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魔法世界の超能力者  作者: 壱弐参


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第三部 その一

 

 トレーディア国緊急会議の少し前

 一念、イリーナ、メル、フロルが謁見の間に着くと、謁見の間内には人が溢れていた。


「すごいな……こんなに人がいる……」

「兵士……国にいる尉官以上の兵がここに集まってるみたいだね?」


 メルが一念にとって意味不明な事を言ってきたので、困った表情を浮かべると察したフロルが説明を始めた。


「……尉官っていうのは少尉……中尉……大尉の階級の事を言います……因みに……私とメルは少尉……」

「なるほど、階級の事か。で、イリーナはどういう階級に?」

「私は、大尉……だったのですが、この前中尉に降格されました……うぅ」


 一昨日の事件の事を思い出した一念だが、イリーナの言葉はそれほど悲しみを伴っておらず、ふざけている様な感じだった。


「ところで俺ってどういう扱いになるのかな?」


 ただの興味本位であったのか、自分の立ち位置を、居場所を知りたかったのか、一念の心の中は本人にもわからなかった。

 それを察したのか、フロルが微かに笑うと一念の疑問に答え始めた。


「……一念さんは……私達の上官ですが……正式な階級は本日授与されると思います」

「ほえー……って、ってことは……俺、この服で大丈夫なの?」

「フフ、大丈夫ですよ。真っ黒な色は少し特徴的ですけど、男性の制服とほとんどかわりませんから」


 イリーナがフォローすると、イリーナの後ろから聞きなれた声が聞こえた。


「一念~、相変わらず眠そうな顔をしてるな」

「リッツ! ん? 昨日も着てたけどそれが男性の制服なのか?」


 リッツが着ていた制服は学ランのソレに少し似ていて、黒地の上着、黒のスラックス。上着の手首の袖口部分に銀色の二重線が一本入っている。胸元には円形を土台とした星型の勲章が下げられている。一念の学ランのボタンは金色だが、リッツのそれは銀色となっている。


「お前寝てる時も眼鏡かけてるらしいな、イリーナちゃんが笑いながら言ってたぜ~?」


 その話を聞いた一念はチラリとイリーナを見る。イリーナは少し顔を赤くして、一念から顔を背けた。


「で、何の話してたんだ?」

「リッツ隊長には関係ないですよ~」


 口を尖がらせて返答したのはメルだった。


「なっ、お前まだ会食の時の事根にもってるのかよ!」

「そんな事ありませんよ~」


 メルがそう反論している間に、いつの間にかフロルがリッツに耳打ちしていた。


「あぁ、階級の話か。何だ一念、地位ってやつが欲しくなったのか?」


 メルに対してニヤリと笑い、一念に対しニッと笑い皮肉を言うリッツを見て、メルはムッとなって、静かにフロルを睨んだ。フロルは何事もなかった様子でリッツの話を聞いていた。


「そんなんじゃないさ、ところでリッツは?」


 リッツに要点を問わず答えを促した一念。しかしリッツも話はわかっていた。


「俺は少佐っ、本来こういう隊長ってのは大尉とか中尉が担うんだけど、特殊警備隊長ってなると色々責任が伴うんだよ」


 説明をしながら、やれやれという感じで肩を上げたリッツに、一念が少し驚いていた。


「へ~、こんなんでも少佐なんてものになれるんだな」

「なっ、こんなんでもってなんだ!? こんなんでもって!」

「だって年齢も俺とあんま変わらないのに……」

「俺は九歳の時から戦場でてるんだよっ」


 少しムスッとした表情で反論したが、一念はその発言に驚愕していた。


「なっ、九歳!? まだ子供じゃないかっ!」

「この世界じゃそんなに珍しい事じゃない。寧ろ大人になってから軍に入る方が珍しいくらいさ」

「そんなに人材が不足しているのかっ?」


 一念は今まで疑問に思わなかったが、確かに一念の周りにいる人材の年齢層が低かった。


(リッツも、イリーナもメルもフロルも……この周りにいる人達も……)


 何故今まで気づかなかったのかと思っても、どうにかなる問題でもない事が一念には解っていたが、どうにもならない憤りが募っていた。

 それを察したのか、イリーナとリッツが少し困った様に顔を見合わせ、一念に説明を続けた。


「皆、陛下が、ミーナ殿下が、トレーディアが好きなんですよ。……皆自ら望んで軍に入ったんです」

「そーゆーこと! あんまり気にするなって! 皆後悔しない人生を選んでるだけなんだよ」


 励ましの様に聞こえた二人の決意は、一念が昨晩決意したものに似ていた。


(……同じか)


