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第二話 傭兵の仕事

 同日――夜。

 ガタガタと激しく揺れるコックピット。気流が悪く、機体は回転しながら落ちていく。海面が迫る。水面すれすれまで落ちたところで、機体は跳ねるように急上昇した。体には強烈な重力がかかる。雲を抜けると、大きな月明かりに照らされたその機体が姿を現した。

 艶のある青色のボディ。中世の騎士の兜のような顔。その機体は背中の噴射口からボウッと音を立て、空中に直立した。


『どうだ? ミスター・ハクバ』


 ヘルメットのイヤーカフから、ダミ声の男の声が聞こえる。


「移動は問題ないな。垂直飛行も安定している。ほぼ思った通りに動くが、直感的に動こうとすると少し反応が遅れるな。これはどうにかならないのか?」


『そりゃあ、ハクバの動きに合わせようとすると機体に相当な負荷がかかっちまうよ。これは一般兵向けに量産するものだから、多少の遅れは仕方がない。で、合格か?』


「まぁ、大丈夫だと思うぜ。慣れるのは大変だろうが、合衆国のエリート達ならいけるだろ」


『了解だ。降りてきてくれ。祝杯でもあげよう』


 アメリカ合衆国――南西部。研究基地。


「お疲れさん! どうだった? 今回の機体は?」


 機体を降りたハクバがヘルメットをロッカーに置き、パイロットスーツを脱ぎ始めたところに、金髪をオールバックにした男、レイモンドがスポーツドリンクを持ってやってきた。


「レイモンドか……まぁまぁだな。安全性を重視しすぎて、動きの良さを捨てている。あれじゃ早晩、ゴミ扱いだな」


「手厳しいな。それを直接レポートに書いてやってくれよ」


「いいや。恐らく局長に言っても答えは同じだろう。上の連中は許可しないさ。中身の人間を考えない設計なんてな」


「日本だと許可されるか?」


「馬鹿言え。第二次世界大戦時じゃあるまいし、許可されるわけないだろう。今の時代、どこの国も兵士を無駄死にさせることは出来ないからな」


 ハクバはペットボトルを飲み干し、ゴミ箱に放り投げると、二人はロッカールームを出た。


「やっと来たか! ミスター・ハクバ! 祝杯を挙げようじゃないか! もうすぐピザが届くはずだ!」


 サングラスを頭にかけた年配の男が、既に酔っているのか千鳥足でハクバ達を呼ぶ。


「局長。たくさんは飲まないからな? 明日は早いんだ」


「ノリが悪いなー。今日ぐらい良いだろう?」


「明日の朝にはここを出るんだよ。ギリギリまで残ってやったんだ。これぐらいのワガママは通させてくれ」


 そう言うと、局長は両手を上げて降参のポーズを取った。


「相変わらず忙しいねえ。傭兵さんは」


「次の仕事が立て込んでいるからな。悪いな」


「金は後で振り込んでおくよ」


 ビールを渡され、レイモンドが一口飲んで局長に聞いた。


「てかよ。なんで俺たちに頼んだんだ? あんたらのところのアバランサー乗りに頼めなかったのか?」


「確かにパイロットの育成は進んでいるが、一朝一夕にいくものじゃない。もし、未熟な奴に乗せて事故でも起こされたらたまったもんじゃない。一機造るのにとんでもない金がかかっているからな」


「確かに。この世にハクバ以上に乗りこなせる奴なんていないしな」


「そういうことだ」

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