アウトオブあーかい部! 〜部室棟 乙女の干物 集まりて 怠惰を極め 綴るは実績 電子の海へ あゝあーかい部〜 37話 スイーツバイキング
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。
日曜日の朝。
「「……。」」
とある墓石の御前で、きはだとモーラは喪服に身を包み手を合わせていた。
「さて……と。いこっかぁ。」
「……ねえきはだ。」
「なあに、モーラ姉?」
「これからあたしときはだはクソ……教頭先生に会いにいくわけだけどさ、
「……『琥珀さん』で通すよ。」
「いいの?」
「ん。被っちゃったもんは仕方ない……ッ!!」
きはだは腕を組みクワッと目を見開いた。
「……。」
「……って言うよ、『琥珀』なら。」
「なんて言うか、きはだの妹だね。……ありがと。」
モーラは黄山家の墓石に彫られた、かつての自分と同じ『琥珀』という文字に視線を落として微かに微笑んだ。
「というわけで行こぉ?」
「お墓参りなのに随分軽いねえ……。いや、毎週末のことなんだけどさ?」
モーラ改め琥珀はきはだに背中を押されて墓石の御前を後にすると、駅のお手洗いでいそいそと私服に着替え始めた。
「悪いねぇ琥珀さん。毎週つきあって貰っちゃって。」
「いいっていいって、あたしが好きで来てるんだしさ。にしてもスラスラと呼ぶね?」
「ものごころついたときから呼んでた名前だからねぇ。」
「それならボロは出さなそうで安心……!」
私服に着替えた2人が電車に乗って最寄駅へ移動すると、改札の外で教頭先生が手を振っていた。
「うっわ……。」
「教頭先生だぁ〜。」
2人が改札を出ると早速教頭先生と合流した。
「おはようきはだちゃん♪来てくれてありがとうね。」
「いえいえ、教頭先生のためとあらば火の中水の中ですよぉ。」
「メッッチャ媚びるじゃん。」
「世渡りだよぉ。」
「琥珀ちゃんも久しぶりね♪」
「誰のせいだと……。」
「これも運命の悪戯ね……。」
「よし、今日からクソババア改め運命自認おばさんだな。」
「これは躾のしがいがありそうね。」
「ねえねえ教頭せんせ、なんでそんなに嫌われてるのぉ?」
「ほんと、なんでかしらねえ?私に嫌われるところなんてあるはずがないのに……。」
「そーゆーとこだよ。」
「フフ♪やっぱり琥珀ちゃんって、澄河ちゃんに似てるわね♪昔の澄河ちゃんを思い出すわぁ……♪」
「昔の……?」
「教頭せんせをクソババア呼びしてたころの白ちゃん?」
「……。」
「今日付き合ってくれたら、楽しくてつい口を滑らしちゃうかもしれないわね☆」
教頭先生は琥珀にウインクしてみせた。
「なになに面白そ〜♪」
「どうかしら……琥珀ちゃんにも着いてくるメリットはあると思うんだけど。」
「……ケッ。さっさと終わらせろし。」
琥珀は背中を丸めて2人の先頭を歩きだした。
「良い?きはだちゃん。人を動かすにはメリットをチラつかせることよ?……特に自分を嫌いな人には、ね♪」
「さっすが教頭せんせ、勉強になりやす!」
3人は目的のスイーツバイキングをやっているお店へと入り、予約していた席についた。
「色々取ってくるねぇ〜。」
「さんきゅ、きはだ。」
「悪いわね♪」
きはだが席を離れた。
「で?どーゆー風の吹き回し?」
「どーも何も、久しぶりに琥珀ちゃんのお顔が見たくなっただけよ♪」
「ほぼ毎日職場でおんなじ顔見てんだろーが……!」
「やあねぇ、全然違うわよ〜。少なくとも今の琥珀ちゃんみたいな躾のなってない飼い犬みたいな目はしてないわ♪」
「てんめぇなあ……!」
「あ!あと最近の澄河ちゃんはよく廊下で鼻歌歌ってるわね。本人はいろんな人に見られてるの気づいてないみたいだけど♪」
「何してんだすみ姉……。」
「だって邪魔しちゃ悪いし、生徒もみ〜んなわかってて黙ってあげてるのよ?今さら指摘するのも可哀想じゃない。」
「えぇぇ……。」
「それとも琥珀ちゃんも私の知らないところでよく鼻歌歌ってたり?」
「少なくともテメーの前では絶対ねえよ。」
「あら残念……。」
2人が談笑していると、お盆いっぱいにスイーツを乗せてきはだが戻ってきた。
「なになにぃ?楽しぃお話?」
「胸焼けするくらいに……ね。さんきゅ。」
「じゃあもう食べるの止める?」
「比喩だよ比喩……!店の出したもんならありがたく奢られてやるっつの!」