「そうだぞ一念。私達が決めた事だ、一念が口出し出来る事じゃない」

「……でも、その気持ちは嬉しいです……ありがとう……です」


 メル、フロルのフォローが入り、一念は納得できない気持ちを押さえつけ、笑ってみせた。

 話題転換の為か、リッツが先程の話の続きの補足を始めた。


「んでもって、ムサシ将軍は中将だ!」


 思いがけない話に一念の笑みが驚きに変わった。


「あれ、一番上の大将ってやつじゃないの? ムサシ将軍…」

「ハハ、そう言うと思ったぜ! 大将の位は別の人だ。もっとも今はいないけどな」

「いない……?」


 リッツのわかりにくい言い回しに、一念の疑問は当然のものだった。


「自由気ままな旅……だそうだ」

「仕事ほっぽりだして旅してるのっ!?」

「陛下が許可したんだ。本当にただの旅なのか、何か狙いがあるのかはわからないけど、それが陛下の意思だからな」


 一念は妙に納得してしまった。「アレクトの考え」と言われたら何故か頭にスッと入ってきた。


(大将…どんな人なんだろ……)


「まぁ気にしたって始まらないってっ」


 リッツがそう言うと、イリーナがいつの間にか懐から出していた懐中時計を手に、一念に話しかけた。


「あ、一念さん。私、ミーナ様を迎えに行って来ますね」


 メルとフロルは「私も」、「……私も」と続き、一念も「俺も」と言うと、イリーナが顔を赤くして反論した。


「いちねんさん! 朝の時間に女性の……しかもミーナ様の部屋へ行くなんて、恐れ多いと思わないんですかっ?」


 確かにイリーナの言うセリフは正論だったが、イリーナの反応はやや異常だった。


(まるで私情が絡んでいる様な――)


「とにかくっ! 一念さんはここにいてくださいっ」

「は、はい……」


 一念とリッツが、イリーナの迫力に気圧され、たじろいでしまった。イリーナ達を見送るとリッツが一念を横目に話しかけてきた。


「……なんかご立腹だな? 確かにミーナ殿下の部屋に行くっていうお前の意見は、なかなかデリカシーのない事だが……」


 一念は、グサッと何かが刺さる音を聴いた気がしたが、何とか踏みとどまった。

 リッツが少し考えた表情をしていたが、何かに気づいた様子で、謁見の間の中央左側に目が留まっていた。

 それに気付いた一念もその目線の先を目で追っていった。一人の女性がいた。杖……錫杖(しゃくじょう)の様な物を右手に持ち、周りとは一際違った存在感を放っていた。


「リッツ、知り合いか?」

「とんでもない。魔術師じゃない俺には縁のない人だよ」


 先程同様肩を上げ、否定してみせたリッツは彼女に目を留めたまま、話を続けた。


「生きる伝説……賢者ルーネ。前の大戦の有名人だよ。階級は中将。ムサシ将軍と双璧を成す人さ」

「賢者……って事は、魔術師?」

「あー、そっか。一念はここに来てまだ数日だったな…。話すと長くなるんだが……まぁそのうち知る事になるし、今話しとくべきなのかもな。

 えーっと、「魔術師」ってのは一種の階級みたいなもんでな?「魔術師」・「魔道師」・「大魔道師」・「賢者」っていう区分けがある。そして「魔法」には五系統を主としたものがある。それは「火」・「水」・「雷」・「回復」・「補助」の五つだ……。んで、この中の一つを覚えると「魔術師」、二つから三つなら「魔道師」、四つなら「大魔道師」って言われてる。そして五つ全てを修めた者は「賢者」って呼ばれる様になるんだよ」

「へー、って事はあのルーネって人は五系統全てを修めたんだね……」

「あぁ、そしてこの世界に賢者と呼ばれる存在は三人しかいない」


 世界に三人。途方もない数字に一瞬理解できなかった一念だったが、安直に「全国模試の世界版の上位三人」と考えたら、その数字の重大さが理解できた。こういう所はやはりまだ高校生というところだろうか……。


