝ているベッドに腰掛けた。

 一念は手を差し出し、エメリアは促されるままその手を握った。


「その人の事を頭で思い描いて」

「……」

「そうそう。これは……バッツさん?」


『テストテスト。バッツさん聞こえますか?』


「……っ!? 頭に、一念君の声が……?」

「落ち着いてエメリア。頭の中で会話が出来るわ」


『……こう?』

『そうそう』

『一念殿ですかな?』

『お久しぶりですバッツさん』

『はて、姿が見えぬ様ですが?』

『今自分「砂熱(さねつ)」って病にかかっちゃってて、自宅からの交信なんですよ』

『……それででしたか。なるほど。状況は理解しました。お加減の方はいかがで?』

『まぁ、ある程度は回復しました』

『完全じゃないわよ?』

『おや、この方は?』

『反乱軍のメンバーのエメリアさんです。ちょっと協力してもらってます』

『なるほど。今の聖王国の状況はわかりますかな?』

『あぁ、バルトは回復してきましたよ?』

『いいえ、聖王国はトレーディアに戦争を仕掛けました』

『……え?』

『なんですって!?』

『少数部隊を更に分け、ここから西のウエスティンに集合しました。なので情報を存知上げないのも無理はありますまい。おそらくウエスティンからは、膨大な数の飛竜に乗り継いだのでしょう』

『今、どうなってるんですか!?』

『これだけの時間が経っているとなると、おそらく、間も無く……いや、もうトレーディアの国境付近で戦争が始まっているでしょうな』

『すぐに行かなくちゃっ!!』

『それが賢明ですな。私もお供させて頂きます。今そちらの家に向かっております』

『わかりました。急いでください!』

『承知しました』


「一念ちゃん、どうしたのっ?」

「くそっ!」

「話してちょうだい」

「既にトレーディアで戦争が始まっているそうですっ」

「……一念ちゃん。準備を始めなさい」

「はい!」

「房江様! 一念君はまだ無理ですっ!」

「私達に一念ちゃんは止められないわ。最終的に行ってしまうとわかっているのなら、準備は早い方がいいの」

「そーゆー事♪」

「大丈夫そう?」

「んー、八十%ってとこですかね?」

「余裕ねっ♪」

「ええ!」

「エメリア、全員に通達して!」

「は、はい?」

「これより反乱軍は聖王救出を行います」

「なっ!?」

「さすが房江さん。考え方が違う」

「城内は手薄だろうから大丈夫よ♪」

「気をつけて下さいね?」

「勿論よっ! さ、エメリア。忙しくなるわよ!」

「は、はい!」


 エメリアが外に出ようと扉まで駆けた時、扉からバッツが登場した。


「一念殿っ!」

「バッツさんっ!」

「行きましょう!」

「えぇ! 超特急ですよ!」

「はっ!」


 その時、遥か西の土地トレーディアでは、轟音が鳴り響いていた……。

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