表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/30

第二十六話 戦闘配備

 潮風が吹き抜ける、空母ベサリウス。


「……あのヴィクターって男について、何か知ってるのか?」


 甲板の端で一人煙草を吸っていたハクバに、背後からレイモンドが声をかけた。あの生放送でヴィクターが姿を現した時、ハクバの様子が微かに変わった違和感を、レイモンドは見逃していなかったのだ。


「まぁ、昔の顔見知りだ。……あんな髪色じゃなかったがな」


 ハクバは海を見つめたまま、短くなった煙草の灰を指先で弾き落とした。


「何故隠すんだ。俺らにも言えないようなことか?」


「隠してるわけじゃない。ただ、言う必要がないだけだ。お前らには関係のないことだし、それに、昔少し会った程度の顔見知りだ。細かく語れるような話もないさ」


「……それで、お互いに背中を預けられるとでも思ってんのか?」


 レイモンドの声に、微かな苛立ちが混じる。

 ハクバは昔から、自分の内面を決して見せようとしない男だった。傭兵として雇われてから今まで、身の上話など一度も聞いたことがない。レイモンドはこれまで何度か踏み込もうと試みてきたが、いつも先ほどのように適当に濁されるか、あるいは明確にシャッターを下ろされてしまっていた。


「レイモンド。俺たちは傭兵だ」


 ハクバは静かに振り返り、感情の読めない目で相棒を見据えた。


「利害が一致しているから、同じ船に乗っている。それだけのことだ。正規の軍隊や家族じゃあるまいし、過去をすべて打ち明ける必要はないだろう」


 確かに、それは正論だった。

 傭兵稼業において、他人の過去を詮索しないのは暗黙の了解だ。しかし、ハクバのその割り切った言葉は、「お前たちのことは、そこまで信頼している仲間だとは思っていない」と突き放されているように聞こえ――レイモンドは無性に自分が情けなくなり、奥歯を噛み締めた。


「ハクバ!」


「何だ?」


「キャプテンが呼んでる。なんかレーダーに知らない艦影を補足したとか」


 レイモンドの背後から小柄な女兵士がハクバを呼びに来た。

 たばこを海に捨てて、腰を持ち上げる。


「これ見てくれ」


 CICに来たハクバは、レーダー機の前で腕を組んでいたアーチボルトを見つけて近寄る。


「二隻か……識別は?」


「一応、アメリカ製の強襲揚陸艦だね。それでも二隻だけってことはほぼ無いから、アバランサー運ぶように改造された艦かもね」


 腰に手を当てて、クリスは正確な情報と自分の考えを交えて答えた。


「あり得るな。しかもこの進路――」


「ああ、間違いなく俺ら狙いだな」


 ハクバの予想にアーチボルトは賛成した。


「だが、どうしてだ?」


 確かに、アルビオンは一国共生を掲げている。傭兵集団など眼中にないはず。彼らはあくまで国を束ねることを目的として行動している。


「――さぁな。それは俺も分からない。意外と名が知れていたんじゃないか?」


「悪名も名高いと面倒が増えるな――それでどうする?」


「最大戦速で海域を抜けてインドネシア海域に入りたいが……捕まるだろうな」


「なら迎え撃つか?」


「それしか無いだろう。最速で突破してインドネシアへ向かおう」


「了解。第一種戦闘配置」


 ハクバたちはアバランサーの準備を始めた。

 パイロットスーツを着用してタラップを降りていく。格納庫に到着すると整備クルーが右往左往と闊歩していた。


「前回と一緒で、百二十ミリリニアライフルでいきますか?」


 月影の乾燥作業をしているクルーがハクバに話しかけてくる。


「いや、ビームライフルに換装しておいてくれ。今回は早期決着が急務だ。できるだけ無駄なことは省きたい。チャージはすんでるか?」


「ええ。ただ、出力が高すぎて機体の動力を喰います。撃てるのはせいぜい四発ほどです」


「十分だ。あとはブレードでどうにかする」


 整備クルーは残りの整備班に指示を飛ばして、巨大アームを動かし始める。奥の格納庫から持ち出した灰色のビームライフルをアームで掴んで月影の背中に装着していく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