「三人!? そんな凄い人がこの国にいたのか……」

「あぁ、ルーネ、リエン、バルタザールの名前を知らない者はいないはずだぜ?」


 リッツが言った三人の内の一人の名前に肝を抜かれた一念は、リッツに今一度確認をとった。


「リ、リエンっ!?」

「お、よく憶えてたな! そ、聖王国の宰相リエン。こいつも賢者の一人さ」

 リッツの「えらいぞー」と言ってる様な顔を見て、「殴ってやろうか?」と考えた一念であったが、話の続きが気になったので、手を出さない為に腕を組み矛を鞘に納めた。

「だから今回の件は緊急性も伴っているんだろう。っと、後の一人「バルタザール」って人は非常に特殊な存在なんだ」

「特殊? って事は五系統じゃないとか?」


 リッツの目が見開き、「何故わかった!?」という顔をしていた。


「わかりやすいな、お前……」

「…………よく言われるよ。……ふぅ、気を取り直して、そのバルタザールはさっき言った五系統の魔法は一切使わない。それ以外の特殊な五系統魔法を使うと言われている。失われた古代魔法とも言われているな。「風」・「土」・「時空」・「幻惑」・「守護」。この五種類らしい」

「……ふーん。完全に最初の五系統とはずれてるんだな……えっ!?」


 一念の表情を見て、リッツも先程の一念同様、一念の目線の先を追ってみた。しかし追う必要のない程、それはそこに居た。リッツが振り向いた先には、大きく揺れる何かがそこにあった。リッツの視界にはワイシャツとネクタイしか見えなかったが、一念の視界には「大きく揺れる何か」を捉える事が出来た。


(爆……乳……だとっ!?)


 そこには、つい先程までの話の対象。黒髪のルーネの姿があった。


「すまんな。懐かしい名前が聞こえたものでな、釣られてこちらまで来てしまった」


(うそだろぉ? 近づく気配全く感じなかった……ムサシ将軍ならわかるが……体捌きも俺以上かよっ!!)

(うそだろぉ? 大きい……サユリさんレベル…………いや、イリーナ以上に異常だっ!!)


「…? どうしたのだ?」


 リッツの剣士としての感応、一念の男性としての感動が入り混じり、二人は少々混乱していた。


「大丈夫か?」


((!!))


 ルーネの二度目の呼びかけにより、目を覚ました二人は慌てて言葉を探す。


「おっぱ…おはようございますっ。一念っていいますっ!」


 危うく爆弾を投げそうになった一念。


「お、おはようござらいます。特ちゅ警備隊長のリッツと申しますっ!!」


 飲み込まれて噛んだリッツ。この二人は結構似たもの同士なのかもしれない。


「一念君にリッツ君だな、宜しく頼む。…ところで、リエンやバルの話をしていたと思ったのだが……」

「え? えぇ、確かに……」

「やはりか、となると本日の会議はリエン絡みか何かかな……?」


 リッツは背中に冷たい汗が流れるのを感じた。


「えぇ!? 何でわかったんですか!?」

「ばっ!!」


 リッツが声を上げた時は既に遅かった。「何で言っちまうんだよ!」とリッツが説教をしていると、ルーネは口尻を上げ、クスッと笑った。


「一念君。君たちしか知らない情報を、私の推測だけでバラす事は感心しないな?」

「は、はい。すみません……」

「まぁ、今日の会議でここにいる全員が知る事になるだろうから、今回は問題ない。以後気をつけなさい」


 一念がシュンとすると、リッツはその状況を利用し、先程の一念と同じ問いをルーネに聞いてみた。


「ですが、何故わかったんです?」

「私はこれでも中将だぞ? 一昨日の事件くらい報告が上がってきているさ」

「しかし、リエンの事がわかったのは昨日です。報告書の提出は本日ですが、さすがに朝には上がらないはずです」


 リッツが小声でルーネの矛盾を指摘する。


「ほぅ……。では、その事実から導き出される答えはなんだ?簡単な話だろう」

「一昨日の報告書だけで……?」

「聖王国絡みだという事は、一昨日の時点で、陛下も気付いていただろう? 報告書にもそう書いてあったから、その先を追っただけだ。確信はなかった。だが、ここ最近の聖王国の動きは、全てリエンの指示によるものだ。聖王国に行きついた時点で答えが出た様なものだ」


 真剣に考えてた一念はルーネに簡単な方程式を説明されてすぐに納得した。


「あれ? リッツ、これは……茶番というやつじゃないか?」


 ルーネと一念に言われリッツは顔を赤くする。アレクトが導き出した答えまでが辿り着くのが困難なのであって、報告書にそれが書いてある以上、そこからの推測を述べただけのルーネに突っかかったリッツに、一念が「茶番」と言うのは適当と言う他ないだろう。


「クスッ、なかなか面白かったぞ?」


 そう言うと、ルーネは謁見の間の奥へ歩いて行った。

 ルーネを見送った一念は、リッツにルーネと同じ言葉を囁いた。


「ククク……なかなか面白かったぞ?」

「お前……マジで覚えてろ……」


 一念の失笑に殺意を覚えたリッツは、密かに復讐を誓った。


(ルーネさん……不思議な人だな……)


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