琥珀は悪態をつきながらシュークリームを頬張った。
「何これうま……っ!?」
「わたしもた〜べよ、いただきます。」
「あら、きはだちゃんは『いただきます』ができて偉いわね〜、ね?」
「こっち見んじゃねえ。」
「あらぁ……これはたっぷり躾けてあげないといけないわねぇ……。」
教頭先生も手を合わせてスイーツに手をつけた。
「うんうん♪やっぱりこれよねえ♪」
「教頭せんせ、前にも来たことあるのぉ?」
「ええ♪とびっきり美味しいお店に連れてって琥珀ちゃんに格の違いを見せてあげないといけないもの♪」
「うっっわ性格悪っ!?」
「ほぉら、この前一生分食べて食傷気味のカップケーキがあるわよ琥珀ちゃん?」
教頭先生は琥珀の前にカップケーキを配膳した。
「その話、あーかい部の投稿にも載せてねえだろ……。」
「きはだちゃんは喋ってないよぉ?」
「私、教頭先生だから♪」
「答えになってねえしいちいち不快だな……まあ頂くけど。」
琥珀はカップケーキをひと齧りした。
「うわなんだこれ……。」
「業務用の冷凍とは天と地ほどの差があるでしょう?私もそう思ったもの。」
「冷凍の方まで特定して食べてんのかよ引くわぁ……。」
「まあ、雪ちゃんが美味しそうに平らげてくれたんだけどね♪」
雪は琥珀の母であり教頭先生の親友である。
「そういえば、雪さんは呼んでないのぉ?」
「呼んだら琥珀ちゃん来ないかな〜って。それにきはだちゃんも初対面だとはしゃげないでしょ?」
「別に、もう母さんとはそこまで険悪じゃないっつの。」
琥珀は昔、母の元を離れるために海の向こうまで家出したことがあり、モーラはそのときつけた名前である。
「じゃあお家にでも呼んであげたら?」
「確かに、一回呼んじゃえば住所は弱みじゃなくなるよねぇ……。なんで琥珀さん教えないのぉ?」
「教えたらめっっちゃ来そうだから。」
「「あ〜……。」」
「ほら。」
「確かに雪ちゃん、会う度口を開けば琥珀ちゃんのお話ししてるわねぇ……。」
「昔の反動かなぁ?」
「良いじゃない、たっぷり可愛がってもらえば。」
「……。」
琥珀は顎を抑えて考え込むような仕草をした。
「……うん、やっぱ無しだな。」
「あら残念。」
「どうしてぇ?」
「きはだはあさぎやひいろを自宅にあげたことある?」
「あるわけないじゃん。」
「そーゆーこと。」
「仲が良いのとお家にあげるのは別……ってことねえ。でもあさぎちゃんは良いの?」
「あれは座敷童みたいなもんだから。」
「妖怪呼ばわりで草ァ!」
「んなこと言ったってなぁ……いっつもお線香の匂いするし。」
「お部屋蚊取り線香モクモクだったねぇ。」
「あら、投稿のお話は本当だったのね。」
あさぎは蚊に狙われやす過ぎる体質なので事実には箱で蚊取り線香をストックしている。
「じゃあ、部費でさすまたなんて買わずに蚊取り線香買えばよかったのに……。」
「白ちゃんに言ってよぉ……。」
「納期把握しないのは論外でしょ。」
「琥珀ちゃんは納期があるお仕事をしているのね?」
「納期ない仕事なんてねーだろ……。」
「良かった、ちゃんとお仕事してたのね♪」
「しとるわっ!?」
「きはだちゃん職種知ってる?」
「おいクソババア。」
「……キハダチャン、ガクセーダカラオシゴトワカンナイ。パンケーキウマウマ。」
((逃げた……。))
「まあ良いわ。お仕事クビになったら池図女学院に来なさい?たっぷり可愛がってあげるから♪」
「クソババアの手足になるくれーならのたれ死んだ方がマシだっつの。」
「そうなの?残念ねぇ……、姉妹でお揃いのコーデにして両脇に侍らせて使役するの夢だったのに……。」
「少年漫画かっ!?」
「名前が左右とか対になってるやつだねぇ。」
「きはだちゃんわかる?アシンメトリーとか色違いの服とか着せて入り口守らせたいわよねえ♪」
「中ボスじゃねえんだから……。」
「それか、姉妹で正反対のコスチューム着せて隣接するフロアに配置するのも悪くないわね……。」
「アンタ魔王か何かか?」
「琥珀ちゃんにはそう見えてるんじゃないかしら?」
「へ〜、驚いた。自分のこと客観視できたんだな。」
「そうなのよぉ〜、私ね?学生時代から『キャラクターに例えるなら?』って話題になるとみ〜んなお口を揃えて『魔王』って言うの。なんでかしらね?」
