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命どぅ宝 =お婆の独り言=

作者: とーか。

ふふ、此処に来るのも久しぶりだねぇ。

すまないねぇ…時々しか来れなくて…。いかんせん、家が遠くてね。骨が折れるんだ。だから、許しておくれよ?

仏壇に毎日拝んではいるけど、どうしてか、アンタに拝んでる気がしなくてね。本当、どうしてかねぇ…。

そうだ、昨日ね、いいことがあったんだ。だから、私の独り言につき合っとくれよ。

昨日、曾孫の和好(かずよし)がね、学校で沖縄戦のことを勉強したんだってさ。でも、まだまだ8歳。理解なんて出来るはず無い。学校から帰ってきてすぐに、私のところにやってきて言ったんだ。

「ひい婆ちゃん。戦争ってどんなだった?」ってね。どうして私に聞くのかと尋ねたら、先生に言われたんだとさ。

私はせがまれるままに、和好に語ったよ。全てをね。情けないことに、時々、泣いてしまったけれど。

勿論、アンタがどんな人だったかも語って聞かせたよ。そうしたらさ、「ひい爺ちゃん、カッコイイ!!」って、目をキラキラさせてたよ。でも、アンタが死んだ理由を話したら、目を潤ませてた。本当に、あの子は優しい。

語り終わったとき、和好は目を潤ませつつ、首を傾げてたんだ。どうしたのかと聞いたら、驚きの言葉が返ってきたんだ。その言葉が嬉しくてねぇ……。

なんて言ったかというとね、

「ひい婆ちゃん。戦争で戦った人たちのこと、知ってたの?」

「いや、全く知らなかったね。なんせ、海の向こうの人たちだったから」

「僕、思ったんだ。ひい婆ちゃんのお話聞いて」

「言ってごらん?」

「戦争っておかしいよ!僕だったら、知らない人を怒ったり、叩いたり、蹴ったりできないよ。殺すなんて、もっとできないしさ…、嫌いになんてなれない!無理!絶対、無理!!」

「和好……」

ハッとさせられたよ…。よく考えたら、冷静に考えたらそうなんだ。見ず知らずの人間を憎んで、殺してしまうなんてさ。おかしい話なんだよ。

怒ったり、仲良くしたり、憎んだりできるのは、相手がよく知っている人だからなんだよね。

とても嬉しかったよ。本当に。ちゃんと、幼いながらにわかってるんだって、伝わっているんだって。

そしてね、その後に和好が将来の夢を聞かせてくれたよ。あまりに具体的で笑ってしまったけど、いい夢だったよ。

なんでも、【外交官になって、世界中に行って、戦争を無くしたい】んだってさ!「先生に世界中に行ける仕事は?」と聞いたら外交官だって言われたらしくてね。

アンタもあんな世の中じゃなかったら、外交官かなんかになって、世界飛び回ってたかもねぇ…。アンタ、英語流暢だったしね。

そうだ。アンタにはいい知らせだ。私ねぇ、もうすぐ行くよ。アンタの傍に。 病気とかじゃあないんだ。なんとなくだけど、感じるんだよ、自分の寿命をね。

そうしたらね、アンタが眠る墓に私も入って、此処に名を刻んでもらいたいね。

沢山、仲間がいるし、景色も最高ときた。アンタだって居る。

アンタの隣、空けといてくれよ?そこは、私だけが居ていい場所なんだ。

頼んだよ、アンタ…。



【三日後。新しく、一人の女性の名が、黒く光る石碑に刻まれた…】



沖縄の平和祈念資料館に行ったら、書かずにいられませんでした。

お婆の独り言。それは、私が感じたことでもあります。

どうぞ、よろしくお願いします……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 作品を読ませていただきました。 作りごとではない、リアルな戦争への悲しみが伝わってきて、すごく心に染みる作品でした。
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