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第十三話 日本の出方

 同時刻――日本国会議事堂、第一委員会室。

 星波総理に対する代表質問が行われていたが、ホワイトハウス襲撃の一報を受け、委員会は急遽打ち切りとなった。


「……事実は確認できたの?」


 星波は足早に廊下へ出ると、外務省の担当官を呼び止めて事実確認を行う。


「はい。すでにホワイトハウスは完全に制圧され、アッシュフォード大統領の生死も不明とのことです」

「まさか、あのアッシュフォード大統領が……」


 アッシュフォード・クロス。現在二期目を迎える現アメリカ合衆国大統領、六十五歳。

 保守的な思想とアバランサーの積極的運用を公約に掲げ、若年層の熱狂的な支持を集めて当選した人物だ。軍人上がりならではの卓越した戦略眼と行動力で、月面軌道エレベーターの建設など数々の巨大事業を牽引してきた強権的なリーダー。勿論、全てを支持できるものではなかったが、ホワイトハウスが簡単に襲撃を受けるなんて。


「それで、アメリカ本土の状況はどうなっているの?」


「それが、情報が極度に錯綜しておりまして。政府機能をペンタゴンに移したという未確認情報もありますが、正確な被害状況はまだ掴みきれておりません」


「そう……ありがとう。藤九郞、すぐに防衛大臣を呼んでちょうだい。あと統合幕僚長も。あのアルビオンの放送が事実なら、一刻も早く我が国の安全保障について協議しないと」


 直ぐさま車で総理官邸へ戻った星波は、エントランスで待ち構えていた記者団のぶら下がり取材に応じた。

 無数のフラッシュが瞬く中、星波は毅然とした態度でマイクに向かう。


「まず、国民の皆様には冷静な情報の精査をお願いいたします。現在流れているセンセーショナルな映像やメッセージに惑わされることのないよう、落ち着いた行動に努めていただきたい。政府としても、事態の正確な把握を急いでおり、情報が確認でき次第、速やかに公式な記者会見を開く予定です」


 最低限のコメントを残し、執務室へ向かおうと踵を返したその時だった。


「総理! 犯行グループは国名を『アルビオン』と改めると宣言しました! 日本はアメリカの同盟国ですが、それはアルビオンとも同盟を組むという意味になるのでしょうか!?」


 眼鏡を掛けた記者が、核心を突いた鋭い質問を飛ばす。

 星波は顔色一つ変えず、歩みを止めずに振り返った。


「その件も含めて、精査した上で会見の場でお話しさせていただきます」


 会話を切り上げ、階段を上っていく。


「総理!」


「戦争に巻き込まれる可能性はあり得るのでしょうか!?」


「アルビオンの理念について、どう思われているかお聞かせください!」


 SPたちが壁となって記者団を制止し、それ以上の追及を遮る。

 舌打ちをした記者たちは諦め、それぞれパソコンを開いたり、本社へデスクへ電話を入れたりと慌ただしく動き始めた。


「ちっ、相変わらず星波総理はガードが堅い。全然ボロを出さねぇな」


「生粋の政治家一家ですからね。祖父も父親も元総理、おまけに兄は元幹事長。メディアの躱し方なんて、骨の髄まで叩き込まれてるんでしょう」


 ロビーの片隅、ガラス張りの手すりに腰を預けながら、二人の記者が素早くキーボードを叩く。


「若い女だから、非常時にはすぐボロを出すなんて言ってた年配の記者連中は、俺も含めて赤っ恥だな。あの肝の据わり方は異常だよ」


「それより、どうするんでしょうね、日本政府の対応。世界で一番難しい立場じゃないですか?」


「確かにな……。問題は在日米軍だ。今は全体の三割近くが日本に駐留してる。もし、本国を乗っ取ったアルビオン側に在日米軍が寝返ったら……日本はすでに敵の火線のど真ん中にいるってことになる」


「日米安全保障条約はありますけど、それがそのまま『日・アルビオン同盟』にスライドするなんてあり得ないですよね」


「あの放送の内容、明らかに全世界への宣戦布告だったからな。クーデターで国を乗っ取ったテロリスト集団なんて、まともな国家は相手にしないはずだが……軍事力とアバランサーの数が桁違いだ。どう転ぶか分からねぇぞ」

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