「筋金入りかよ……。」
「きはだちゃんには色々アイテムくれる可愛いお助けキャラに見えるけどなぁ……。」
「このこのぉ♪世渡り上手さんめ!……イチゴあげる♪」
「わぁい♪」
「取り入ってるなあ……。」
「琥珀ちゃんも取り入ってくれて良いのよ?」
「死んでもごめんだね。」
「そお?私の配下に降った方が沢山美味しい思いできるのに?」
「自分から魔王に寄せてねーか……?」
「あら、わざとらしいのはダメね♪」
「天然だったら恐怖もんだわ。」
「教頭せんせが魔王ならファーザーより魔王だけどなぁ……?」
「それシューベルト……。」
「マンゴーあげる♪」
「わぁい。」
「いたわ恐怖の天然ゴマすりすり……。」
夜。あさぎの家。
『あさぎ、いる?』
「モーラ姉?珍しいねこっちに来るなんて。」
琥珀改めモーラはあさぎの部屋を訪ね、蚊取り線香の煙で燻されていた。
「ちょっとスマホ借りたくて。」
「私のガワ被って誰と話すの?」
あさぎは慣れた手つきでトークアプリPINEを起動してスマホをモーラに手渡した。
「確認しないで貸しちゃうのは不用心じゃない?」
「今さらでしょ。」
「まあね。」
モーラはあさぎのおともだちリストを確認すると、とあるユーザーの名前をタップした。
「え……?雪さんと話すの?」
「そんなとこ。心配なら見張ってな?」
「面白そうだから見張らして。」
「へいへい。」
2人はあさぎのベッドに腰を下ろした。
「ってゆーかあさぎ、母さんと交流あったんだ?」
「ま、まあ……ね。」
「まさか、あたしのこと密告してないよね……!?」
「ないっ!してないっ!?雪さんと牡丹さんとは別件で仲良くなっただけだから!?」
「……あたしのことは秘密だからね?」
「はーい……。」
あさぎ、雪(2)
あさぎ:雪さん起きてる?
雪:あさぎちゃんからでしかも2人きりなんて初めてじゃない!?
雪:なになに!?もしかして恋バナ!?
「うううぅぅっっっざ……。」
「まあまあ、PINEの中だけだから頑張って?」
あさぎ:まあそんなとこです
雪:やだ!?ほんとに!?どうしよ当たっちゃった……!
雪:キャー///
「…………っつー……。」
「初めての時は私もそう思ったから……。」
「実の母かと思うと……ごめん。……やっぱつれーわ……。」
「……ほら!トークトーク……!」
「……はぁ。」
あさぎ:とでも言うと思いましたか
雪:違うの……?
あさぎ:別件ですよ
雪:まさかあさぎちゃん、弄んだの……!?
雪:ひどぉい!?
「すうぅぅぅ……、はぁぁ……。」
「頑張って、モーラ姉……!」
「くっっそ、なんでこんなしょーもないことでダメージ受けにゃならんのだ……。」
あさぎ:ごめんなさい
あさぎ:友だちを部屋に呼ぶときのことなんですけど……。
雪:まさか……恋バナを通り越してお泊まりデート……!?
あさぎ:流石に怒りますよ?
雪:ごめんなさい……
雪:しゅん
「はぁ……、はぁ……!」
「落ち着いてモーラ姉!?本題入れたから、ね……!?」
「お……おう、五十路の実母が高校生相手に『しゅん』とかいってきたから何だってんだ……何だってんだ……ちくしょぉ……。」
モーラは既に半泣きしていた。
あさぎ:雪さんはどんな部屋だったら嫌だなとかありますか?
雪:嫌……ないわね!
雪:あ、でもゴミ屋敷は嫌かも……
あさぎ:そりゃそうですよね
雪:嫌……はわからないけど、私だったら
雪:一人前のお部屋なら嬉しいかな♪
あさぎ:一人前?
雪:ちゃんとご飯食べれる環境だとか、お布団敷いてちゃんと寝られるとか……かな?
あさぎ:実家なんですけど
雪:そうだったわね!?
あさぎ:じゃあ白ちゃん先生みたいなお部屋は嫌ですか?
雪:実家にいた頃のままだと目も当てられないわね……
雪:お掃除しよっかって言っても頑なに断られちゃうの、なんでかしらね?
あさぎ:あはは……
雪:いつか気が向いたら、私のことも呼んでくれると嬉しいな……?
あさぎ:考えておきます
雪:えへへ、一歩前進♪
雪:言質とったからね?
雪:おやすみ♪
あさぎ:おやすみ
「ちょっとお!?なんで私の部屋に雪さん招くことになっ……、
「……♪」
あさぎはモーラに文句を言おうとしたが、スマホの画面を見つめるモーラの表情が和らいでいたのを見ると、そのまま黙ってベッドに背中から倒れ込んだ。




